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【3章】1人目攻略完了
1.
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「…あれからもう、1年が経つのね」
墓前に花を供えながら母さんが言う。その声は穏やかで、でも、父さんはそんな母さんを支えるように肩に手を添えて そっとさすっていた。
私の背にある十字架。重すぎるそれは、家族が何を言おうとも軽くなることはない。
「…シーも、少しずつ 自分を責めないようにしてね」
「辛くなったら、すぐに父さんか母さん…もちろんエィフィルやティビーでも良い。溜め込まないできちんと言いなさい。……お前が背負う必要なんて、どこにもないんだから」
私を挟んで座る兄と姉が父の言葉に頷いて、優しい色を浮かべているであろう瞳を私に向けているのが分かる。
「………うん、ありがとう」
もう少しここにいるから 先に帰ってて。そう告げると、両親は私の頬にキスをして去っていった。兄は大きな手で私の頭を優しく撫でて、姉は痛いくらいに強く私を抱き締めて、帰って行く。
そんな家族の愛が、私を責めない家族の優しさが、逆に私には身を裂かれるほどに 痛くて辛い。
________
「いらっしゃいませ、ドラクさん」
「おう、いつもの頼む」
「はい!かしこまりました」
店の扉を潜って来たのは今や常連のドラクさん。冒険者として生計を立てている男性だ。
今はこの街周辺で仕事をしているそうで、とある縁があってうちに訪ねてきて以降、時折立ち寄ってくれるのだ。
「母さん、アイスコーヒーとナポリタン大盛りお願いしまーす」
「はーい」
厨房へ注文を伝える間に、ドラクさんは弟の絵の前に1輪の花を生けていた。来る度に毎回手を合わせてくれる彼は、見た目によらず かなり律儀な人だと思う。
________
「お待たせしました、いつものです」
「ありがとな」
皿とグラスを置くと、礼を言ったドラクさんが私を見た。身体の大きな彼は、座っても私を少しだけ見上げるくらいの差しかない。つまり、他のお客さんより目線が近いのだ。
「何です?」
じっと見つめられて心臓が跳ねる。トレイを胸に抱えてそう問うと、
「いや、やっぱりあんたの笑顔良いなと思ってな」
なんてさらりと言われるものだから、更に心臓が大きく鳴った。
ただでさえ好みの見た目の男性なのだ。確かに年の差はあるけれど、その事実と私の恋心は全く関係のないもので。
「知ってるか?嬢ちゃんが笑うから、ここには人が集まるんだって」
「お店に貢献できているのなら嬉しい限りです」
しかしこの気持ちを伝えたところで彼がそれを受け入れてくれるわけもないし、伝える気もない。
「さ、冷める前に食べちゃってください」
「おう。いただきます」
「ごゆっくりどうぞ!」
背を向けて厨房の方へ戻ると、ニコニコした母さんと心なしかムスッとした顔の父さんが迎えてくれた。今は昼のピークを超えたところで、店にはぽつぽつとお客さんがいる程度。
「うふふふ」
「うう…認めないからな…ぶつぶつ…」
「もう、そんなんじゃないってば」
「あら、残念。あのお客さんが来てからずっとあんなに可愛い顔してたのにー?」
「気のせいだよ。だって私は結婚するつもりないもの」
「…シーリル…」
「大丈夫、私の後に継ぐ子はちゃんと見つけて育てるから!あと父さん、ドラクさんのこと悪く言わないで。毎回ディーにお花持ってきてくれる良い人だよ」
「…すまん」
複雑そうな顔をした両親を安心させるように微笑んで、力こぶをつくる動きをする。
「じゃあ私もお昼食べてくるね」
「上に父さんの試作品もあるからそれ食べて良いわよ」
「やった!父さん、後で感想伝えるね」
「シーは厳しいからな…、お手柔らかにな」
2階に上がる前に振り返ると、何故かこちらを見ていたドラクさんと目が合う。私はドキッとした気持ちを隠して会釈をしてから歩を進めたのだった。母さんに変なことを言われた後だったから余計にドキッとしたけど、ちゃんと自然に笑えていたかな。さっきの会話、聞こえてないと良いけど。
墓前に花を供えながら母さんが言う。その声は穏やかで、でも、父さんはそんな母さんを支えるように肩に手を添えて そっとさすっていた。
私の背にある十字架。重すぎるそれは、家族が何を言おうとも軽くなることはない。
「…シーも、少しずつ 自分を責めないようにしてね」
「辛くなったら、すぐに父さんか母さん…もちろんエィフィルやティビーでも良い。溜め込まないできちんと言いなさい。……お前が背負う必要なんて、どこにもないんだから」
私を挟んで座る兄と姉が父の言葉に頷いて、優しい色を浮かべているであろう瞳を私に向けているのが分かる。
「………うん、ありがとう」
もう少しここにいるから 先に帰ってて。そう告げると、両親は私の頬にキスをして去っていった。兄は大きな手で私の頭を優しく撫でて、姉は痛いくらいに強く私を抱き締めて、帰って行く。
そんな家族の愛が、私を責めない家族の優しさが、逆に私には身を裂かれるほどに 痛くて辛い。
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「いらっしゃいませ、ドラクさん」
「おう、いつもの頼む」
「はい!かしこまりました」
店の扉を潜って来たのは今や常連のドラクさん。冒険者として生計を立てている男性だ。
今はこの街周辺で仕事をしているそうで、とある縁があってうちに訪ねてきて以降、時折立ち寄ってくれるのだ。
「母さん、アイスコーヒーとナポリタン大盛りお願いしまーす」
「はーい」
厨房へ注文を伝える間に、ドラクさんは弟の絵の前に1輪の花を生けていた。来る度に毎回手を合わせてくれる彼は、見た目によらず かなり律儀な人だと思う。
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「お待たせしました、いつものです」
「ありがとな」
皿とグラスを置くと、礼を言ったドラクさんが私を見た。身体の大きな彼は、座っても私を少しだけ見上げるくらいの差しかない。つまり、他のお客さんより目線が近いのだ。
「何です?」
じっと見つめられて心臓が跳ねる。トレイを胸に抱えてそう問うと、
「いや、やっぱりあんたの笑顔良いなと思ってな」
なんてさらりと言われるものだから、更に心臓が大きく鳴った。
ただでさえ好みの見た目の男性なのだ。確かに年の差はあるけれど、その事実と私の恋心は全く関係のないもので。
「知ってるか?嬢ちゃんが笑うから、ここには人が集まるんだって」
「お店に貢献できているのなら嬉しい限りです」
しかしこの気持ちを伝えたところで彼がそれを受け入れてくれるわけもないし、伝える気もない。
「さ、冷める前に食べちゃってください」
「おう。いただきます」
「ごゆっくりどうぞ!」
背を向けて厨房の方へ戻ると、ニコニコした母さんと心なしかムスッとした顔の父さんが迎えてくれた。今は昼のピークを超えたところで、店にはぽつぽつとお客さんがいる程度。
「うふふふ」
「うう…認めないからな…ぶつぶつ…」
「もう、そんなんじゃないってば」
「あら、残念。あのお客さんが来てからずっとあんなに可愛い顔してたのにー?」
「気のせいだよ。だって私は結婚するつもりないもの」
「…シーリル…」
「大丈夫、私の後に継ぐ子はちゃんと見つけて育てるから!あと父さん、ドラクさんのこと悪く言わないで。毎回ディーにお花持ってきてくれる良い人だよ」
「…すまん」
複雑そうな顔をした両親を安心させるように微笑んで、力こぶをつくる動きをする。
「じゃあ私もお昼食べてくるね」
「上に父さんの試作品もあるからそれ食べて良いわよ」
「やった!父さん、後で感想伝えるね」
「シーは厳しいからな…、お手柔らかにな」
2階に上がる前に振り返ると、何故かこちらを見ていたドラクさんと目が合う。私はドキッとした気持ちを隠して会釈をしてから歩を進めたのだった。母さんに変なことを言われた後だったから余計にドキッとしたけど、ちゃんと自然に笑えていたかな。さっきの会話、聞こえてないと良いけど。
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