千里の道も一歩から

もちた企画

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第一章 伯爵の策略と子爵の苦悩

第5話 帰ろう

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小さい揺れから大きくなりしばらく揺れが続いたけど何もなさそうだ。

地震って言うんだよね。知ってるんだ。

ちゃんと机の下で蹲り震えていたボクを弟がニコニコ顔で見つめている。

「もう揺れてないよ、兄ちゃん」

「ばっかお前、こっち来いって!何か落ちてきたら危ないぞ」

「はいはい」

「ふふふ、仲がよろしいですね」

紅茶のおかわりを準備するメイちゃんさん。
地震雷火事親父という言葉を知ってますか?なんて質問しようとしちゃった。

「あ、さっき言ってた収納道具ってどこだっけ?以前の装備一式で今の体型で装備できるの欲しいさ」

「マスタールームにあると思いますがあるいはこちらの中ですね」

ペンダントを取り出してメイちゃんさんは答える。

「なんでそこに??」

「はい、生前にあれほど収納道具の中身は溜め込まず取り出しておいてくださいと言っていたのにいざご逝去された途端に部屋を破壊するほどの物量が攻めてきたのを今も忘れておりません」

「そのまま収納を移し替えた収納道具がこのペンダントになります」


弟に分かるようボヤくメイちゃんさんだが弟は気にしてないのか興味がないのか。

「あはは、見ものだったね」と煽る始末。

「えぇ、こうしてお伝えできただけでも重畳です」

「ご案内します」と道案内をされて扉が歪な部屋の前に来た。ここがマスタールーム。
弟の前の人が最期にいたところだ。

「ご遺体は手厚く葬らせていただき遺留品はそちらの戸棚に並べてありますが家具は新調しておりません」

家具は全部壊れたのか…。
どんだけ入ってたのか想像ができないけど壁にはあちこち凹みが見えたので本当に部屋を壊すほどの荷物があったんだと感じた。

「中身なんだった?ボクってばその辺覚えてなくてさ。なんだったら換金して今の両親に贈るか」

「よろしいのですか?ツノ無しドラゴンとか調合にも使える品がたくさんございましたが」

「全部じゃ無くていいでしょ。ちょっとずつ換金できるように小出し枠用意しといてー」

「かしこまりました」

「さっきの地震が気になるけど村は大丈夫かなぁ」

部屋の窓から外が見えたのでふと村を思って声が出ていたようだ。

「一旦帰る?アイテムもある程度手に入ったしまた来れるよ」

「私もご一緒いたします。マスターのご両親に挨拶をしませんと」

荷物整理というより菓子折りを包んでいるメイちゃんさん。

「じゃあそれでお願い」

「はいはい、じゃあ今から持って行くもの渡すから収納道具にしまっていってー」

「いぃッ」

ドササッ

大量の服や靴が次から次へと渡される。

「これ全部?」

「まだあるけど一応今回はこれだけ」

「わかったよ」

ボクは弟から渡された荷物を左腕の腕輪に収納していく。畑の苗を運ぶリレーのように手際よく腕輪に収納されていった。

「これで全部だね」

「あとは皿かな?あんまりうちって無かったもんね」

「専用のはあるけど欠けてるんだよね」

「一応メイちゃんさんのはどうする?」

「フフ、私のはすでに準備できておりますので心配いりませんよ」

行く気満々のメイちゃんさん。両親驚かないかな?
ゴーレム連れて帰って…。

マズイかな?

「ねぇ、両親ビックリしないかな?」

「ん?」

ボワンと黒い穴が広がり光が差し込む。
穴の先には林が見えた。
ぁ、もうなんでもないです。

「なんでもない」

ボクは気がつかなかったことにした。

「ではお先に」とメイちゃんさんが穴へ飛び込む。
続いてボク、弟の順番だ。

途中で足が引っかかって転びそうになったが鍛錬のおかげでことなきを得た。弟が手に口を当てて笑いを堪えている。

…見てたか。

「コホン、すっかり夕暮れで帰るのにいい時間だね」

「そうだね、夕飯何かなぁ」

「この先にある村が今のマスターが住まわれているんですね?人間嫌いだったのに感動です」

「まだ3歳だからね」

「なんでもすぐ出来ちゃうからボクが比べられちゃうんだけどね」

ため息が自然と出てくる。
次男は要領がいいが前世の記憶があるんじゃ尚更だろう。

「あはは、兄ちゃんこれ」

突然右手を差し出す弟。
話の変え方が下手ですね。

「これは?」

「弁償するって言ったでしょ、ナイフ」

「おぉ!ナイフ」

手渡されたナイフは誕生日にもらったナイフより幾分キラキラしてて持ち手に装飾がーーー。

全然違うじゃん!

「全然違うじゃん」

めっちゃ光ってる。

「サイズがなかなか無かったから…ごめんね」

かっこいいから文句がない!!

「こんな良いのもらっていいの??」

「昔のナイフだから中古だよ中古」

ニカっと笑う弟はそう言うとどんどん村に歩き出す。
そのすぐ後ろをメイちゃんさんが並走するが村が賑やかなのが気になった。

森から村の塀に近づくと反対側に村のみんなが集まっていた。りょうしゅがどうのと聞こえたが人集りの奥に村ではまず見ない馬車が止まっている。
全体的に青い色で統一されて銀色の枠で覆っている綺麗な馬車が鎮座していた。

「メイちゃんは少し離れてて」

弟はメイちゃんさんに指示を出す。

「じゃあボクも」

「兄ちゃんは一緒に行くんだよ」

この流れはきっとよくない。
でもバッチリ左腕を弟が両手で固めて引っ張っていく。
もう家に帰って夕飯待ちでゆっくりしようよと内心思っていた。

「めんどいぃ」

声にも出てた。

村長の家で何やら話してるようで馬車を見る者、御者に話しかけ情報を聞こうとする者、夕飯支度で物々交換してる主婦や家の中を覗き込もうとしている子供を親が叱っていた。

「なんでも領主様とそのご子息が休暇でこの村に来たそうだ」

「休暇?急に・・だろ?村長腰抜かしてたぞ」

「戦争がどうのって言ってたぞ」

「村から兵を出すってか?いくらなんでも農民を減らすことはしないだろう」

「でも前にあったよな」

「そうそう」

話題は戦争の話へ。
父さんと母さんが見えたから声をかける。

「ただいま~」

「おぉ、おかえり」

「足怪我してない?膝擦りむいてるわよ」

あぁ、それは穴を通った時に……言えるかっ!

「大丈夫大丈夫」

「夕飯何~?」

「さっき猪が取れてね、お裾分けもらったから今日は肉だぞ」

「やった」

「野菜もね」

日の入りが近づく中、親子4人手を繋いで家に帰る。
1人?のゴーレムを忘れて…。

「うぅッ!あのマスターがあのマスターがーー」

ぁ 泣いてる。






☆★ あとがき ★☆

修行に一区切りだったが豪華になったナイフをどう言い訳しようか思い悩む兄ちゃんだった。


待て、次号!

皆々様からの好評価が生きる糧となります!これから応援よろしくお願いしますm(_ _)m
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