千里の道も一歩から

もちた企画

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第一章 伯爵の策略と子爵の苦悩

第6話 戦のドンデン返し

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第6話 戦のどんでん返し
家に戻ると早速夕飯の支度を母さんが始めたのでボクも手伝う。いつもはナイフを押し付けて切っていた野菜や肉が今回弟がくれたナイフのおかげでスパスパ切れた。
切り終わった食材をまとめて母さんに渡すと「助かるわね」と笑顔で受け取ってくれた。父さんは弟に何か話しているが何やら真剣だった。
手伝いがひと段落したのでボクも会話に混じってみる。

「そこで今回も遠征して…遠くに行って悪い人を倒してきてほしいそうだから父ちゃんは明日から居ないからしっかりな」

戦争という言葉を使わない父さんはちょっと不安そうだった。たぶん、戻らないんだろう。
さっき村長家の前の人たちが言っていた。

「戻ってこられるのは少ないだろう」って。

ボクも父さんが居なくなっちゃうのはイヤだから止めようとしたら弟が何か手渡してたんだ。

「じゃあこの石持って必要だったら強く握ってね」

黒い小さい石を渡してた。
小さい巾着袋に入れて首からぶら下げた父さんは「確かに持っていくからな」と強がっていた。
弟の頭とボクの頭をクシャクシャと撫でまわす。

くすぐったいけど暖かい感じがした。

「ボクが代わりに」という言葉は小さく消えて父さんには聞こえなかった。

弟は明日行っていつ帰ってくるのか何度も聞いていたが到着する日くらいしか分からないらしい。

ボクの収納道具をあげようとしたら弟に止められた。

弟に抗議しようとしたら「もう渡したから大丈夫」なんだそうだ。

「さっきの石?」

「そうそう」

軽い感じで返事された。必要なこと毎回言わないのって治してほしいところだけど…。

「夕飯ですよー」

母さんの声に反応して振り返る。
そのまま食べてあっさり寝ちゃった。

朝起きた時には父さんはもう出かけてた。

行ってらっしゃいと一言伝えたかったが弟が代わりに言ってくれたそうだ。ありがとう。

「兄ちゃんは全く起きなかったからね」

「お恥ずかしい」

「まぁいいじゃん」と朝ごはんを食べるボクの肩にそっと手を置く。

「それより畑いいの??」

「食べたら向かうよ」

「はいはい」

「…ホントだよ、忘れてない」

「わかったよー」

手を振り離れる弟は母さんの手伝いでも行ったんだろう。昨日の夕飯が残っていたのでそれを口いっぱいに頬張る。そういえばメイちゃんさん見てないな?

「ごちそうさま」

食器を片付けて畑に向かう。任された広い畑にまずは水を撒くために川の水を汲みに樽を持って出かけた。

◇◇◇

村の若い男衆が駆り出されて戦地に向かう足取りは重かった。
街道を進めば簡単なのだが最短距離で向かうために山越え中だ。
武器や装備は戦地近くの駐屯所で受け取るよう指示書に書いてあるためにほぼ手ぶらで進む。
引き受け人である村長は山を越えられないために今回は村長の長男坊が代理として先導していた。

「皆さん、この先の峠を越えたら戦地となります」

「あいよ、駐屯所着いたらとっとと帰れよパッド」

「分かってますよ、今でももう足が震えてるんですから」

「違ぇねぇ、あわあわしてたもんな」

ガハハと農夫達が笑い村長代理が苦笑する。

「ボクが戻る時に家族に渡したい物あればおっしゃってくださいね」

「じゃあこの岩を--」

「いいね、じゃあ俺はこの木を--」

「む、無理ですよっ!!」

完全に遊ばれている村長代理だが皆が緊張をほぐそうとしているのは感じ取れるのでただただ苦笑していた。

「トニーさんは何かありますか?」

2度目の戦地で落ち着いてついて来る農夫に声をかける。

「じゃあ」と続けて
「[帰るから待ってろ]と伝言を頼むよ荷物にゃならないだろうから」

その言葉が一瞬静寂を生み、揶揄っていた人たちも真剣な顔になって伝言の内容を村長代理に伝えていく。

読み書きができてよかったと思う村長代理のパッドだった。そこから少し続いた峠の終わりに雨が降っているのが見える。

どんどん近くなる駐屯所に緊張が高まる。
村のみんなも無口になった。

◇◇◇

「そいえばメイちゃんさんは?」

「今はいないよ、父ちゃんのところに着いて行ってるから」

「ぇ!そうなの??」

「そうそう!自主的にね。《御尊父様は必ずや!》って」

「メイちゃんさんが一緒ならどんなところでも大丈夫そうだね」

「この村から死人は1人も出すなとも伝えてあるよ」

「ありがとう、ジェイク」

ボクは素直に頭を下げる。弟ってやっぱすごいんだな。

「ボクにとっても父ちゃんだもん当然だよ」

クククと弟はまた笑って遠くを見る。

「まぁ近いうちに帰ってくるけど…そうだ!それとも…見る?」

「みるって?」

収納道具を取り出して透明な玉を取り出した。自分の頭より大きいその玉を弟は「水晶玉」といい家の机にゴトっと置いた。玉が転がらないように台座を準備してその台座に霊気エーテルを纏わせて玉が少しずつ光っていく。

「こうやって繋げると向こう側と連絡ができるんだよ、1日もあれば着くって言ってたしどんな状況か見てみよう」

「もしもーし、メイちゃんどう?」

『はい、マスター』

「父ちゃんどうかな?もう着いた?」

『もうお側で仕えておりますが…。あまり状況がよろしくなくて事前状況の把握をしとけばよかったです』

周りが見えて父さんもいた!なんか畑の開墾作業より疲れているようで肩で息をしていた。

「お守りするって出たから無理でしょ、よろしくないって人数?道具?立地?」

『圧倒的に人数です。1対1000がノルマですね』

「うっは、帰らせるのは難しい?」

「ぇ?千人も倒さなきゃいけないの?!」

「兄ちゃん」と口を手で押さえられた。今は黙って聞いていよう。

『囲まれてますね、今回の戦争はいざこざの延長ではなく領土拡張の占領支配が目的のようです』

「そっか」と呟き小さく頷く。

「人数だったね、メイちゃん増えていいよ」

隣の弟が目を閉じて霊気エーテルを練っているのが分かる…し、すごい濃度がほぼ一瞬で消える。

「ーーやっちゃえ」

目を開いてボソッと弟。
水晶玉のメイちゃんさんは『ありがたく』とお辞儀をして。

『いきます』

水晶玉の景色が目の前の戦場どんどん小さくしていき
盤上の戦のように敵の本陣も一望できる高さにまで上がり白い線が横に伸びてそのまま前進する。

「すごい…」

固唾を飲んで見守る。水晶玉からの情報はたぶん、メイちゃんさんの視野だ。
そしてさっき現れた白い線は…全部。

ーーー全部細かいメイちゃんさんだ。

雄叫びに近い叫び声がこだまする。
盤上の端から反対側へ向かってゆっくりと確実に進むメイちゃんさん軍団は休まず倒れず一定のペースで敵陣地を蹂躙する。
進む先に隙間があってそこまで辿り着くと小さい点はバラバラに動き始め本陣の方向に向かっているようだ。

次の瞬間に赤い小さな光がメイちゃんさん達にぶつかる。

「ぁ やっぱいるよね」

火の手がメイちゃんさん達を襲うが膨らむ赤い閃光が消えると何もなかったかのように留まるメイちゃんさん達。

『あの程度なら気になりません、このまま進行します』

「確実に戦力は削ぐか…一度止まって、堕とすから」

『はい、マスター』

その言葉と共に動かなくなるメイちゃんさん達。

「兄ちゃんから少しもらうね」

急に手を握りボクの霊気エーテルがガクンと抜けていく。一瞬ビックリしたけど目の前の光景に釘付けになった。

空が暗くなる。
快晴では無い空の雲が大きな穴を広げて晴れるがそこから大きな岩が落ちてきた。敵の本陣が丸々覆われた原因は……。

隕石墜としメテオ・ストライク







☆★ あとがき ★☆

父親の様子を見るだけだったのに…。
おのれ敵軍めっ!(違


待て、次号!

皆々様からの好評価が生きる糧となります!これから応援よろしくお願いしますm(_ _)m
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