【完結】いずれ忘れる恋をした

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【最終章】彼に決めた

3.

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「今日はもう閉めちゃおう」 

6月。激しい雨が窓を打っている。 

こういう日は誰も来ないから、早めに閉めても良いよと、王都へ買い出しに行った両親は言っていた。 

「…父さんと母さん、大丈夫かな。今日は泊まって来ることになるかも」 

読んでいた本を閉じて、店の扉に掛けられたプレートをcloseにする。 

しっかり施錠をして、窓の確認をした。 

「よし、料理の練習しよう!」 

掃除をしながらそう独りごちる。 

雨の日、店の中に1人。雲は分厚く、外は暗い。
怖くない、怖くない。 

ふと、とある席に目が止まる。
何故だかそこに誰かがいて、私を安心させるように笑った気がした。

____


花瓶の水を入れ替えて、弟の写し絵の横に置く。
そっと彼の額を指で撫でた。 

絵が得意なのがここで役に立つだなんて、悲しい話だ。けれど、こうして彼の姿を残せて本当に良かったとも思う。
とても上手いわけではないけれど、弟も家族も喜んで褒めてくれたそれ。満面の笑みを浮かべる弟をしばらく眺めてから、厨房へ向かった。 

私に泣く資格なんてない。 

________


「シー!!聖女様が、魔力欠乏症を治す薬を作ったって…!!!」
「え…」
「私たち平民の手にこそ渡るべきだって、国王陛下や王太子様達と力を合わせて、各地に分けてくださる手続きと法の整理をしたって」
「そっか、……そっか。………良かった…っ」 

ディーが亡くなってから3年。 

店に飛び込んできた姉が息を切らせながらそんなニュースを告げた。 

母さんと姉さんは私に駆け寄ってきつく抱き締める。厨房まで聞こえていたのだろう、父さんも飛び出してきて、私たちをまとめてがっしりと抱き締めた。 

店の中にいたお客さんの多くが常連で、私たちの事情を知っている人も多い。店内がザワついてるのは分かったけど、聞き分ける余裕はなかった。
ただ、弟のような子が、私たちのような家族が減ることが減ることが、何よりも嬉しかった。 

「聖女様…ありがとうございます」 




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