The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る!

Bastion

文字の大きさ
上 下
38 / 42
一章「GAME START」

15話「首謀者の策略」

しおりを挟む
「さて、まるでチェスの盤面だな」


 整った男の声、薄暗い部屋の中。一人の青年が年季の入った椅子に座っている。
 椅子の前には、数人で囲える程の大きさのテーブルが設置されており、その上にはボードゲームであるの版と駒が設置されていた。

 フードを被り、体を覆い隠す漆黒のロングコートを纏う男は、ビショップの駒を動かしてナイトの駒を倒す。
 それはまた一つ、敵の戦力が削がれた事を意味していた。
 僧正を表すビショップは馬の頭の形をし、騎士を表すナイトを撃破する。
 それはまさに、また一人誰かが死んでいくと言う事と同じ様であった。

 何をやっているかは簡単だ…。


(ふっ……こう言う事ってカッコイイよね!)


 薄暗い部屋で、余裕を見せびらかし、それっぽくチェスの駒を動かしている。
 しかもニヤッと笑いながら、こんなにお洒落でカッコイイ演出が他にあるだろうか。

 洋画等で敵のボスが、余裕をかましてチェスの駒を一人で動かしているシーンを彼は見た事があった。
 やってみたかった事ではあるし、チェスも元々好きであった為、好都合な話だ。


「さて、次はどんな風になるか…」


「面白くなりそうよね…誰が生き抜いて、誰が呆気なく死ぬのか…」


「MasterMind、これからどうする?」


 後ろから現れ、声をかけたWitchの言葉に椅子に座っていたMasterMindは彼女の方を向き、一度頷く。


「一度全ての状況と分かっている事を確認する、二人共座ってくれ」


 今から行う事は、現在判明しているこの世界についての事と今後の活動方針についてだ。
 分かっている事を一旦整理し、今後の為に確認し合う事は大切だ。
 と言うか、それぐらいやらないとしていると思われそうで何か嫌だ。

 椅子に座る様に指示を出したMasterMindに、二人は素直に従い、すぐに用意されていた二つの椅子に座り込んだ。
 そして二人が椅子に座り込んだ事を確認すると、MasterMindは右手を前に出して無属性魔法を応用して使用が出来る「投影地図」通称「ホログラムマップ」を展開した。
 投影地図と言うのは、言わば3Dの立体ホログラムと言うものだ。

 簡単に言えば、実体は無いが映したい物を無属性魔法によって投影と言う事だ。
 あまり難しい話はしたくないので、本題に戻ろう。


「現在、我の力で調べられる所まで調べておいた…」


「え、全知能力で全て知れるのでは…?」


 完璧で誰であっても勝る事の出来ない、最強の存在であるMasterMindは全知の力を持っている。どの様な謎も、全てを知るそのがあれば知る事が出来る。
 しかし、今は状況が別だ。これが前と同じ世界だと言うのなら、今すぐにでも全てを知り尽くしてやりたい。

 だが、今はそうもいかなかった。


「出来るならしてるよ……だが、この場所は分からない事が多過ぎる。魔力そのものも、自分と二人以外の反応はあまり感じられない。それに外の状況もロクに知れないんじゃ、自分から探って敵の罠に嵌る可能性もある」


「となると、今仕入れている情報は多くは無い……って事かしら?」


 Castorは顎に手を当てながら、やや疑問形な言葉で言う。
 そんなCastorに対して、MasterMindはホログラムマップを指差した。


「今分かる事を説明しよう。それはこのマップだ…」


「これは…」


「五つの国、いや地帯と呼ぶべきか。一応、今後の戦場になる可能性が普通にあるから、仮称を付けておいた」


 仮称を付けたと話して、一度MasterMindは咳き込む。


「まずは『森林地帯』一応覗いてはみたけど、ただの森だった。闇討ちや奇襲には打って付けと言った所だね。この地帯だと、敵は闇討ちや奇襲で狙ってくるはずだ、用心しろ…」


「言われなくとも、て言うか気配探知でそれぐらい出来るって」


「二つ目に『ゴーストネオンシティ』やけに近代的な高層ビルや建物の廃墟が広がってる場所だ…苔が生えて錆び付いてるし、霧が掛かってる時もある。それに人気が無いのに人工物、不気味だ…仮に戦闘になったら敵との心理戦になりそうだよ…」


「へぇ、少し気になる…」


「三つ目に『変にデカい城と城下町』だ。ここに関してはまだ情報が上がってないから、何とも言えないな…」


 まだ、何も情報が上がっていない為にこの場所の事については分からない。
 分かる事は外観から分かる目を見張る程に大きく目立つ、中世と和風を混ぜた様な独特なデザインの城とその下に広がる城下町。これから監視する必要が多いに必要な場所だ。


(あのハッカーを利用するか…)


「へぇ、観光してみたいわ…」


「そして四つ目に、何も無いだだっ広いだ。見ての通り、遮蔽も何も無い平地だ。狙撃に気を付けろよ?一応洞穴はあるみたいだが…」


 何も変哲の無い様な荒れた土地。言わば荒野だ。
 これと言って何かを語る様な建物や建造物は無い。しかし、ミリタリー映画で見た戦場を彷彿とさせる様な場所だ。
 これで有刺鉄線や塹壕とかバリケードがあったら、尚更戦場感が出るのだが、そこまでお約束通りには出来ていない様だった。


「最後に五つ目、謎に上手く出来てる要塞。しかも近未来風。恐らく、謎と重要ながある場所だ。最重要警戒施設として見ておく事にするよ」


 最後に細かく映し出されたのは、外観は鋼鉄か金属素材で作られた外壁、そして周囲を見張る様にして転倒しているライトの軍勢。
 外観から内部の方を確認する事は間違いなく不可能であった。

 何者かが築き上げた要塞、またはそれに準ずる何か、もしくは単なるハリボテかもしれない。
 しかしこう言う建物は強く興味をそそられるし、是非立ち入ってみたい場所でもある。
 完全に個人の話になってしまうが、乗っ取って自分の基地にしたいぐらい美しい場所だ。
 最重要警戒と言って、監視しておく事としよう。


「さて、これが今分かる事の内の一つ。所謂、マップについてだ。次にこのよく分からない戦いの参加者についてだ」


「そう言えば…」


「我々以外にも参加者がいると言っていましたね…」


 このよく分からないデスゲームの様な何か。参加しているのは自分達三人だけではないのは分かっていた。
 しかし今、話している事はその参加者の情報についてだ。分かっている事は、謎の人物が口頭で話していた適当な情報のみ。

 流石に、あの適当な情報群から他の参加者の事を詳しく調べるのは不可能だ。
 だが、敵の情報は判明していなくとも、味方陣営の後二人の事についてはある程度情報を仕入れている。


「だが、情報が適当な事しか存在以上…特定は難しい。一応判明しているのは、一応同じチームの二人「サイファー」と「クジョウ・シズル」と言う人物についてだ」


 MasterMindは、秘密裏に残る二人のメンバーであるサイファーとシズルの存在を突き止めていた。
 別行動を取っているとは言っても、一応同じチームの人間なのだ。

 MasterMindは仮にも同じチームの人間だと思っているのだが、CastorやWitchは彼程、寛容な態度は持っていなかった。


「あんな臆病な人間と獣人に、何の価値が…」


「MasterMind、殺しちゃおうよ…」


 ――――殺す?

 勿体ない、とMasterMindは心の中で一言呟く。
 確かに、力や魔力の量等も考えるとあの二人は明らかに自分達に比べて劣っている。
 下等な存在、言ってしまえば雑魚だ。

 しかし、両者共にまだ使い道はある。特にあのサイファーと言うハッカーはこの先も重宝出来る様な存在だ。
 何故、自分達と同じ部屋に転送されてこなかったかは知らないが、接触して同盟を結べば、間違いなく利用出来る人材となる。

 他にも、獣人の巫女や人間嫌いな魔族等と使えるカードは多く用意されている。
 どの人物も利用価値は多いに有り得る。使用しない手は存在しない。


「少し待っておけ、僕も僕で動くから。少し休んでて…」


 そう言い残し、MasterMindは席を立つ。


「何処に行くんだ?」


「少し…」

 策略は山の様に練ってある。全てはおのが目的を叶える為に。
 全てにおいて絶対、何があろうと止まる事のない最強の存在へと……。

 まぁ、そんな事は建前だ。本当の目的は……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

処理中です...