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部活動と変化 part2
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昼休み以降の休み時間を使って小説を読み終え、放課後。
僕は自分の教室のドアの前で宮下さんが教室から出てくるのを待っていた。
理由は単純明快。宮下さんにおすすめしてもらった小説『一握りの幸せ』の感想を宮下さんに伝えるためだ。どうせ部室で会うのだから部室で伝えてもいいとも思ったのだが、部長は宮下さんが『一握りの幸せ』をすでに読んでいることを知らない。そんな中で僕達が二人で部長の知らない本についての感想を話していたら間違いなく拗ねてしまうだろう。だからこうして自分の教室の前で宮下さんを待っているのだ。
因みに、教室に呼びに行かずに自分の教室の前で待っているのは、単純に他のクラスの女子を呼ぶのは恥ずかしいからである。
そんなことを考えていると
「何してるの、山田君?」
と後ろから声をかけられた。
声のした方へと振り返ると、そこには宮下さんがいた。
「ああ、宮下さんを待ってたんだよ」
「私を?」
宮下さんが、首を傾げながら聞いてくる。
突然待っていたと言われたら当然の反応だろう。
僕は、待っていた理由を説明するべく口を開く。
「昨日宮下さんが勧めてくれた小説を読んだから感想を伝えたくって……」
「もう読んでくれたの⁉」
宮下さんが興奮しながら聞いてくるので僕は頷く。
「どうだった? 面白かった?」
余程興奮しているのか、まくし立てるように聞いてくる。
そんな興奮した宮下さんに部活に向かうために廊下を歩いている生徒が好奇の目を向けてきている。
このままでは、目立ってしまって宮下さんが恥ずかしい思いをしてしまうだろう。
というより、僕も恥ずかしい。
だから僕はひとまずこの場から離れるために
「まあ、歩きながら話すよ。とりあえず部室に向かおう」
と言った。
「すごいね、あの小説。感動したよ。宮下さんが言葉にできないって言ってたのも頷けるような内容だった」
「でしょ、本当に言葉にはできないんだけど。すごいの。私、初めてあの作品を読んだときにとにかくこの感動を誰かと共有したいなって思って……」
あの後、僕は宮下さんと一緒に部室に向かいながら、『一握りの幸せ』の感想を伝えていた。
僕の語彙力がないため、感想は「すごい」「感動した」なんて言うありきたりな言葉でしか伝えられていないのだが、宮下さんは頷きながらしっかりと感想を聞いてくれている。
「……なんか、ごめんね。語彙力がなくてありきたりな言葉でしか感想を伝えられなくて」
「気にしないで。私も語彙力なくてお勧めするときにありきたりなことしか言えなかったし」
「いや、でも……わかった、気にしないよ」
感想を聞いてくれている本人が気にしないでと言ってくれているのだから下手に気にしない方がいいだろう。
そうして、何とも情けない語彙力で何とか感想を伝え終わったタイミングで部室に到着した。
部室の電気はすでについているのでもう部長はいるのだろう。
僕は部室に入る前に
「ねえ、宮下さん。部長に『一握りの幸せ』を勧めてもいいかな?」
と、宮下さんに尋ねる。
すると宮下さんは「うん」と言ってくれたので、僕は部長に『一握りの幸せ』を勧めることにした。
そうして部室に入っていつも通り挨拶する。
するとそこには部長だけでなく未来の山田留美もいた。
「山田先生、どうしたんですか?」
中々部活に顔を出さない彼女が部活に顔を出したのが不思議なのか宮下さんが尋ねる。
「いや、まあね。たまには顧問らしく部活に顔出さなきゃなあって思っただけ」
「なんだ、そうだったんですね」
納得したのか、宮下さんが言う。
おそらく、今言った理由は嘘で宮下さんの様子を見に来たというのが部活に顔を出した本当の理由だろう。
今日は未来で宮下さんが部室に来なくなった日の一日前だ。
僕が宮下さんを心配しているように、彼女も宮下さんが心配なのだろう。
そこからは、いつも通り本を読んだり、雑談したりといった感じで部活を勧めていった。その中で『一握りの幸せ』を読んでみてほしいと部長に勧めたところ読んでくれるということになった。
僕は自分の教室のドアの前で宮下さんが教室から出てくるのを待っていた。
理由は単純明快。宮下さんにおすすめしてもらった小説『一握りの幸せ』の感想を宮下さんに伝えるためだ。どうせ部室で会うのだから部室で伝えてもいいとも思ったのだが、部長は宮下さんが『一握りの幸せ』をすでに読んでいることを知らない。そんな中で僕達が二人で部長の知らない本についての感想を話していたら間違いなく拗ねてしまうだろう。だからこうして自分の教室の前で宮下さんを待っているのだ。
因みに、教室に呼びに行かずに自分の教室の前で待っているのは、単純に他のクラスの女子を呼ぶのは恥ずかしいからである。
そんなことを考えていると
「何してるの、山田君?」
と後ろから声をかけられた。
声のした方へと振り返ると、そこには宮下さんがいた。
「ああ、宮下さんを待ってたんだよ」
「私を?」
宮下さんが、首を傾げながら聞いてくる。
突然待っていたと言われたら当然の反応だろう。
僕は、待っていた理由を説明するべく口を開く。
「昨日宮下さんが勧めてくれた小説を読んだから感想を伝えたくって……」
「もう読んでくれたの⁉」
宮下さんが興奮しながら聞いてくるので僕は頷く。
「どうだった? 面白かった?」
余程興奮しているのか、まくし立てるように聞いてくる。
そんな興奮した宮下さんに部活に向かうために廊下を歩いている生徒が好奇の目を向けてきている。
このままでは、目立ってしまって宮下さんが恥ずかしい思いをしてしまうだろう。
というより、僕も恥ずかしい。
だから僕はひとまずこの場から離れるために
「まあ、歩きながら話すよ。とりあえず部室に向かおう」
と言った。
「すごいね、あの小説。感動したよ。宮下さんが言葉にできないって言ってたのも頷けるような内容だった」
「でしょ、本当に言葉にはできないんだけど。すごいの。私、初めてあの作品を読んだときにとにかくこの感動を誰かと共有したいなって思って……」
あの後、僕は宮下さんと一緒に部室に向かいながら、『一握りの幸せ』の感想を伝えていた。
僕の語彙力がないため、感想は「すごい」「感動した」なんて言うありきたりな言葉でしか伝えられていないのだが、宮下さんは頷きながらしっかりと感想を聞いてくれている。
「……なんか、ごめんね。語彙力がなくてありきたりな言葉でしか感想を伝えられなくて」
「気にしないで。私も語彙力なくてお勧めするときにありきたりなことしか言えなかったし」
「いや、でも……わかった、気にしないよ」
感想を聞いてくれている本人が気にしないでと言ってくれているのだから下手に気にしない方がいいだろう。
そうして、何とも情けない語彙力で何とか感想を伝え終わったタイミングで部室に到着した。
部室の電気はすでについているのでもう部長はいるのだろう。
僕は部室に入る前に
「ねえ、宮下さん。部長に『一握りの幸せ』を勧めてもいいかな?」
と、宮下さんに尋ねる。
すると宮下さんは「うん」と言ってくれたので、僕は部長に『一握りの幸せ』を勧めることにした。
そうして部室に入っていつも通り挨拶する。
するとそこには部長だけでなく未来の山田留美もいた。
「山田先生、どうしたんですか?」
中々部活に顔を出さない彼女が部活に顔を出したのが不思議なのか宮下さんが尋ねる。
「いや、まあね。たまには顧問らしく部活に顔出さなきゃなあって思っただけ」
「なんだ、そうだったんですね」
納得したのか、宮下さんが言う。
おそらく、今言った理由は嘘で宮下さんの様子を見に来たというのが部活に顔を出した本当の理由だろう。
今日は未来で宮下さんが部室に来なくなった日の一日前だ。
僕が宮下さんを心配しているように、彼女も宮下さんが心配なのだろう。
そこからは、いつも通り本を読んだり、雑談したりといった感じで部活を勧めていった。その中で『一握りの幸せ』を読んでみてほしいと部長に勧めたところ読んでくれるということになった。
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