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5「俺の秘密」
しおりを挟む西に教えてもらった道順通りに保健室はあった。
けが人に対応できるようにかグラウンドが真ん前に見える位置、そして保健室の先には職員室があるようだ。
ドキドキしながら、ノックしてみる。
扉の向こうからどうぞ~とのんびりした声が返ってきた。
「失礼します。」
入った先の椅子に座ってこちらを向いている司波先生がいた。
「はいはい~。夏目くんだね」
いらっしゃいとにこにこ言われて、少しだけ緊張していた身体から力が抜けた。
この先生は癒し効果がある気がする…。
どうすればいいのかわからず、中に入っても落ち着かないように視線を彷徨わせているとくすくすと笑い声が聞こえた。
「大丈夫ですよ、ちょっとした問診だけですから。今日は入寮初日ですしすぐ終わるようにしますよ」
「は、はい…」
パラパラとたぶん入学式前に見ていた資料であろう俺の写真が付いた書類を見ながらなにか確認している。
そう言われても俺はそもそも体質とやらのことは何一つ知らないんだが…。
聞かれても何も答えられない。
そのせいで不審に思われたらどうしよう…。
余りにも緊張している俺を見かねたのか、先生がお茶を入れてくれた。
無音の中カチャカチャと食器の音だけが鳴っている。
「紅茶です、よかったら飲んで」
「ありがとうございます」
両手でカップを包むと温かさがじわりと広がっていく、指先こんなに冷えてたのか。
湯気と一緒に茶葉の香りが漂ってくる。
お茶の匂いを嗅ぎながら一口飲むと体の中がじんわりと温まってほっとした。
リラックス効果抜群だ。
「えーっとそれじゃあ始めますね」
事前に受け取っていたらしい問診票を見ながら司波先生が話し出す。
「フィジオタイプ……ジェンダーチェンジ、かなり珍しい体質ですね。トリガーは心拍数の上昇で、心拍数の上昇は運動ではなく恋愛・性的興奮の方ですね」
「ジェンダー…チェンジ…?」
何を言っているかさっぱりわからない。
「ん?ああ、夏目くんは体質の名称はあまり詳しくないのかな。それぞれのご家庭での呼び方もありますからね…では、軽く説明しますね。ジェンダーチェンジは体質のうちのひとつで、主に性別が変わることに対しての総称ですね。男子から女子、女子から男子どちらも同じジェンダーチェンジです。夏目くんの体質は医学的にはもっと別の言い方がありますが、性別が変わる体質という点でジェンダーチェンジという言い方でよいと思います。まあ…そもそもかなりマイナーな体質なので知っている人は少ないかもしれませんが」
「へ、へえ…」
今性別が変わるって言った?
性別が…。
俺が女になるってこと?
どうやって?体が作り替わるの?一瞬で?
骨格からなんもかんも変わっちゃうのかな?らん〇1/2みたいに??
ここは(たぶん)ゲームの世界の話だから簡単にできちゃうってこと?
はは…すごー…。
頭の中で乾いた笑いがでてしまった。
実感がわかないけど己の身が作り替わってしまうことに冷や汗が背を伝った。
「有名どころだと魔女の末裔(フィジオタイプ・ウィッチ)やオオカミの末裔(フィジオタイプ・ウェアウルフ)とかありますけどそっちの方がみなさん聞いたことあるかもしれませんね」
先生は衝撃的な事実を受け止めきれない俺に気付かず体質について何やら熱心に教えてくれている。
「話が逸れました、…コホン。トリガーについて知っているのは家族と、桂木くん…、一緒にいた彼だね」
「あの…トリガーって…」
「ん?トリガー違ったかな?体質の発動条件はここに、君が書いた問診票のとおりで大丈夫かな、もう一度確認しますか?」
「は、はい!お願いします」
問診票をこちらへ手渡してくれた。
よかった!助かる…!目を皿のようにして全部見なくては。
混乱する頭でなんとか考える。
トリガーとは先生がさっき言っていた心拍数がどうのこうのってやつかな。
問診票を見ていくとやはりそのようだった体質が発動する条件ってことか、心拍数の上昇…恋愛・性的興奮…。
性的…エッチな気分になったりドキドキすると女になっちゃうってこと…?
オープニングで俺は男には絶対ときめかないってこれのことか!
ちょっとだけ謎が解けてスッキリしたのもつかの間一抹の不安が頭をよぎる。
俺ばかだからわかんないけど、もしなんかあってこの学園で女の姿になったら為す術なしでは!?
ここ男子校で、男しかいないわけで…それって大丈夫なのかな!?
ゲームの世界だから大丈夫であってほしいけど、これもしかしてR指定のやばいゲームだったのかな!?
力のない女の姿の時に思春期真っただ中の男子たちに見つかってしまったらと思うと全身から汗が噴き出る。
冷や汗が止まらない。
いやいや…ははは…。
BLゲームだと思ってたけど、これ何ゲー!?
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