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ゲームと彼女
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あの後先輩たちとも合流し、部室でのミーティングを終え、帰宅した僕は未来の山田留美とゲームをしていた。
ゲームをしている彼女は先程宮下さんを見ていた時にしていたような複雑な表情はしていない。
……僕の見間違いだったのだろうか……いや、そうでなくても彼女にだって聞かれたくないことくらいあるだろう。そう考えて僕は彼女にあの複雑な表情の原因を聞くのをやめておくことにした。
因みに、今やっているゲームは昨日からやり始めた実力だけがものをいう単純な格闘ゲームだ。
そう、実力があれば勝てるゲームなのだが……
僕はTV画面へと目を向ける。
画面に浮かび上がっているのはKOの文字。
そして僕の隣では彼女が「やったー!」と喜んでいる。
そう、僕は負けていた。しかも、連敗だ。
因みに昨日みたいに何回かやってそのうち二連敗や三連敗したりしているわけではない。
十戦やって十敗だ。
このゲームを始めるにあたって僕は彼女にこのゲームをやったことがあるかと聞いた時彼女は「やったことがない」と答えた。つまり、彼女はこのゲームは初見プレイだったということになる。
それなのに、彼女の連勝。
「ちょっと強すぎない?本当に初見?」
悔しさから僕は大声でそんなことを言う。
「なんで……って、才能……かな……」
才能という一言で片づけられても困るのだが……
「とにかく、もう一回やろ!もう一回だけでいいから!」
「え、もう一回?いいけど……」
「やった、ありがとう!」
女の人(それも年上)に懇願するのは無様以外の何物でもないが、僕にだってこのゲームを長い間やってきたプライドがある。
そうして、ゲームを再開したのだが……
結果はもう十戦やって僕の十敗である。
悔しい。それ以外の言葉が出てこない。
そんな気持ちを静めようと布団に入ったのだが、そんな僕を彼女――山田留美は
「あ~……なんかごめん……」
と僕に同情してきた。
同情してくるくらいなら勝たせてほしい。
「君、やっぱりこのゲーム初見じゃないでしょ……」
どう考えても初見の彼女と、そこそこの時間このゲームをやってきた僕が勝負して僕が二十連敗するのはおかしい。それ故に僕がこう聞くと彼女は
「バレちゃったか……実は私、昔一緒に君とこのゲームやったことあるんだよね」
「ああ、なるほど……」
そういうことか。やったことがあるのなら僕よりこのゲームが上手くても頷ける。
「昔君の家でこのゲームやった時は操作方法分かんないわ、君は強すぎるわで、てんやわんや。でも君は手加減してくれなくって、よく私が怒ったりして、でも何回かやって行くうちに操作方法を覚えたりして、最後にこのゲームを一緒にやった時に私勝っちゃって」
と、そこまで言ってから、彼女は、
「まあ、それも今となってはいい思い出なんだけどね」
と付け加えた。
「君にとってこのゲームは未来の僕との思い出なんだね」
「思い出……うん、そうだね。未来の君との楽しい思い出……もちろん今、高校生の君と遺書にいるのも楽しいけどね」
「そっか……」
切なげな表情の彼女になんと声をかければいいかわからず、僕は短く呟いた。
そうして、こういう時はそっとしておこう。ということにして僕は眠りにつくためにソファーのあるリビングまで移動する。そしてそのままソファーで横になり眠りにつこうとして……重大なことに気がついた。
ソファーから跳ね起き、階段を駆け上がり自身の部屋を勢いのままに開く。
「ねえ、今君は、僕と一緒にこのゲームをよくやっていたって言ったよね?」
早口でまくし立てるように聞く。
「うん、そうよ」
「しかも「この家で」とも言ったよね?」
「うん」
「…そして、君は未来人なんだよね?」
「まあ、そうね」
「つまり、今の君が、この家に遊びに来るってこと?」
「うん、近いうちに来ると思う」
「ええええええええええ!」
絶叫する。え、だって、女の子が僕の家のこの部屋まで来るって!それも近いうちに?!それはまずいだろう!!
「あれ言ってなかったっけ?」
「初耳だよ。今初めて聞いたよ!」
「ごめん、ごめん」
「ごめんじゃないよ!」
「何か問題あった?」
「むしろ問題しかないよ……」
僕は自分の部屋に女子を招き入れたことがほとんどない。しかもその僅かな機会も小学校低学年というまだ男女の間の壁みたいなものが存在しない時期だ。
「いつ頃来るの?」
「企業秘密です」
「なんだよそれ!」
声を張り上げる。本当になんだよ企業秘密って!
僕がそう唸っていると彼女は
「第一考えても見てよ。高校生の女の子が同じ高校生の男の子の家に入るなんてすごい勇気のいることなの。それなのに君にだけ女の子が家に来る日がわかってるのは卑怯だとは思わない?」
と言ってきた。
それもそうだ。僕は目先の恐怖に囚われて、相手の気持ちになれていなかった。男として……いや、人として恥ずかしい。
「確かにそうだね。僕は自分のことしか考えてなかった。でもそれは相手に失礼だもんね」
「そうだね」
「本当にごめん」
「私に謝られても困るんだけど……まあ、わかったんならいいんだけど」
言うと、彼女は溜息をつきながらやれやれと言った感じの顔を浮かべた。
どうやら、大丈夫らしい。
安心した僕はそのままリビングまで下りていき、ソファーで眠りについた。
ゲームをしている彼女は先程宮下さんを見ていた時にしていたような複雑な表情はしていない。
……僕の見間違いだったのだろうか……いや、そうでなくても彼女にだって聞かれたくないことくらいあるだろう。そう考えて僕は彼女にあの複雑な表情の原因を聞くのをやめておくことにした。
因みに、今やっているゲームは昨日からやり始めた実力だけがものをいう単純な格闘ゲームだ。
そう、実力があれば勝てるゲームなのだが……
僕はTV画面へと目を向ける。
画面に浮かび上がっているのはKOの文字。
そして僕の隣では彼女が「やったー!」と喜んでいる。
そう、僕は負けていた。しかも、連敗だ。
因みに昨日みたいに何回かやってそのうち二連敗や三連敗したりしているわけではない。
十戦やって十敗だ。
このゲームを始めるにあたって僕は彼女にこのゲームをやったことがあるかと聞いた時彼女は「やったことがない」と答えた。つまり、彼女はこのゲームは初見プレイだったということになる。
それなのに、彼女の連勝。
「ちょっと強すぎない?本当に初見?」
悔しさから僕は大声でそんなことを言う。
「なんで……って、才能……かな……」
才能という一言で片づけられても困るのだが……
「とにかく、もう一回やろ!もう一回だけでいいから!」
「え、もう一回?いいけど……」
「やった、ありがとう!」
女の人(それも年上)に懇願するのは無様以外の何物でもないが、僕にだってこのゲームを長い間やってきたプライドがある。
そうして、ゲームを再開したのだが……
結果はもう十戦やって僕の十敗である。
悔しい。それ以外の言葉が出てこない。
そんな気持ちを静めようと布団に入ったのだが、そんな僕を彼女――山田留美は
「あ~……なんかごめん……」
と僕に同情してきた。
同情してくるくらいなら勝たせてほしい。
「君、やっぱりこのゲーム初見じゃないでしょ……」
どう考えても初見の彼女と、そこそこの時間このゲームをやってきた僕が勝負して僕が二十連敗するのはおかしい。それ故に僕がこう聞くと彼女は
「バレちゃったか……実は私、昔一緒に君とこのゲームやったことあるんだよね」
「ああ、なるほど……」
そういうことか。やったことがあるのなら僕よりこのゲームが上手くても頷ける。
「昔君の家でこのゲームやった時は操作方法分かんないわ、君は強すぎるわで、てんやわんや。でも君は手加減してくれなくって、よく私が怒ったりして、でも何回かやって行くうちに操作方法を覚えたりして、最後にこのゲームを一緒にやった時に私勝っちゃって」
と、そこまで言ってから、彼女は、
「まあ、それも今となってはいい思い出なんだけどね」
と付け加えた。
「君にとってこのゲームは未来の僕との思い出なんだね」
「思い出……うん、そうだね。未来の君との楽しい思い出……もちろん今、高校生の君と遺書にいるのも楽しいけどね」
「そっか……」
切なげな表情の彼女になんと声をかければいいかわからず、僕は短く呟いた。
そうして、こういう時はそっとしておこう。ということにして僕は眠りにつくためにソファーのあるリビングまで移動する。そしてそのままソファーで横になり眠りにつこうとして……重大なことに気がついた。
ソファーから跳ね起き、階段を駆け上がり自身の部屋を勢いのままに開く。
「ねえ、今君は、僕と一緒にこのゲームをよくやっていたって言ったよね?」
早口でまくし立てるように聞く。
「うん、そうよ」
「しかも「この家で」とも言ったよね?」
「うん」
「…そして、君は未来人なんだよね?」
「まあ、そうね」
「つまり、今の君が、この家に遊びに来るってこと?」
「うん、近いうちに来ると思う」
「ええええええええええ!」
絶叫する。え、だって、女の子が僕の家のこの部屋まで来るって!それも近いうちに?!それはまずいだろう!!
「あれ言ってなかったっけ?」
「初耳だよ。今初めて聞いたよ!」
「ごめん、ごめん」
「ごめんじゃないよ!」
「何か問題あった?」
「むしろ問題しかないよ……」
僕は自分の部屋に女子を招き入れたことがほとんどない。しかもその僅かな機会も小学校低学年というまだ男女の間の壁みたいなものが存在しない時期だ。
「いつ頃来るの?」
「企業秘密です」
「なんだよそれ!」
声を張り上げる。本当になんだよ企業秘密って!
僕がそう唸っていると彼女は
「第一考えても見てよ。高校生の女の子が同じ高校生の男の子の家に入るなんてすごい勇気のいることなの。それなのに君にだけ女の子が家に来る日がわかってるのは卑怯だとは思わない?」
と言ってきた。
それもそうだ。僕は目先の恐怖に囚われて、相手の気持ちになれていなかった。男として……いや、人として恥ずかしい。
「確かにそうだね。僕は自分のことしか考えてなかった。でもそれは相手に失礼だもんね」
「そうだね」
「本当にごめん」
「私に謝られても困るんだけど……まあ、わかったんならいいんだけど」
言うと、彼女は溜息をつきながらやれやれと言った感じの顔を浮かべた。
どうやら、大丈夫らしい。
安心した僕はそのままリビングまで下りていき、ソファーで眠りについた。
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