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11「入寮歓迎会」
しおりを挟む入寮歓迎会は食堂で行われた。
食堂に入った瞬間にご飯のいい香りとバイキング形式に並べられた夕食が見えて今置かれた状況も忘れてテンションが上がってしまった。
だってめっちゃおいしそうなんだもん。
いいにおい…早く食べたい…。
寮ごとに固まってそれぞれ座ったところで6人の上級生と思われる男子学生が出てきた。
雑談をしていた生徒たちも黙って自然とみなそちらを向くので俺もそれに従った。
「新入生の諸君は入学、在校生は進学おめでとう。入寮初日のお祝いにささやかだが歓迎会を行う。先だって本年度の寮長・副寮長の紹介と寮の規則について軽く説明をさせていただきたい。私は今年度の星寮寮長の若宮士郎(ワカミヤ シロウ)だ。これから寝屋を共にする仲間としてよろしく頼む。」
すっと通る意志の強そうな声が響く。
寮長、副寮長はいま目の前で並んでいるこの6人のようだ。
今しゃべっている星寮寮長の若宮は制服の上からでもわかるくらい身体つきががっちりしていて長身だった。3人並んだ寮長の中でも一番厳しそうな雰囲気を纏っていて、こういっていいのかわからないが気難しそうで融通が利かなさそうだと思った。
どの寮長もイケメンで明らかにモブじゃないのにスマホは鳴らなかった。
攻略キャラじゃないってことかな。
ほっとしたような拍子抜けのような…こんなイケメンなのにサブキャラなのか。
え、どういうこと?攻略キャラじゃないのにイケメンなの?
イケメンの無駄遣いじゃないか…。
考え込んでいる間に若宮の挨拶は終わっていたようで続いて先ほど会った海寮の青瀬寮長が爽やかにあいさつしていた。この人の明るさに若宮によってピリッとしていた空気が和らいだ気がした。
俺は青瀬寮長の方が好感が持てる。威圧感のすごい若宮寮長とはあんまり関わりなさそうだけどなるべく話したくはないな…。
他には海寮副寮長の草下(クサカ)と青瀬寮長とは違った明るさだがなんかノリが軽く信用できなさそうな月寮寮長の久能(クノウ)と副寮長の赤間(アカマ)。
星寮の副寮長の生駒(イコマ)は柔和で微笑んでいるおっとりした感じのイケメンだったが前髪が長く凛々しいお顔が半分ほど隠れていた。
そういうおしゃれ?みたいな髪型なのか訳ありなのか…。
そんな生駒副寮長のことがちょっとだけ気になったけど攻略キャラではないし、そもそも寮が違うから接点はなさそうだ。
とまあ、こんな感じで寮長たちが挨拶していった。
攻略キャラはいなかったけど、イケメンがたくさんいた。
なんじゃそりゃ。
まあいい、お待ちかねのご飯タイムだ。
ウキウキする気持ちといい匂いを嗅ぎながら何を食べようか目星をつけていると不意に視線を感じてそちらを見やる。
青瀬寮長と目が合った。
キョロキョロと食べ物を物色してにこにこしていた俺を見ていたらしい。
青瀬寮長は思わずと言った感じに笑ってから、まるで子供を見るような優しい顔をしていた。
なんという慈愛に満ちた顔…。
は、恥ずかしい…。
待ちに待ったご飯はそれはそれはおいしかった。
なぜか司波先生と俺のクラスの担任の藤堂先生と他にも何人かの先生らしき人も一緒に食事をしていた。
司波先生の横を通った時に体調について問われたのでついでに聞いてみたら教員寮と寮の当直の当番の先生たちも朝食と夕食(夕食は間に合えば)を一緒にご飯を食べるんだって。
先生はいた方が安心だし、いいね。
ちなみに先生曰くバイキング形式で食べれるのはこういった特別な日だけなんだそうだ。
普段は朝はパンかご飯、お昼は食券を買って食べて、夜はみんな決まったご飯をいただくらしい。
今回は歓迎会だったから全員集まって食べたけど基本的に夜ご飯は20時30分までの間に食べればいいみたいだ。
お昼は寮生以外も食べれるんだって。売店であらかじめパンとかおにぎりを買っていく人もいるみたい。
自由でいいな、なんかワクワクしてきた。
それにしても寮のご飯はおいしい。
ハンバーグとか唐揚げとか定番のおかずとコーンスープも飲んじゃった。
壮馬は呆れながらお子様ランチかよと突っ込んでいたが、聞こえないふりをした。
おいしいご飯は気持ちも上げてくれるからいいんだ。
はあ…おいしかった…全部食べてしまった。
まだお腹に余裕がある。
お代わりに行こうかなと考えていると、おかずの乗ったお皿が目の前に置かれた。
「これ、俺のおすすめ」
どこからこのお皿がと思わず見上げると爽やかにウインクを飛ばされた。
ウインク…。
青瀬寮長は突然の登場も爽やかだな。
「えと、あの…?」
自分の前に綺麗に盛り付けられたローストビーフと青瀬寮長を交互に見るが一向にこのお皿が退く気配がない。
「あ、お腹いっぱいだったか?」
「い、いえ、お代わりに行こうと思っていたぐらいには空いてます…」
「そうか、よかった。寮のご飯おいしいだろ?俺もついつい食べ過ぎてしまうんだ。で、これは俺のおすすめ。」
「あ、ありがとうございます…」
「キラキラした目でご飯食べてたから、つい。デザートも来るから余力残しとけよ」
思い出したようにふふっと笑って青瀬寮長は去って行ってしまった。
思わず顔が熱くなった。
絶対さっきのこと思い出し笑いされている。
「…なにこれ?」
ワントーン低い声とジト目でそれまで黙っていた壮馬がボソッと呟いた。
周りにも食べてる人がいるからか、壮馬はそれ以上何も言わなかった。
正直俺もわからない。
でもローストビーフはおいしそうだからいただくことにした。
ローストビーフが出る寮のご飯て…よくよく考えたらすごい豪華だな。
でも貰っちゃったし食べない訳にはいかない。
「…んー…」
語尾にハートが付きそうなぐらいローストビーフはおいしかった…。
寮長ありがとう…。
おいしくってもりもり食べているとまた視線を感じた。
なんかこんなのばっかだ…また青瀬寮長が見てるのかな?
食べてるとこ見られるの恥ずかしいからちょっとやだなあ。
恐る恐る視線の先へ目をやると若宮寮長がじっとこちらを見ていた。
ひいっなんでこっちみてるの?
眼光が鋭くて怖いよお…。
めっちゃ睨んでくるんだけど…。
今のやり取り見てたのかな?
戸惑ってビクビク怯えながら見つめ返しているとふいと目を逸らされそれ以降はこちらのことを気にする素振りはなかった。
なんなんだ?
シンプルにこわい…。
俺何かしたかな?若宮寮長とはこの歓迎会で会ったばかりで今のところ全く接点がないと思うんだけど…。
軽々しく寮長と会話してたのがいけなかったのかな、敬え!みたいな。
出来れば関わりたくないし気にしないことにしよう…。
ご飯を食べ無事入寮式も終わったあと1年生だけ集められてお風呂の説明を受けた。
大浴場があるが使用時間が22時までと決まっていて大浴場に入りたくない人は部屋の備えつけのシャワーも使えるそうだ。
1年が19時~、2年は20時~、3年は21時~、となんとなく時間が決まっているが、お風呂自体は18時から入れるようになっていて、例えば1年の俺でも20時以降に入っても問題はないらしい。時間配分は上級生と入るのなんか気まずいしそのための配慮なんだろう。
俺はそういうの気にするからありがたい。なるべく1年の時間に入ろうっと。
ご飯から消灯までの間は自由時間で、各階にある談話室を使っても良いし、自販機のあるちょっとした休憩スペース、あと卓球台とビリヤード、ダーツとか遊べるものが置いてある遊戯室もあった。
談話室にはテレビがあって消灯時間までは見れるみたいだ、遊戯室も広々していて楽しめそう。
寮生活って規則で縛られて窮屈な思いをすることも多いだろうから娯楽があると助かる。
消灯の点呼が22時30分でそれ以降は自室から出てはいけない規則になっている、それを破ると罰則があるらしい。
大体こんな説明を受けて解散となった。
こうして説明を受けたりしていると本当に新入生になった気分だ。
「これからどうする?」
「とりあえず風呂いこうぜ」
「そうだね」
歓迎会と夕食を終え時刻は19時を過ぎていた、確かにいい時間だ。
壮馬の提案に乗り、大浴場へ行くことになった。
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