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side 佐々木景伍

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ちょっとおせっかいし過ぎちゃったかな。
焚き付けたらわかりやすいくらい反応返してきたなあ、桂木くん。

でももう、顔色の悪さは隠しきれていないし限界だったから…これで好転してくれるといいんだけど。

あのまま知らんぷりしておけば、夏目くんとキスできたのにとも思わないでもないけどさすがに可哀そうだろう、俺みたいな彼から見たらお兄さんとおじさんの間くらいの男と初キスなんて。
…控えめに言ったが夏目くんぐらいの年の子から見たら俺なんておじさんというカテゴリに入っていてもおかしくないからね。

そう考えながら苦笑いをしていたら司波先生に不審な目で見られてしまった。



だめだな、最近表情が緩んでしまう。
あの子の影響かな?

とても興味深い体質を持つ彼は、その特異な体質の割に随分と初心な反応をする不思議な子だった。

中学から発現しているって話らしいけどハグにすら慣れていないあの感じ。
精気の残りもまったく把握できていないなんて発現したての子じゃないんだから。
なんなら体質に溺れて遊び慣れててもいいぐらいのお年頃じゃないの?

なんていったってそういうことに特化した体質なんだし。


体質を知ることは俺の趣味みたいなものだから、今まで色々な人たちを見てきた。
家を出てからはとんと機会は減ってしまったけど。

俺の性分として体質が知りたいと言うのもあるけど、夏目くん自身にもとても興味がある。


ちょっと触るとピクピクしながら俺のすることにいちいち可愛い反応するんだよね。
この前もキス意識して唇がきゅってしてて可愛かったな。

俺の指先を吸ったあの可愛い唇。
間接キスしたら目に見えて真っ赤になっていたほっぺた。

ふにふにと触るとぷくぷく膨れてフグみたいで面白い。
ついついやりすぎてしまうからもう少し自制しなきゃね。
あまり度を越して嫌われるのは本望じゃないし。

ふっと思わずにやけてしまう口元を隠すように手で覆った。



じと、と隣からトゲトゲした視線が突き刺さる。
司波先生、この前夏目くんのリバート対応してからすごい敵意を感じるんだよねえ。

俺の興味の対象、二人目。

司波先生って夏目くんのことかなり好きだと思うんだよね。
駄々洩れすぎて心配になるぐらい。

俺としては…それだけじゃない何かがある気がして夏目くんに探り入れたけど違ったな。

知り合いじゃないとするとなんなんだろう。
こればっかりは俺の勘や予知じゃわかんないな。





他にも何人か気になる子はいるんだよね。
ちらりと視線を向ける。

青い深淵のような瞳をした名前に違わぬ青年。
隣でお茶を飲みながら座っている青瀬寮長サマだ。

「ちなみに、なんだけど。夏目くんの噂は誰からのタレコミだったの?」
「廊下の幽霊は、スピカ寮の宇田(ウダ)からです」
「…はあー…なるほどねえ…。あいつか。そこから天城くんあたりにでも伝わって噂が一気に広まったって感じかな」
「…そうですね、言われてみれば最初にその話を持ち掛けてきたのは天城でした」
「天城くんおしゃべりだからね」

宇田テオか。
そうかあいつなら俺の察知を掻い潜れるかもしれない。
青瀬くんと夏目くんが対峙した時の事を思い出して納得した。
ふーん…真似事にしてはやるね。

「あの時なんで誰もいなかったはずの廊下から急に出てきたのか、ずっと気になってたんだよね。宇田くんの手を借りたんだね?」
「はい。…気配は消せたけど視界があまり見えなくて、音を頼りに追いかけたのでどこから出てきたかまではわからなかったです。まさか夏目だったとは」

それで即座に特定には至らず夏目くんまで辿り着く前にこちらが手を打てたという訳か。
結構ギリギリだったな。間に合って良かった。

「事の顛末がなんとなくわかってすっきりしたよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそ。これでようやく一段落つきます。若宮も久能もピリピリしてたんで」

少し疲れた目元は本当に心からほっとしているみたいだ。
若宮くんや、久能くんに挟まれている青瀬くんの心労は凄まじかっただろうな。
これで落ち着いてくれるといいんだけど。

「青瀬くん、少しいいですか?」
「はい」

司波先生に呼ばれた青瀬くんをひらひらと手を振って見送ると、ほとんど残っていないお茶を呷った。

うーんちょっと話しただけでこれか。
青瀬深、思っていた以上に厄介な体質だ。

いや、体質…と言っていいのか正直微妙なんだけどその類じゃないかと俺は見ている。


俺が見えない体質なんて初めてだ。
ワクワクが止まらない。

この子は好奇心で突いちゃいけない。
何かがビンビンと肌に刺さるように警告してくる。

俺の手に負えなさそうだしあんまりちょっかいかけちゃダメなんだけどダメだと思うとさ、ふふ…。


コネで入ったようなものの教師生活はあまり期待していなかったが思っていた以上の収穫だ。
面白い体質を持った子だらけで毎日楽しい。




解け残った氷を揺らすとカランと小気味いい音が鳴った。


先ほど張りつめた空気のまま出て行った2人の後ろ姿を思い浮かべる。
夏目くんと桂木くん。
初めて二人を見た時に直感が走った、これも勘。


夏目くんの具合はきっと次に会った時には見違えるぐらい良くなっているはずだ。





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