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第3章 『エルフ国編②』
第7話 「魔王様、世界樹の報復に巻き込まれる」
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”それ”は、何の前触れもなかった。
黒エルフ国のいたるところから、無数の巨大な根が隆起したのである。
言うまでもなく被害は甚大であり、さらに悪いことに、その根からは定期的に魔獣が生み出され始める。
しかし被害は黒エルフ国に留まらず、すでに白エルフ国にて隆起していた根もが活動を再開したようで、こちらからも定期的に魔獣が生み出され始めてしまう。
まるで白エルフ国を襲った、世界樹の暴走を再現しているかのようだった。
だが、決定的に違うがひとつだけあった。
根の数である。
明らかに黒エルフ国のほうが多かったのだ。
そのために、生まれ出る魔獣の数も多く、被害は瞬く間に拡大していく。
そしてもうひとつ。
前回と違う点……それは、青々と茂っていた世界樹の葉が、血のように真っ赤に変色していたのである。
世界樹の巨大さゆえに遠目でもわかるために、まるで世界樹が憤怒しているかのようであり。
白と黒、どちらものエルフたちが戦慄する。
色に関係なく、エルフ国が激震する──
※ ※ ※
「まさか……また誰か世界樹の”核”を盗んだのか?」
私は部屋の窓から、喧騒に包まれている街並みを見ながら呟く。
そろそろ旅立とうかという矢先の出来事であり、まさに出鼻をくじかれた、といった感じだった。
同じく窓から街並みを見下ろすアテナが、抑揚のない声で否定してきた。
「さすがにそれはないでしょう。白エルフ族も無能ではないのですから、警備も強化されているでしょうし。それに、世界樹が真っ赤に染まるなど、盗まれた以上の変異ではありませんか?」
「確かにな……じゃあ、何が起きているんだ? しかも、黒エルフ国が狙い撃ちされているような印象もあるんだが……」
幸いというべきか、それともこの王都がある中央までは根が届かなかったのか、壊滅的被害を受ける白エルフ領側の地帯とは対照的に、この王都はそれほどの被害は受けていなかったのだ。
とはいえ、この世界樹の襲撃とでもいえる事態を受けて、被害こそないものの、皆が皆平静で入られない様子。
住民がそわそわしているのは、いつこの王都も被害を受けるかわからないからだろう。
そして冒険者たちが忙しなく通りを駆けており、この様子だと冒険者ギルドも大忙しのことだろう。
「不謹慎な言い方かもしれませんが、拠点をここに移していて正解でしたね。どうやら、以前拠点にしていたジャミンは、かなり被害を受けているようです」
「そうか。あの街にまだいたら、私たちも巻き込まれていたところか……というかアテナ。お前、いつの間にそんな情報を?」
「クレア様が二度寝した間に、情報を仕入れておきました。出来るメイドは、動きが違うのですよ」
「なるほど」
「二度寝の誘惑にあっさり負けてしまうような心の弱い方を主に持つと、仕える者は通常の二倍、動かなくてはならないのです」
「……二度寝の誘惑は、甘美だからな」
「この際だから、はっきりと申しましょうか。クレア様は寝起きが悪すぎます」
「いいかアテナ。二度寝っていうのはな──」
「迷惑なだけです」
「──っ、い、いや。せめて話を最後まで──」
「め・い・わ・く・で・す」
「…………」
私の弁明を最後まで言わせることなくきっぱりと切り捨てるアテナに、私は顔をひきつらせるも……反論できなかった。
その後、宿屋に備え付けの食堂で遅めの朝食を摂っていると、その場に見覚えのある兵士たちが姿を現した。
あの、高慢ちきな兵士たちである。
彼らは店内を見回した後、私に気付くとズカズカとこちらへと。
そいつらを視認した私は、あからさまな嘆息を吐いた。
「なんだ? 以前の意趣返しにでもきたのか?」
「ニワトリは三歩歩くと忘れると聞きますが、どうやら貴方たちは、低能ながらもニワトリ以上の知能は有しておられたようですね」
無表情だけに、アテナの言葉には鋭さがあった。
兵士たちはこめかみをひくひくさせながらも、今回は怒りを表現しなかった。
「クレアナード”殿”。お付きのアテナ”殿”。陛下がお待ちになっておられるので、どうか王城にお越しください」
「……ほう?」
「学習したようですね。自分たちの立場というものを」
容赦なく追撃を叩き込むアテナに兵士たちの目が血走るものの、やはりそれ以上の反応はしてこない。
「……以前のご無礼をお詫びいたします。ですからどうか……どうか、王城にお越しください。我等が命を懸けてエスコート致します」
一斉にペコリと頭を下げてくる兵士たち。
あの後、デモナか上司かに、かなりきつい説教を受けたのだろう。
そんな彼らへとまだ何かを言おうとするアテナを、私は苦笑いで制止してから。
「わかった。状況が状況だ。私たちを呼ぶ理由にも、検討がつくしな」
「「「助かります……」」」
兵士たちはどこかほっとしたように、安堵の吐息を吐くのだった。
※ ※ ※
「来たか。待っていたぞ、クレアナード」
場所は、かつて訪れた貴賓室。
先に部屋で待っていた黒エルフ王ドーエンスは、どこか疲れたような態度で私を出迎えてきた。
彼と近衛騎士のデモナしかいないことから、公には出来ない話ということなのだろう。
「疲れているようだな?」
「ああ……かなり疲れている。世界樹からの強襲への対策で、頭を悩まされているからな」
「被害の程度は?」
「白エルフ国と隣接する一帯が壊滅的だな。だが、その一帯以降への世界樹による被害は確認されてはいない」
「ということは、世界樹の攻撃範囲には、限りがあるということだな」
「……幸か不幸か、そういうことになるだろう」
ふう……と深い息を吐いたドーエンスは、テーブルに置かれている飲み物を喉に流し込む。
ティーポットから紅茶を淹れてくれたアテナからそれを受け取り、デモナから羨ましがる視線を感じながら、私も一口だけ口に含んでから問うた。
「それで、いま何が起こっているんだ?」
「わからんとしか言えん。だが世界樹『ガイア』のあの変容から、只事じゃないことが起きているのは確かだろうな」
「白エルフ国には問い合わせたのか?」
「当然だろう。世界樹の管轄は奴らなのだからな」
「で、返答は?」
「こちらも困惑している、だそうだ」
「なんだそれは」
「俺も同感だ。ふざけるなと言いたいところだ。管理すらまともに出来ないのでは、世界樹の保有権利を我等黒エルフ族に渡してもらわねばならなくなってくる」
「ドーエンス。種族同士の利権争いは、どうでもいいんだが?」
「……すまん。国王という立場柄、どうしてもそういう考えになってしまう」
頭を冷やすように話を一旦止めたドーエンスは、再び飲み物を。
こんな緊迫した状況の中、やはりデモナはアテナに熱烈な視線を送っており、気づけばアテナはいつの間にか私の後ろに隠れ、デモナからの視姦から逃れていた。
「まさかとは思うんだが……『ガイア』が、報復しているんじゃないのか? ”核”の一部を食ったのは黒エルフだ。だからそれに怒りを感じ、同族を攻撃したんじゃ?」
「……だが、世界樹──あの魔物は、眠りについているんじゃなかったのか? ネミルさんがそう言っていた記憶があるんだが」
「その一件で、目覚めたのかもな」
こういう話をしていれば、あの目立ちたがり屋が現れるかと思ったが、まったく現れる気配がなかった。
(来てほしくない時には来て、来てほしい時には来ないんだよな)
彼女が来ればもっと詳しい話が聞けるかもしれないが……来ない以上、アテにしても仕方ないだろう。
「白エルフ国も被害を受けているようだが黒エルフ国はそれ以上ということから、やはり世界樹の狙いは、黒エルフ国への報復とみていいんじゃないのか?」
「…………」
私の指摘に対して、ドーエンスは一瞬だけ押し黙った。
そして一拍の間沈黙してから、重たそうな口を開く。
「十中八九、世界樹の一件に関与していた黒エルフは……母上の手の者だろう」
「……何かあったのか?」
「母上は……俺に対しては絶対に嘘は吐かないんだ」
テーブルで組んだ両手を額に当てながら、ドーエンスは深い溜め息を吐いた。
「だからあの時……俺の問いには明確に答えなかった。はぐらかしたんだ」
あの時? と思う私だったが、そのニュアンスから振れない方がいいだろうと判断する。
「そう思うのならば、なぜその時、問い詰めなかったんだ?」
「……俺の弱さ、だな」
「マザコンめ」
「……返す言葉もない」
ドーエンスは苦い笑み。
「だから……世界樹の報復は、ある意味では当然だと言えるだろうな」
「自業自得ということか」
「……だが。だからといって、王として、このまま何もしないわけにはいかん。そこでクレアナード、お前を呼んだ次第だ」
「どういうことだ?」
「白エルフ王と繋ぎをとってほしい。お前にならば出来るだろう?」
「……なにをするつもりだ?」
「王として。そして息子として……責任は取らねばならんということだ」
覚悟を決めている瞳で、私を真っすぐに見つめてくる。
「白エルフも、このまま何もしないわけではないだろう。だからこそ。何かするとしても、俺も手を貸そうと思っている」
「本気か? 黒と白の関係性は、私が言うまでもなく知っているだろう?」
「ああ。だからお前に頼むんだ。お前が仲介することで、白エルフ王と直接話が出来る機会が出来るだろうからな」
「……お勧めは出来ないな。黒と白の関係性から、その場で騒動が起きるのが目に見えている」
「それくらいわかっている。だから兵は連れて行かん。動くのは俺とデモナのみだ。俺たちだけならば、どうとでも理由付けができるんじゃないか?」
驚くべき提案だった。
だから私が驚きで目を見開いたとしても、仕方ないことだろう。
名前が出たデモナはすでに聞かされていたことなのか、これといった反応は見せず、アテナだけを執拗に見つめるのみ。
「気持ち悪いですね……」と小さく呟くアテナの声を耳にしつつ、私はドーエンスを見返した。
「なぜそこまで、王のお前が動くんだ?」
「……王の前に、俺は”あの人”の息子だからな。親の不始末は、子である俺が片をつける責任がある。民を巻き込むならば、なおさらだ」
「ドーエンス……」
「クレアナード。白エルフ王と話がついたとしても、白エルフ領では俺は孤立無援となることだろう。俺を、守ってはくれないか?」
「……いまの私は、貴方よりも弱いんだぞ?」
「戦闘力のことを言っているわけじゃない。精神面で、支えてほしい。俺とて、険悪な白エルフ領に行くのは気が重い上に……不安だからな。だが、行かなくてはならん」
どこまでも堅い決意を受けた私は、小さく息を吐く。
当然ながら、私にはそんなことをしてやる義理なんてない。
だが私は……真面目な者が嫌いではないのである。
だからつい、肩入れしたくなってしまう。
我ながら損な性格だなと思うのだが……これが”私”なのだから、仕方がない。
「そこまで覚悟しているのなら、協力しよう。ただし、安全の保障はできないぞ? この世に絶対なんて言葉はないんだからな」
「お前と生死を共にできるのならば、命の危険など容易いものだ。むしろ、命の危険を乗り越えてこそ、つり橋効果で愛が生まれるかもしれん」
「……おい。どっちが本音なんだ?」
「それはそうと」
ジト目になる私の視線を躱す様に立ち上がったドーエンスは、棚に置かれている煌びやかな宝飾箱を開けると、そこからひとつの装飾品を取り出した。
華美すぎず地味過ぎず、これといって特色のない腕輪。
その腕輪を、おもむろに私に差しだしてきた。
「クレアナード。これを受け取ってくれ」
「これは?」
「魔道具の一種だ。装備者の任意のタイミングで、物理攻撃を防ぐ盾を生み出すことができる代物だ」
一度盾を生み出すと、再び盾を生み出すにはしばらく時間がかかる、と付け足される。
「これをお前にやろう」
「いやいや。理由もなく、魔道具をもらうわけには……」
「白エルフ王と繋ぎを取り、なおかつ、白エルフ領にて俺を守る報酬の前払いだ」
「……必ず守れるとは限らないぞ?」
「俺は、お前を信じているからな」
「………今日ほど、信じているという言葉を重く感じたことはない」
受け取った腕輪を左腕に装着する。
重みはなく、しっとりと腕に馴染んでくる……さすがは魔道具といったところだろうか。
(ドラギアからの髪飾りと合わせると、戦闘中に一度だけは、物理と魔法、どちらも防げるということか)
弱体化したいまの私にとっては、かなり在り難い装備であった。
これらにより、私の生存率はぐんと上がることだろう。
「ドーエンス。もしかして、私が弱体化しているということを、気にかけてくれていたのか?」
「当たり前だろう? 妻の生存確率を上げたくなるのは、夫として当然のことだ」
「……まだ妻ではないがな」
「おっ? 『まだ』なんだな!? 期待していいんだなっ!!?」
「……言葉のあやだ」
純粋な喜びを見せてくるドーエンスを前に、私は苦々しい表情で答えるのみのだった。
※ ※ ※
「無事で何よりだ」
彼らの自宅にて兄妹エルフの無事な姿を前に、私は安堵の息を吐いていた。
ここまでくる道中、壊滅している黒エルフ領を見てきただけに、気が気じゃなかったのである。
「クレアナードさんも、巻き込まれていなくてよかったですよ」
「だねー。なんか白エルフ側はさ、この前の事件で隆起した根以外はないみたいだよ。たださ、その根から生まれてくる魔獣の数が、前よりも多いみたいだけど」
兄弟エルフたちは、思っていた以上に早い再会に純粋に嬉しそうにしながらそう答えてくる。
ちなみにアテナはというと、以前に料理関係のことで意気投合していたようで、母エルフがいるキッチンへと行っているために、そちらから楽し気な声が聞こえてきていたりする。
「そのせいでさ、父さんたちは滅茶苦茶忙しいみたい」
「警邏隊だったな……君たちは手伝わないのか?」
「街道を守るのも大事な仕事ですけど、村を守る者も必要ですから」
「なるほどな」
「ってかさクレアさん? なんか用事があるの? それとも遊びに来てくれただけ?」
不思議そうに小首を傾げてくるマリエムに、私は小さく頷いた。
「あまり時間もないしな。距離的に考えても、ここが一番いいと思ってな」
「距離?」
「ああ。これからここに、白と黒、両方の知人を呼びたいんだが、構わないだろうか?」
「黒エルフも……ですか」
「ビトレイ、そう警戒しないでくれ。性格は少しあれだが、根はいい奴なんだ──きっと」
「ちょ……クレアさんっ? いま、小さい声で『きっと』って……」
「まあ……クレアナードさんのことだから、そんな変な人じゃないとは思いますけど……」
やや胡乱げな様子ながらも、兄妹エルフは快く私の求めに応じてくれることに。
こうして、数日後──
私を仲介役として、白エルフ王ドラギアと黒エルフ王ドーエンスが、この場にて邂逅することになる。
お互いがお忍びということもあり、連れているのは近衛騎士であるレイとデモナのふたりのみだ。
「まったく、クレアナードや。お前さんに依頼したことが吉と出たのか凶と出たのか……どちらじゃろうな?」
「わざわざ、ご足労すまない。だが、緊急を要することだったんでな」
「通信機での『緊急で合わせたい奴がいる。だが秘密裏で頼む』とはこういうことじゃったか」
信用という言葉は、本当に大事だなと改めて思わされる。
通信機での会話のみにも拘わらず、こちらの要求通り、白エルフの王がこうしてお供ひとりで来てくれたのだから。
まあ、ふたりだけでの移動のために、移動時間は大幅に短縮できたようではあるが。
テーブルを挟んで対面に座るドーエンスへと眼差しを向けたドラギアが、小さく肩をすくめた。
「まさか、お前さんとこういう形で邂逅する日が来るとはのう、黒エルフの王よ」
「ああ。クレアナードが居てくれたおかげで、スムーズに会うことができたな、白エルフの王よ」
応じるドーエンスもが、軽く肩をすくめてみせる。
国を仲介役とすると、こんな簡単に険悪な仲である黒と白の、しかも王が会うことなどは、ありえなかったことだろう。
だが、種族を代表するそのふたりからは、相手に対する敵意などはまるで感じられず。
むしろ、旧友と再会した時の雰囲気に似ていたりする。
結局のところ、種族同士の争いなど周りが騒いでいるだけであって、直接これといって恨みがない王たちにとっては、その程度のことなのである。
私を仲介とする中、黒と白の王の秘密裏の会談が、こうして始まる──
※ ※ ※
※ ※ ※
「まだ生きていたとはな、大地に根を張りし古き同胞よ」
一部が欠損している”核”を前に、血に濡れた漆黒の細身の双剣をひっさげた黒の宣教師が、淡々と呟く。
その場にて調査を行っていた白エルフの面々は全員が血の海に沈んでおり、ピクリとも動かないことから、全員が命を落としていることが伺えた。
「長きに渡り沈黙していたようだからな、とっくに死に果ててただの樹木と化していると思っていたぞ。まさか、眠りについていただけだったとは」
小さく冷笑してから。
「で? なぜ”核”を喰われたにもかかわらず、お前は怒りを表現しない? 長き眠りのせいで、怒りを表現することさえ忘れてしまったのか?」
何も語らずにただただ台座で浮遊する”核”へと、黒の宣教師はゆっくりと近づいてく。
「それともあれか? ”核”を喰われてもなお、まだ夢見心地ということか? 以前のあれは、ただの寝返りだったと? それはそれで、なんとも豪胆とも言える。さすがは、古き同胞と称賛すらできるが」
ピタっと男が止まったのは、台座前。
「気持ちよく寝ているところ悪いが、お前にも協力してもらうぞ。なかなか”贄”が見つからんのだ。お前が騒動を起こすことで、新たな”贄”が生まれるかもしれんからな」
血塗られた双剣の片方をおもむろに床に突き刺し。
「起きるがいい。そして思い出せ。誰がお前の”核”を喰ったのか」
躊躇なく、”核”へと右手の指を突き刺していた──
黒エルフ国のいたるところから、無数の巨大な根が隆起したのである。
言うまでもなく被害は甚大であり、さらに悪いことに、その根からは定期的に魔獣が生み出され始める。
しかし被害は黒エルフ国に留まらず、すでに白エルフ国にて隆起していた根もが活動を再開したようで、こちらからも定期的に魔獣が生み出され始めてしまう。
まるで白エルフ国を襲った、世界樹の暴走を再現しているかのようだった。
だが、決定的に違うがひとつだけあった。
根の数である。
明らかに黒エルフ国のほうが多かったのだ。
そのために、生まれ出る魔獣の数も多く、被害は瞬く間に拡大していく。
そしてもうひとつ。
前回と違う点……それは、青々と茂っていた世界樹の葉が、血のように真っ赤に変色していたのである。
世界樹の巨大さゆえに遠目でもわかるために、まるで世界樹が憤怒しているかのようであり。
白と黒、どちらものエルフたちが戦慄する。
色に関係なく、エルフ国が激震する──
※ ※ ※
「まさか……また誰か世界樹の”核”を盗んだのか?」
私は部屋の窓から、喧騒に包まれている街並みを見ながら呟く。
そろそろ旅立とうかという矢先の出来事であり、まさに出鼻をくじかれた、といった感じだった。
同じく窓から街並みを見下ろすアテナが、抑揚のない声で否定してきた。
「さすがにそれはないでしょう。白エルフ族も無能ではないのですから、警備も強化されているでしょうし。それに、世界樹が真っ赤に染まるなど、盗まれた以上の変異ではありませんか?」
「確かにな……じゃあ、何が起きているんだ? しかも、黒エルフ国が狙い撃ちされているような印象もあるんだが……」
幸いというべきか、それともこの王都がある中央までは根が届かなかったのか、壊滅的被害を受ける白エルフ領側の地帯とは対照的に、この王都はそれほどの被害は受けていなかったのだ。
とはいえ、この世界樹の襲撃とでもいえる事態を受けて、被害こそないものの、皆が皆平静で入られない様子。
住民がそわそわしているのは、いつこの王都も被害を受けるかわからないからだろう。
そして冒険者たちが忙しなく通りを駆けており、この様子だと冒険者ギルドも大忙しのことだろう。
「不謹慎な言い方かもしれませんが、拠点をここに移していて正解でしたね。どうやら、以前拠点にしていたジャミンは、かなり被害を受けているようです」
「そうか。あの街にまだいたら、私たちも巻き込まれていたところか……というかアテナ。お前、いつの間にそんな情報を?」
「クレア様が二度寝した間に、情報を仕入れておきました。出来るメイドは、動きが違うのですよ」
「なるほど」
「二度寝の誘惑にあっさり負けてしまうような心の弱い方を主に持つと、仕える者は通常の二倍、動かなくてはならないのです」
「……二度寝の誘惑は、甘美だからな」
「この際だから、はっきりと申しましょうか。クレア様は寝起きが悪すぎます」
「いいかアテナ。二度寝っていうのはな──」
「迷惑なだけです」
「──っ、い、いや。せめて話を最後まで──」
「め・い・わ・く・で・す」
「…………」
私の弁明を最後まで言わせることなくきっぱりと切り捨てるアテナに、私は顔をひきつらせるも……反論できなかった。
その後、宿屋に備え付けの食堂で遅めの朝食を摂っていると、その場に見覚えのある兵士たちが姿を現した。
あの、高慢ちきな兵士たちである。
彼らは店内を見回した後、私に気付くとズカズカとこちらへと。
そいつらを視認した私は、あからさまな嘆息を吐いた。
「なんだ? 以前の意趣返しにでもきたのか?」
「ニワトリは三歩歩くと忘れると聞きますが、どうやら貴方たちは、低能ながらもニワトリ以上の知能は有しておられたようですね」
無表情だけに、アテナの言葉には鋭さがあった。
兵士たちはこめかみをひくひくさせながらも、今回は怒りを表現しなかった。
「クレアナード”殿”。お付きのアテナ”殿”。陛下がお待ちになっておられるので、どうか王城にお越しください」
「……ほう?」
「学習したようですね。自分たちの立場というものを」
容赦なく追撃を叩き込むアテナに兵士たちの目が血走るものの、やはりそれ以上の反応はしてこない。
「……以前のご無礼をお詫びいたします。ですからどうか……どうか、王城にお越しください。我等が命を懸けてエスコート致します」
一斉にペコリと頭を下げてくる兵士たち。
あの後、デモナか上司かに、かなりきつい説教を受けたのだろう。
そんな彼らへとまだ何かを言おうとするアテナを、私は苦笑いで制止してから。
「わかった。状況が状況だ。私たちを呼ぶ理由にも、検討がつくしな」
「「「助かります……」」」
兵士たちはどこかほっとしたように、安堵の吐息を吐くのだった。
※ ※ ※
「来たか。待っていたぞ、クレアナード」
場所は、かつて訪れた貴賓室。
先に部屋で待っていた黒エルフ王ドーエンスは、どこか疲れたような態度で私を出迎えてきた。
彼と近衛騎士のデモナしかいないことから、公には出来ない話ということなのだろう。
「疲れているようだな?」
「ああ……かなり疲れている。世界樹からの強襲への対策で、頭を悩まされているからな」
「被害の程度は?」
「白エルフ国と隣接する一帯が壊滅的だな。だが、その一帯以降への世界樹による被害は確認されてはいない」
「ということは、世界樹の攻撃範囲には、限りがあるということだな」
「……幸か不幸か、そういうことになるだろう」
ふう……と深い息を吐いたドーエンスは、テーブルに置かれている飲み物を喉に流し込む。
ティーポットから紅茶を淹れてくれたアテナからそれを受け取り、デモナから羨ましがる視線を感じながら、私も一口だけ口に含んでから問うた。
「それで、いま何が起こっているんだ?」
「わからんとしか言えん。だが世界樹『ガイア』のあの変容から、只事じゃないことが起きているのは確かだろうな」
「白エルフ国には問い合わせたのか?」
「当然だろう。世界樹の管轄は奴らなのだからな」
「で、返答は?」
「こちらも困惑している、だそうだ」
「なんだそれは」
「俺も同感だ。ふざけるなと言いたいところだ。管理すらまともに出来ないのでは、世界樹の保有権利を我等黒エルフ族に渡してもらわねばならなくなってくる」
「ドーエンス。種族同士の利権争いは、どうでもいいんだが?」
「……すまん。国王という立場柄、どうしてもそういう考えになってしまう」
頭を冷やすように話を一旦止めたドーエンスは、再び飲み物を。
こんな緊迫した状況の中、やはりデモナはアテナに熱烈な視線を送っており、気づけばアテナはいつの間にか私の後ろに隠れ、デモナからの視姦から逃れていた。
「まさかとは思うんだが……『ガイア』が、報復しているんじゃないのか? ”核”の一部を食ったのは黒エルフだ。だからそれに怒りを感じ、同族を攻撃したんじゃ?」
「……だが、世界樹──あの魔物は、眠りについているんじゃなかったのか? ネミルさんがそう言っていた記憶があるんだが」
「その一件で、目覚めたのかもな」
こういう話をしていれば、あの目立ちたがり屋が現れるかと思ったが、まったく現れる気配がなかった。
(来てほしくない時には来て、来てほしい時には来ないんだよな)
彼女が来ればもっと詳しい話が聞けるかもしれないが……来ない以上、アテにしても仕方ないだろう。
「白エルフ国も被害を受けているようだが黒エルフ国はそれ以上ということから、やはり世界樹の狙いは、黒エルフ国への報復とみていいんじゃないのか?」
「…………」
私の指摘に対して、ドーエンスは一瞬だけ押し黙った。
そして一拍の間沈黙してから、重たそうな口を開く。
「十中八九、世界樹の一件に関与していた黒エルフは……母上の手の者だろう」
「……何かあったのか?」
「母上は……俺に対しては絶対に嘘は吐かないんだ」
テーブルで組んだ両手を額に当てながら、ドーエンスは深い溜め息を吐いた。
「だからあの時……俺の問いには明確に答えなかった。はぐらかしたんだ」
あの時? と思う私だったが、そのニュアンスから振れない方がいいだろうと判断する。
「そう思うのならば、なぜその時、問い詰めなかったんだ?」
「……俺の弱さ、だな」
「マザコンめ」
「……返す言葉もない」
ドーエンスは苦い笑み。
「だから……世界樹の報復は、ある意味では当然だと言えるだろうな」
「自業自得ということか」
「……だが。だからといって、王として、このまま何もしないわけにはいかん。そこでクレアナード、お前を呼んだ次第だ」
「どういうことだ?」
「白エルフ王と繋ぎをとってほしい。お前にならば出来るだろう?」
「……なにをするつもりだ?」
「王として。そして息子として……責任は取らねばならんということだ」
覚悟を決めている瞳で、私を真っすぐに見つめてくる。
「白エルフも、このまま何もしないわけではないだろう。だからこそ。何かするとしても、俺も手を貸そうと思っている」
「本気か? 黒と白の関係性は、私が言うまでもなく知っているだろう?」
「ああ。だからお前に頼むんだ。お前が仲介することで、白エルフ王と直接話が出来る機会が出来るだろうからな」
「……お勧めは出来ないな。黒と白の関係性から、その場で騒動が起きるのが目に見えている」
「それくらいわかっている。だから兵は連れて行かん。動くのは俺とデモナのみだ。俺たちだけならば、どうとでも理由付けができるんじゃないか?」
驚くべき提案だった。
だから私が驚きで目を見開いたとしても、仕方ないことだろう。
名前が出たデモナはすでに聞かされていたことなのか、これといった反応は見せず、アテナだけを執拗に見つめるのみ。
「気持ち悪いですね……」と小さく呟くアテナの声を耳にしつつ、私はドーエンスを見返した。
「なぜそこまで、王のお前が動くんだ?」
「……王の前に、俺は”あの人”の息子だからな。親の不始末は、子である俺が片をつける責任がある。民を巻き込むならば、なおさらだ」
「ドーエンス……」
「クレアナード。白エルフ王と話がついたとしても、白エルフ領では俺は孤立無援となることだろう。俺を、守ってはくれないか?」
「……いまの私は、貴方よりも弱いんだぞ?」
「戦闘力のことを言っているわけじゃない。精神面で、支えてほしい。俺とて、険悪な白エルフ領に行くのは気が重い上に……不安だからな。だが、行かなくてはならん」
どこまでも堅い決意を受けた私は、小さく息を吐く。
当然ながら、私にはそんなことをしてやる義理なんてない。
だが私は……真面目な者が嫌いではないのである。
だからつい、肩入れしたくなってしまう。
我ながら損な性格だなと思うのだが……これが”私”なのだから、仕方がない。
「そこまで覚悟しているのなら、協力しよう。ただし、安全の保障はできないぞ? この世に絶対なんて言葉はないんだからな」
「お前と生死を共にできるのならば、命の危険など容易いものだ。むしろ、命の危険を乗り越えてこそ、つり橋効果で愛が生まれるかもしれん」
「……おい。どっちが本音なんだ?」
「それはそうと」
ジト目になる私の視線を躱す様に立ち上がったドーエンスは、棚に置かれている煌びやかな宝飾箱を開けると、そこからひとつの装飾品を取り出した。
華美すぎず地味過ぎず、これといって特色のない腕輪。
その腕輪を、おもむろに私に差しだしてきた。
「クレアナード。これを受け取ってくれ」
「これは?」
「魔道具の一種だ。装備者の任意のタイミングで、物理攻撃を防ぐ盾を生み出すことができる代物だ」
一度盾を生み出すと、再び盾を生み出すにはしばらく時間がかかる、と付け足される。
「これをお前にやろう」
「いやいや。理由もなく、魔道具をもらうわけには……」
「白エルフ王と繋ぎを取り、なおかつ、白エルフ領にて俺を守る報酬の前払いだ」
「……必ず守れるとは限らないぞ?」
「俺は、お前を信じているからな」
「………今日ほど、信じているという言葉を重く感じたことはない」
受け取った腕輪を左腕に装着する。
重みはなく、しっとりと腕に馴染んでくる……さすがは魔道具といったところだろうか。
(ドラギアからの髪飾りと合わせると、戦闘中に一度だけは、物理と魔法、どちらも防げるということか)
弱体化したいまの私にとっては、かなり在り難い装備であった。
これらにより、私の生存率はぐんと上がることだろう。
「ドーエンス。もしかして、私が弱体化しているということを、気にかけてくれていたのか?」
「当たり前だろう? 妻の生存確率を上げたくなるのは、夫として当然のことだ」
「……まだ妻ではないがな」
「おっ? 『まだ』なんだな!? 期待していいんだなっ!!?」
「……言葉のあやだ」
純粋な喜びを見せてくるドーエンスを前に、私は苦々しい表情で答えるのみのだった。
※ ※ ※
「無事で何よりだ」
彼らの自宅にて兄妹エルフの無事な姿を前に、私は安堵の息を吐いていた。
ここまでくる道中、壊滅している黒エルフ領を見てきただけに、気が気じゃなかったのである。
「クレアナードさんも、巻き込まれていなくてよかったですよ」
「だねー。なんか白エルフ側はさ、この前の事件で隆起した根以外はないみたいだよ。たださ、その根から生まれてくる魔獣の数が、前よりも多いみたいだけど」
兄弟エルフたちは、思っていた以上に早い再会に純粋に嬉しそうにしながらそう答えてくる。
ちなみにアテナはというと、以前に料理関係のことで意気投合していたようで、母エルフがいるキッチンへと行っているために、そちらから楽し気な声が聞こえてきていたりする。
「そのせいでさ、父さんたちは滅茶苦茶忙しいみたい」
「警邏隊だったな……君たちは手伝わないのか?」
「街道を守るのも大事な仕事ですけど、村を守る者も必要ですから」
「なるほどな」
「ってかさクレアさん? なんか用事があるの? それとも遊びに来てくれただけ?」
不思議そうに小首を傾げてくるマリエムに、私は小さく頷いた。
「あまり時間もないしな。距離的に考えても、ここが一番いいと思ってな」
「距離?」
「ああ。これからここに、白と黒、両方の知人を呼びたいんだが、構わないだろうか?」
「黒エルフも……ですか」
「ビトレイ、そう警戒しないでくれ。性格は少しあれだが、根はいい奴なんだ──きっと」
「ちょ……クレアさんっ? いま、小さい声で『きっと』って……」
「まあ……クレアナードさんのことだから、そんな変な人じゃないとは思いますけど……」
やや胡乱げな様子ながらも、兄妹エルフは快く私の求めに応じてくれることに。
こうして、数日後──
私を仲介役として、白エルフ王ドラギアと黒エルフ王ドーエンスが、この場にて邂逅することになる。
お互いがお忍びということもあり、連れているのは近衛騎士であるレイとデモナのふたりのみだ。
「まったく、クレアナードや。お前さんに依頼したことが吉と出たのか凶と出たのか……どちらじゃろうな?」
「わざわざ、ご足労すまない。だが、緊急を要することだったんでな」
「通信機での『緊急で合わせたい奴がいる。だが秘密裏で頼む』とはこういうことじゃったか」
信用という言葉は、本当に大事だなと改めて思わされる。
通信機での会話のみにも拘わらず、こちらの要求通り、白エルフの王がこうしてお供ひとりで来てくれたのだから。
まあ、ふたりだけでの移動のために、移動時間は大幅に短縮できたようではあるが。
テーブルを挟んで対面に座るドーエンスへと眼差しを向けたドラギアが、小さく肩をすくめた。
「まさか、お前さんとこういう形で邂逅する日が来るとはのう、黒エルフの王よ」
「ああ。クレアナードが居てくれたおかげで、スムーズに会うことができたな、白エルフの王よ」
応じるドーエンスもが、軽く肩をすくめてみせる。
国を仲介役とすると、こんな簡単に険悪な仲である黒と白の、しかも王が会うことなどは、ありえなかったことだろう。
だが、種族を代表するそのふたりからは、相手に対する敵意などはまるで感じられず。
むしろ、旧友と再会した時の雰囲気に似ていたりする。
結局のところ、種族同士の争いなど周りが騒いでいるだけであって、直接これといって恨みがない王たちにとっては、その程度のことなのである。
私を仲介とする中、黒と白の王の秘密裏の会談が、こうして始まる──
※ ※ ※
※ ※ ※
「まだ生きていたとはな、大地に根を張りし古き同胞よ」
一部が欠損している”核”を前に、血に濡れた漆黒の細身の双剣をひっさげた黒の宣教師が、淡々と呟く。
その場にて調査を行っていた白エルフの面々は全員が血の海に沈んでおり、ピクリとも動かないことから、全員が命を落としていることが伺えた。
「長きに渡り沈黙していたようだからな、とっくに死に果ててただの樹木と化していると思っていたぞ。まさか、眠りについていただけだったとは」
小さく冷笑してから。
「で? なぜ”核”を喰われたにもかかわらず、お前は怒りを表現しない? 長き眠りのせいで、怒りを表現することさえ忘れてしまったのか?」
何も語らずにただただ台座で浮遊する”核”へと、黒の宣教師はゆっくりと近づいてく。
「それともあれか? ”核”を喰われてもなお、まだ夢見心地ということか? 以前のあれは、ただの寝返りだったと? それはそれで、なんとも豪胆とも言える。さすがは、古き同胞と称賛すらできるが」
ピタっと男が止まったのは、台座前。
「気持ちよく寝ているところ悪いが、お前にも協力してもらうぞ。なかなか”贄”が見つからんのだ。お前が騒動を起こすことで、新たな”贄”が生まれるかもしれんからな」
血塗られた双剣の片方をおもむろに床に突き刺し。
「起きるがいい。そして思い出せ。誰がお前の”核”を喰ったのか」
躊躇なく、”核”へと右手の指を突き刺していた──
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