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67「保健室」
しおりを挟む「先生っ!…早く…!早く当番制にしてください…!!!」
自分で思っているよりも悲痛な声が出てしまった。
でも、そのぐらい今の状況は深刻だ。
先日の一件以来俺の周りはなにかと騒がしく、昨日の夜なんて壮馬と三ツ矢が争う様に部屋にやって来てどっちとキスするのか言い合ってた。
当人である俺を無視して。
そもそも、当番制にするまではほどほどでいいって言われてんのにさあ…!
結局じゃんけんで勝った方とするなんていう決め方で、俺とキスってどっちかって言うと罰ゲームだから負けた方じゃないのか?などと現実逃避している間に決着がついたらしい壮馬が三ツ矢の目の前で俺の唇を奪ったのだった。
横から物凄い悲鳴みたいなのが聞こえてたけど、カオスすぎるでしょ…。
…早く当番制にしてほしいなんて思う日がくるなんて思わなかったな。
「当番については青瀬くんとも話して、テスト明けてからって事にしようと思ってたから丁度良かったね」
当然のように一緒に保健室でお昼を食べていた佐々木先生が司波先生に入れてもらったお茶を飲みながらにっこり笑う。
テスト明けということはつい2日前にテストは終わったのでまさに今週から始まるところだったのか。
少しだけほっとするが精気の減り具合はというと、前回と変化なしと言われてしまった。
減ってはいないようだが増えてもいないと言うことだ。
嫌でも思い出す記憶。
二人分飲まされた。
じわりと、頬が熱くなる。
それなのに、増えてないってどういうことだよ…!
あんな、あんなことされて、次の日めちゃくちゃ気まずかったんだぞ!!
やっぱり俺が出しちゃったから…?
そんなの、あんまりだ…。
「なんだか切羽詰まってるみたいだし、さっそく明日からにでも始めようか君の精気は黄緑ぐらいになってるし…そうだな、とりあえず三日に一度のペースで補給して様子を見ていこうかな」
「…はい。そうですねまずはそのぐらいで…」
ちらりと視線を送ると、司波先生が頷いて同意した。
「あ、そうだ…そう言えば、その当番制に、海寮の三ツ矢って奴も入れてほしいんですけど…」
「三ツ矢くんって、あの?…な、何故ですか?……まさか…」
「……えっと、色々あって今壮馬と一緒に補給してもらってて…」
当番制に入れてくれないとなにをするかわかんないよ!、と涙目の三ツ矢に半ば脅しのように頼まれてしまったのでこのことは伝えておかないといけない。
「三ツ矢くん…?ああ、君たちと良く一緒にいる彼かあ…。うーん……残念だけど、明日からの当番に彼は入れない。一度話してみないと、ね。俺と司波先生で少し話を聞いてみてからになるかな、そう伝えておいてくれるかな?」
「……僕も、同意見ですね…。彼は…その、少しお喋りなところがありますし…」
反対…。
てっきりいいよ、と軽い口調で了承すると思っていたのだが、そうか。
司波先生は言いずらそうに言葉を濁していたが三ツ矢は信頼が足りないのだろう…。
まあ普段の行動を見ていたらそうなるよな…。
俺達はそれなりに一緒に過ごしているから三ツ矢に対してそこまで警戒はしないけど、俺の秘密だって三ツ矢はきっと誰にも言わないって俺は思ってるし。
三ツ矢には帰ったらダメだったと伝えよう。
正直かなり…伝えづらいけど…。
会話が途切れて多分粗方話すべきことは終わったのだろうと思い、ものすごく言いづらかったのだけどこの前の事について話すことにした。
「えー、オナニーしようとしたら体質がでたの?」
「っそ、そんなはっきり言わないでください…」
「…うーん…そっか、まあ俺は他の体質の事例から憶測で言ってるだけで専門じゃないからなあ…間違ってたのは謝るよ、ごめんね。そうだな…ここはちゃんと専門である司波先生に見解を聞いた方がいいかもね」
「…」
「司波先生?」
「え、…あ…、はい。…えっと…そうですね…」
何やら考え込んでいた司波先生は佐々木先生に呼びかけられて、はっとしたように眼鏡のズレを直し居住まいを正すと口を開いた。
「…中学の頃とは身体も成長して体質は変化していきますので…成長に伴い性欲も増した結果…体質である女性の身体の方が男性の欲よりも優先されてしまって、欲情すると精子を出す前に体質が発現してしまうと言うのが僕の今のところの仮説です…。すみません、僕も色々調べてはみたんですが、夏目くんはかなりの特異体質なので前例なんかもほぼ見つけることができなくて…」
「なるほどねえ。そこはやっぱり体質優先で考えなきゃいけなかったって事かな。間に男の身体が挟まってるからややこしいんだよな…だからこそ面白いんだけど…」
「……夏目くん、その…一度、あなたのお母さまに自身の体質について聞いてみても良いかもしれません。あなたはお母さまからの体質遺伝ですから、僕よりもよっぽど詳しいと思います」
「は、はい…聞いてみます…」
お母さま…俺の母親…この世界での。
…スマホの連絡先には壮馬以外に、父、母と、俺と同じ苗字の名前が一人、たぶん兄弟と思われる名前があった。
全く知らない名前だった、…俺にとっては全くの他人だ、少し緊張するな。
「そうだねー。…体質って一族で秘密守ってたりするところとかもあるからねえ。体質によってはバレたら弱点にもなるわけだしあんまり大っぴらには言いたくないよね。夏目くんはちょっとオープンにしすぎかな。まあこの学校に来た時点でそれも難しいか…なんでこんな学校来ちゃったの?」
「…佐々木先生」
「や、ごめん。これは失言だ訂正して謝るよ」
なんで?なんで来たかなんて俺が聞きたいよ。
確かに秘密にするどころか俺の体質は既に結構な人数にばれてしまっている。
ここがゲームの世界だから、そうしないと話が進まないから?
俺の気持ちなんて置いてけぼりで、激しくなっていくスキンシップにジワリと視界が潤む。
やっぱり、このゲーム…えっちなやつだ…。
認めたくなかったがもう、俺の中ではほぼ確定している。
「…大丈夫?…涙目になってるけど…」
「大丈夫です…。予鈴なったんで、戻ります…」
聞こえて来た予鈴にがっくりと肩を落としながら保健室を出ようとすると追いかけて来た司波先生が俺の顔を心配そうにのぞき込んできた。
「…夏目くん、…その、大丈夫ですか?…二つの性がある状態は自分では気付かないストレスになっていたりすることもあるかもしれません。…疲れたらいつでも保健室に休みに来てください」
「はい…ありがとうございます」
「…………いつでも、待っていますからね…」
そう言った司波先生はなんだか元気がないように見えた。
先ほども考え事をしていたみたいだし、俺なんかよりも疲れているんじゃないかな。
…どうしたんだろう…。
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