俺は絶対に男になんてときめかない!~ときめいたら女体化する体質なんてきいてない!~

立花リリオ

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27「夜の訪問者2」※

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「…俺、この学校では友達とか作る気あんまりなかったんだけどさー、こうやって寮で遊ぶのも悪くないね。律ちゃんまた遊ぼうね」
「まあ、たまになら遊んであげるよ」
「次はトランプ以外のことやろーね。壮馬くんいじわるだから俺の数字ばっかり止めるだもん」
「ふふっ、あれ俺めっちゃ笑った」

3人で俺の部屋に来たはいいがトランプしか遊べそうなものがなかったので七並べをして遊んだのだ。
意外と白熱して楽しかったな。

ふふっと思い出し笑いをしていると、その様子を見て嬉しそうに笑う三ツ矢。

また、その顔…。
三ツ矢って普段いい加減でふざけてるからそういう顔されるとちょっと困る。
気の抜けた笑顔のイメージが強いがこうして微笑むと見た目の良さが際立つ。



「ふあ…」
「眠いなら部屋戻りなよ」
「…えー…せっかくだしもうちょっと話そうよ。恋バナでもする?」
「しないよ!なんで三ツ矢としなきゃいけないの」

眠そうにあくびをした三ツ矢に帰るよう促すが頑として動かないとソファにしがみついている。
困ったな。
そろそろ俺も寝たい。


しばらくお互いに眠たいのを堪えながらとめどない話をしていたが本格的に眠くなってきた。
眠気に誘われぼんやりしていたら、三ツ矢がゆらりとソファから立ち上がった。

「眠くなってきちゃったからベッドかしてー…」

そのままベッドに向かい、ぼふっと転がって寝ころぶ。
眠気に意識が持っていかれてせいで反応が遅れた。

俺のベッド取られた!

「ちょっとベットで勝手に寝るなよ!そこ俺のベッドだぞ」
「いーじゃん、ちょっと横になるだけだから…。あ、一緒に寝る?」

壁際に寄って隙間を開けてくれるが、たいしてスペースは開いていない。
どう寝ても身体がくっついてしまいそうだ。

なんで男二人でベッドで寝なければならないのか。

「お前…男嫌いなんじゃなかったの」

三ツ矢は普段から男を毛嫌いしているところがある、くっつくなんてもっての外だろうに。

「律ちゃんなら大丈夫だよ、寝ながらお話しよーよ」
「…俺が嫌なんですけど、三ツ矢には前科があるだろ」
「えー前科ってなに?」

からから笑いながら素知らぬ顔してすっとぼけている。
こ、この…。
俺は忘れていないぞ、そのせいでなんか色々あって体質を身をもって味わうことになったし、壮馬とは気まずくなるし…。

「とにかく!俺は一緒に寝るなんてごめんだから!」
「あはは、そっかあ。じゃあ俺一人でここ寝てもいいってことだね。おやすみー」
「なんでそうなる!部屋戻ってよ。それかあっちの空いてるベッドで寝たらいいじゃん」

2人部屋だけど俺一人で使っているからベッドが一つ空いてるのだ、どうしても寝たいのならそっちを貸してやらんこともない。

「えーだってそっちマットレスだけで布団ないじゃん」
「知るか!ここは俺の布団!…あ、ソファは?ソファ貸してあげるから!」
「もーわがままだなあ…一緒でいいって言ってるじゃん、…ほら半分貸してあげるから」

わがままはどっちだ!
半分貸してあげるってなんだ、俺のベッドだぞ。

男と一緒の布団で寝るなんて嫌だって言ってるのに。


寝ころんだ三ツ矢がこちらに向かって手を差し出してくる。
その時、服の隙間からちらりと肌が誘うように覗いた。


ごくりと喉が鳴った。


ああ、これは抗えないやつだ。
壮馬の時に俺は学んでいる。
あの時もそうだった。
壮馬の胸元を見たらそこに視線が釘付けになって抱きしめたくなったのだ。

節操のなさに泣きたくなった。
誰を見てもそうなってしまうのか。



「……‥‥狭くても文句言うなよ」

俺の気持ちとは裏腹に簡単に屈したので早々に開けてくれた隙間に三ツ矢から背を向けてそっと入り込む。
背を向けて寝たのはせめてもの抵抗だ。

「わかってるって…ふあ…おやすみー」
「話するんじゃなかったのかよ…」
「うんうん…聞いてるよお……」

途端に三ツ矢が寝の体勢に入ってしまった。
いや、寝るのかよ。

…どーするのこれ。
本当にこのまま一緒に寝るの?

怪しまれないようになるべく離れてはいるが、背中の触れ合ったところから三ツ矢の体温を感じてどうにも落ち着かない。
ソファで寝るという選択肢もあるのに身体は動くことなくそこに留まっていた。

これじゃあとても寝られない。目が冴えてしまった。
目を暗闇の中でパチパチさせていると、三ツ矢が眠そうな声で呟くように囁いた。

「…律ちゃんさ、壮馬くんとなにかあった?」
「別に…なにもないよ…」
「そっかー…でもさなーんかぎこちないよね」

喧嘩はしてない、けど気まずいのは確かだから三ツ矢が訝しるのもわかる。
どう答えたものか。

「早くいつも通りに話せるようになるといいね」
「…うん…」

それ以上は三ツ矢も深く聞いてこなかった。
ふあ、と三ツ矢が欠伸をしてもぞもぞと寝るために身体の体勢を整えている。
そのまま本当に寝てしまいそうだ。

俺はというとすっかり眠れなくなってしまったので身じろぎ一つとれないままただじっとしているだけ。
どうすることも出来ず動かずにいたら次第に三ツ矢の呼吸が規則正しくなっていった。


そろり、と寝返りを打ち振り返ると目を瞑った端正な顔があった。

…本当に寝た。
俺がいるのに。
気にならないのかな、男と一緒に寝るなんて。
普段の三ツ矢からは想像がつかない。俺の事を寝ぼけて抱きしめた時だって三ツ矢自身は覚えてなかったみたいだけど真っ青な顔をしていたのに。
一体どういう心境の変化があったんだ…。


ベッドサイドに付いたままの明かりが寝顔をうっすらと照らしていた。
寝ている三ツ矢は普段とは違ってちょっとだけあどけない気がする。

眼前にははだけた胸元が広がっている。
なんで、そんな胸が開いた部屋着着てるんだよ…。

顔をそこに押し当てたい。

いやいや…さすがに寝ている無防備な人間に対してそんなことをするのは、人としてダメじゃないか。
首を振って三ツ矢にもう一度背を向けようとした。

ぐらり、と半身が落ちる感覚。
あ、ベッドから落ちる。

狭いベッドで動いたせいでベッドから落ちそうになってしまい、バランスを取ろうと無意識に手が何か掴めるものを探して彷徨う。
慌てて掴んだ布を主軸に身体をベッドの中心に乗せようとしたら、当然目の前には三ツ矢がいる。

落ちることは何とか回避したが、眼前に広がるのは先ほどまで見ていた胸元だった。
これなんていうラッキースケベ?
ばか、おれの…ばか…。

「…っ…」

ほんのちょっぴりだけ顔を胸に埋めた。
三ツ矢のぬくもりと、匂い。

五感をフルに使って感じると全身が痺れたみたいに満たされていく。

壮馬とは違う匂い、三ツ矢は普段から身だしなみに気を遣っていて香水も嗜んでいるようだった。
たまに匂ってくる時はあってもこんなに至近距離でこの香りを嗅いだことはない。
フルーティな香り、そこに三ツ矢自身の匂いも混じっている。

全身で三ツ矢を浴びているみたいでぞわぞわ、と腰が震える。

この感覚…。
まずいかも。

「……っ…♡♡」

咄嗟に両手で口を押えて声が漏れないようにする。

下半身はぴったりとくっついてしまっている。体温が生々しく感じられてゾクゾクとした震えがせり上がってくる。

幸いにも三ツ矢はすやすやと眠っていて起きる気配はなさそうだった。
その事に少し安心したが、寝ている無防備な三ツ矢の前で淫らな気持ちになっている自分が恥ずかしくなる。

恥ずかしくて、興奮した。
最低だ。

じわじわと身体の中心に熱が溜まっていく。

足りない。

刺激が欲しい。

そうだ、ずっと、ここ…。
触りたかったところ…。

あの日いたずらに引っ掻かれてから。
日常に戻ってもずっと考えないようにしていた、ここ。
触ったらどうなるんだろうと想像して胸の先がじんと震えた。


「…っ……ふー…うっ…♡♡」

だ、だめだ…。

今触ったら絶対…三ツ矢にばれて大変なことになる。
この部屋を出なきゃ…。

もうすでに無いに等しい理性を総動員し三ツ矢から離れて、ベッドから転がり落ちるように逃げる。

壮馬…。
三ツ矢がこの部屋にいるってことは壮馬は今一人だ。

俺は合鍵を貰っている。
ロビーで渡そうとしてちょっとした騒ぎになったが、その後一応渡しておくと言われて結局貰っていたのだ。
絶対に持っていることをバレるなと念押しされたので持ち歩くのが不安だったから見つからないように引き出しにしまってある。

同室の三ツ矢がいるから使うことはないと思っていたのにまさかこんなところで役に立つとは。

また気まずくなるかもしれない…。
でも頼れるのは壮馬しかいない。

俺ひとりじゃどうしようもできない事態に歯痒くて悲しくなる。

「んんっ……は、あ♡あ♡…」

じわじわとお腹が熱くなってきている。
これはまずい。

このままじゃ…。
覚えのある感覚を感じ背中に汗が伝う。

慌てて鍵を引き出しから取り出し外へ出ようとするが、廊下は消灯後もわずかに明かりが付いていた。
消灯時間を過ぎているから誰かに遭う可能性は低いだろうけど、この明るさでは歩いていたら顔が見えてしまう…。
途中で体質が出てしまったらまずい。

万が一という事も考えてよろよろと洗面台にあるバスタオルを手に取って頭から被った。
これで誰が歩いているかはすぐにはわからないだろう。

ドアノブをゆっくりと回して廊下をゆっくりと見渡す。
人気はない、普段なら夜の寮の廊下なんて怖いし歩けないが今は非常事態だ、早く壮馬に部屋に行かなければ。

振り返って三ツ矢の様子を伺うが相変わらずぐっすり眠っていた。
これなら部屋を出る時も気付かれないだろう。

もう一度廊下を見渡し人気がない事を確認してから壮馬の部屋まで歩き出した。




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