千里の道も一歩から

もちた企画

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第一章 伯爵の策略と子爵の苦悩

第8話 鉢合わせの英雄に胃痛

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第8話 鉢合わせの英雄に胃痛
デリー子爵side

我が子爵領西部にある山々<ルート山脈>を越えると拓けた平原が続くが今回はそこが戦場となる。
いつもなら言い合い罵り合いで小競り合いが続く駐屯所だが今回は早馬で報告があった通り侵略目的だったとは情けない。
なんの前触れもなかったか?いやそんなはずは。
頭を巡らすだけで定期報告書にも何もなかったように感じたが帝国はここから攻めれば落とせると考えたのだ…。
山脈のおかげで平和ボケしてしまったようで自分自身が情けなくなった。(きゅぅぅぅ)
うぅ、こんな時に胃が…。

救援要請を他の領主にも出したが自分が向かったところで間に合わず時間稼ぎが関の山だ。
だが王国は潰させはしない。領民にも家族にも手出しはさせん。娘達はまだ成人前、死なせてなるものか。

歯を強く噛み締め馬を走らせるデリー子爵の気概に他の兵士も奮起して士気が上がる。

「なんだ!」

村先で地響きがあり、明らかに魔法だとわかった。今回の兵士では魔法を扱える者は居なかったと報告があったためにこちらの兵士は全滅してしまったんだろうと諦めてしまった。

「遅かったか」

「急ぎ馬を走らせて進軍を阻止!でなければ被害が甚大になる」

振り返り兵士たちを鼓舞する。

「皆の大事な者が失われぬ為にも時間を稼ぐ!覚悟はいいか!!」

「「「 おおおぉぉぉぉぉ 」」」

一丸となり野山をかける。
整備されておらず獣道だが馬が通れれば問題はない。

◇◇◇

「おぉ、デリー子爵」

「なっ!クレール伯爵殿」(きゅくるっっ)

くっ、こんな時に。
驚き手綱を握る手が強くなる子爵。

「まさか応援に?」

いや、ないな…口にしてはみたが連絡が早すぎる。

「はっはっは。そのまさかですよ、近くで演習をしていたら煙たくなったので見に行ったら悪戦苦闘していたそちらの兵士を見つけましてね。帝国兵を一掃致しました」

「なんと!報告では数万の兵がいたとありましたが」

「まぁ戦は数ではありませんからな」

ニヤけて話す伯爵の顔は薄気味悪く後ろの伯爵兵も笑っている。

「で、ではこちらの兵はどうなりましたか。どこにおりますか?」

「真に申し訳ないが悪戦苦闘してる最中に息絶えてしまいましてな。こちらの指示を伝えても最後まで逃げようともせず戦っていた勇猛果敢な彼らをデリー殿にもご覧になってもらいたかったですよ」

「くっ」

見殺しにしたということか。(きゅぅぅきゅ)
私にも責任がある。…今は争っている場合ではないな。

「応援感謝致します。詳細をお聞かせしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんですとも、それに――」

近づき私の近くで囁く伯爵。

「今回の件でご息女の色良い返事を期待しますよ」

こちらと目を合わさず過ぎ去る伯爵をデリーは睨みつけるしかなかった。(きゅきゅきゅぅぅぅ)
並走して近くの村へ向かう子爵はお腹を抑えて憂鬱に空を見上げるのだった。

◇◇◇◇

夕方から日入る時刻に周りは暗くなっていった。

「行ったか?」

「あぁ、行ったようだ」

笑いながら馬に跨って走り去る兵士を見送りながら数人が動く。

「おし、いいぞ」

「ふぅぅ」

緊張の糸が切れたようにお互いを労う兵士たち。
霧に覆われて伯爵の兵士に首を斬られたはずの者達が勢揃いしていた。

「伯爵って怖いんだな…子爵様は村に来ると俺らによく声をかけて服とかくれる温かい人だったけどよ」

「うちの子爵様がお優しい方なのだ」

「伯爵の兵士って蛮族の集まりなのか?死体の片付けが手慣れてたぞ」

「おぉ、おそろしい」

「イカれた連中だと分かって生きてるのが奇跡だな」

「全くだ」

「それでは暗くなりましたので私が先導して一度村まで戻ります。隊列を組んで向かいましょう」

暗くなってからの山越は危険だがこの人数を待機させる場所もない為帰ることにしたメイちゃんは灯りを浮かせて山道に入る。兵士は殿で農兵は先頭だ。
誰も文句がないのは生きられると確信しているからだった。メイちゃんも多くは語らず真っ直ぐ村まで歩き続けるのだった。


◇◇◇◇◇

「母ちゃんは村の皆に声かけてくれる?いっぱい帰ってくるから」

「え?!えぇ。分かったわ」

村から農兵として出ていった家族へ帰ってくることを伝えに走る母親。

兄は一足早く迎えに向かい、弟は「準備があるから」と迎えを任された。

父親の反応は小さく分かりにくいがメイちゃんさんの反応は強く分かりやすかった。どうやら獣除けの役割で霊気エーテルを発しているのかなと思って近づいていく。

木々を走り抜けて大岩を回り込むと時間が突然ゆっくりになって岩の陰にいる人物を見つける。
行動がとてもゆっくりで振り向く老人は笑顔で手を振る。

「おじいさんだれ?」

手を振りかえすが首を傾げて不思議がっていたけどそのおじいさんは忽然と消えて見えなくなる。

「あれれ?」

誰もいないことに不思議がりながらも父親の場所までもう少し、急いで向かうマークだった。




⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
プロットががが( ゚д゚)
申し訳ありません。またしばらくお待ちください。
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