15 / 66
14「就寝」
しおりを挟む消灯の合図が聞こえたため、壮馬は自室へ戻っていった。
壮馬を見送ってからドアの前に立ち点呼のために待機する。
消灯の点呼はドアの外で待機して寮長に確認を取ってもらったらそのまま就寝になる。
そのため今廊下には生徒たちがたくさんいてざわざわと騒がしい。
部屋番号から順番のようなので俺の番はまだ先だ。
隣の部屋の寮生は知らない生徒だった。
同室と話し込んでいて俺が入っていけるような雰囲気ではなかったのでおとなしく待つことにする。
手持無沙汰で暇だ。
暇なので自然と今日一日の出来事を思い出してしまう。
色々あったな。でも何とか一日無事終わった。
訳がわからないまま入学式をして寮に入って、たくさんの生徒がいて。
まるで本当に俺は俺の意志でこの学校に学生として入学したみたいな気分になってくる。
女体化さえしなければ…。
性別が変わるなんて、この世界は現実ではないことを物語っている。
まだ身体に異変はない、と思う。
ドキドキってどこまでドキドキすると変化するんだろう。
以前の自分よりドキドキしやすくなっている気はするけど…。
女の姿になったらどうなってしまうんだろう。
壮馬が近くにいない時になったら。
この廊下は見渡せる一本道になっているけど壮馬の部屋は遠い。
そうこう考えていたら寮長と副寮長がもう隣まで来ていた。
俺の番だ。さっきまでざわざわしていた廊下は点呼がほぼ終わっているので就寝準備する生徒たちがまばらにいる程度になっていた。
「ラストは夏目だな。初日お疲れさま。寮部屋チェックするから扉開けてくれるか?」
「はい」
寮部屋のチェックってなんだろう。
取り合えず言われた通り扉を開けて中を見せる。ちらりと中を覗き込んで確認すると青瀬寮長は手に持っているバインダーにボールペンで何やら書き込んでうんうんと頷いてバインダーを閉じた。
「…よし。いいね。22時30分消灯だからそれ以降は部屋から出るなよ」
「わかりました。あ、青瀬寮長」
「ん?どした?」
「あの……ロ、ローストビーフおいしかったです」
「口に合ったようで良かったよ。寮の飯明日も楽しみにしとけよ。じゃあおやすみ」
まさか寮のご飯の話をされると思ってなかったようで、点呼のためにきりっとしていた凛々しい顔から一転破顔した青瀬寮長はニコニコ笑っていた。
いや、今言うこと?って感じだけどお礼言っときたかったんだもん。
めっちゃおいしかったからね!?
嬉しそうな反応されると思ってなかったからなんだか嬉しくなって、頬が緩みそうになってしまう。
ニヤニヤしてたら変に思われてしまう、何とか誤魔化そうとするが余計おかしな顔になっている気がする…。
でもそんな様子の俺を見ても青瀬寮長は優しく笑っていた。
1年は以上だな、じゃあ次行くか、と後ろにいた草下副寮長に声掛けして歩き出したのでなんとなく見送っていると、草下副寮長がすれ違う時に「俺のおすすめは親子丼かな」と俺にこそっと耳打ちしてからニコッと笑って去っていった。
先ほどの会話をばっちり聞かれていたようだ…。
お。
親子丼…!おいしそう…。
オーラのある青瀬寮長たちが去って一気に気が抜けた。
あの見た目に気さくな感じ…青瀬寮長って人気がありそうだな。
草下副寮長もフレンドリーだった。
ドキドキする胸を抑えながら部屋に入って、そのままベッドへダイブする。
なんかあの人としゃべると緊張するんだよなあ。
あの人を目の前にすると勝手に身体に力が入ってしまう気がする…。
なんでなんだろう、メインキャラ補正なのかな?
ドキドキしたりするのも全部。
そうであってほしい。
俺の意志じゃないと思いたい…。
もう消灯時間で外には出られないから、歯磨きしてベッドに潜ろう。
寮生活は規律があるから規則正しく過ごせそうだ。
あ、でも寝る前にスマホの情報が更新されているか確認してから寝ようかな。
ベッドに寝ころびスマホをスワイプして見ていくがプロフィールやワンポイントアドバイスなど特に変化はなかった。
まだ初日だしなあ。そんなに急に情報は増えないよね。
スマホの画面を消してベッド横のサイドボードへ置く。
サイドボードに備え付けられていたランプも消して天井を仰ぐと自然とため息が出た。
静かだな。
知らない部屋で一人きり、シンとした静けさが嫌に気になった。
色々な事がありすぎてちゃんと寝れるかなあ。
これから俺どうなっちゃうんだろう。
…。
夜は暗い事考えるとどんどんネガティブになっちゃうから無理やり目を瞑って余計なことを考えないようにただ寝ることに集中する。
気持ちとは裏腹に身体が疲れていたお陰かしばらくすると意識が遠のき、心配なんてなんのそのすぐに眠ってしまった。
59
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説



飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる