The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る!

Bastion

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一章「GAME START」

6話「ルール」

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「ルール……だと?」


「意味が分からない。と言うか何だそれは、早く僕達を解放しろ」


 ルールなんて聞くつもりは悪いが一切ない。個人の願いを聞き入れてくれると言うのなら、椿と一緒に元のあの戦場に戻して欲しいものだ。

 人の個人的な都合なんかに巻き込まれるのは、もう勘弁だ。


「悪いが、解放されたければ今から言う話をよく聞く事だ。まさか、君達の様な人が話も聞かずに殺し合うなんて考えられないしね」


 雑音、エコー、加工が施された謎の声に対して、レイヤと椿は表情を歪める。
 明らかに姿を見せない、謎の存在に対して怒りを見せる様な表情だ。


「何だと?」


「なら、早く説明しろ」


 すると、どこかに設置されたスピーカー越しに謎の声は気味の悪い笑いを見せる。
 そして、気味の悪い笑い声を上げた後に謎の声は詳細を語り始めた。


「ようこそ!この素晴らしく最高で陰惨で惨めな世界へ!君達は選ばれし存在…………それじゃあ言わせてもらうよ、生き残りたければ…殺し合え……」


 謎の声は、こんな事を言えば彼らが怯むとでも思っていたのだろうか。
 それなりに、相手を怯えさせる様な不気味な口調で言った様だが…。

 傭兵、私兵、侍、ロボット、と異色揃いのメンツであった彼らは全く動じる事はなかった。
 謎の声を聞いて、怯える者も動じる者もましてや恐怖に支配されて動けなくなる者等この場にはいなかった。


 無論、彼ら五人以外も同様だ。


「……まぁいい。それじゃあ詳細だ…」


「ん?」


 すると、突如として何の前触れもなく彼らの目の前には会議やプレゼン等で使用される大きめのモニターが現れたのだ。

 この部屋にすぐ転送された時は、こんなモニターは置いてなかった気がするのだが、まさか幻覚の類でもかけられているのだろうか。

 そして、部屋の中に突如として現れたモニターは画面が真っ暗のままであったがすぐに、真っ黒だったモニターは、静かに音を立てて起動する。


「はいは~い、それじゃあ部屋にあるモニターを見てね!」


 仕方ない、と感じて部屋にいる五人全員は部屋に突如として設置されたモニターを一斉に見つめる。

 謎の声の通り、真っ黒だったモニターには何か映し出されていた。


「君達はこれから、デスゲーム。言わば殺し合いを行ってもらう……ルールとは言っても簡単な話だ。この部屋からさっき君達が必死こいて走り回っていた全部で五つの「フィールド」に転送されて、他のチームのメンバーの奴らと戦ったり、我々の作ったモンスターやロボット達と戦ってもらうだけだ!何も無い時はこの部屋でゆっくりしてて大丈夫だからね!」


「意味が分からん。何故、我々が名も知らぬ奴と殺し合わなければいけないのだ?」


 ヴィランが、謎の声に対して疑問の声を上げる。
 しかし、謎の声ははぐらかすかの様なまともな回答はしてくれなかった。


「はいはい、理由なんてどうでもいい!それじゃ、敵のメンバーを紹介するね!」


 すると、真っ暗だったモニターが突然として起動すると同時に真っ黒だったモニターの色が切り替わり、何かが映し出される。


「証明写真かよ…」


 そこに映し出されているのは、画面を埋め尽くす程の、名も知らぬ人物の正面からを映した写真であった。
 いつ、何処で撮られた写真なのかは分からないが、合成やスケッチで描かれた物ではない事は確かだ。


「なぁ、椿。僕達写真なんて撮ったっけ?」


「あぁ、何か辺なカード持って撮らなかったっけ?」


 あまり良い思い出ではないが、確かに変なカードを持たされた状態で撮られた覚えはある。
 しかし、あの時の写真とは明らかに表情が違う気がする。

 あの時は、確か撮ってきた奴に対して思いっきり中指立ててやったからね。しかも思いっきり睨み付けながら。

 そう考えると、このモニターに映っている写真は明らかにその時に撮られた様な写真ではない。
 表情もこれと言って、違和感がなく普通の表情だ。

 しかし、写真の写り方よりも彼らには気になる事があった。
 それはだ。
 無論、モニターに映るのはこの部屋に招かれた五人だけの写真では無い。

 他にも見た事のない人物の写真が15枚程、モニターに映し出されている。
 誰も見覚えがない。この部屋にいる者以外全員、完全に見た事のない完全な赤の他人だ。


「さぁ、個性豊かな皆さんのご紹介!」


「やれやれ、気まぐれな奴だ…」


 ◇◇


「まず最初に『TEAM Wolf』黒髪量産型主人公のレイヤ!」


「誰が量産型じゃ!?」


「銀髪ケモ耳尻尾獣人等々要素てんこ盛り、椿!」


「好きで生やした訳じゃねぇんだけど……(まぁ、いつもレイヤは気持ち良さそうにモフってるしいいか)」


「ガスマスク&ヘルメット兵、ヴィラン!」


「……」


「剣士と言ってるけど、実は娼婦の方が向いている?神無月紗夜!」


「な、誉ある武士に向かって!」


「分解待ち型落ち部品詰め合わせガンボットスクラップ、Σ!」


(悲しげなビープ音)


 分解待ち型落ち部品詰め合わせガンボットスクラップって、中々ロボットに対して辛辣な主催者だな。
 何か、心做しかΣも悲しそうだし。


「続きまして『TEAM JOKER』記念すべき最初のメンバーは、やけにダサい名前が特徴のゲイ青年、ゼノ・ケイオス!」


「口だけは回るみたいだな…」


「そんなゼノ君の可愛い彼氏君、マリス・ヴァンパッテン!」


「好きに言えばいいですよ、彼氏に変わりはないからね…」


「可愛い年下が好み?流浪の一匹狼の賞金稼ぎ!エルヴァ・グレイザー!」


「何でバレた?」


「セクシーで扇情的で戦って消える、ハイレグ姉ちゃん!シュバルゼ!」


「貴方、本当に首を折るわよ」


「綺麗なお姉さんにギュッてされたい、ちょっと生意気強がりショタ!シン・ティルモディア!」


「そう言う事は言わないで!」


「はいはい、バカは放っておいて……」


 ◇◇


 スピーカー越しとは言っても、殆ど直でバカと思いっきり煽られてしまったシン。
 あまりに、ド直球且つストレートな暴言にシンは少しばかり心が傷付いた。


「そんな、酷い…」


「よしよし…」


 そんなシンを見かねたのか、シュバルゼは心が傷付いたシンの頭を軽く数回撫でた。
 サラサラな頭を触らて、少しばかりシュバルゼは嬉しかったらしい。


 ◇◇


「さてさて、お次は危険人物揃いの強敵チーム『TEAM Cyber』の紹介だ!まずは、人じゃなくてロボット、人間嫌いのクールなロボット、HDs-B1-06こと、ハデス!」


「I don't understand what a lowlife thinks.(低能な人間の考える事など理解出来ない)」


「これまで何人を屍に変えたのか!?謎多き仮面を被りし悪魔、Defender!」


「紹介など不要だ…」


「その美しき姿は全てを魅了し、魅了した者を闇へと屠る!凄腕敏腕スナイパー、Killer!」


「そうやって盛られるのは好きじゃないわ…」


「更に更に!ハデスに続いて人間嫌い。同胞を殺した人間に復讐を誓う青年、ヴィラス・ハウンデロッド!」


「何を言うかと思えば…」


「続きまして!そんなヴィラス君の可愛い彼女。彼と一緒に人間皆殺し計画に加担している復讐者、ペアスティーネ・アングネスド!」


「人間の分際で……」


 この『TEAM Cyber』のメンバー。全員、何かしらの問題を抱えていた。
 恐らく、この四チームの中で一番危険分子が詰まっているチームだろう。

 声の主にとっては大いに好都合かもしれないが、彼らと戦う敵のチームにとっては恐怖の象徴であり、邪悪の塊であるかもしれない。


 ◇◇


「それでは、では最後のチームとなる『TEAM Irregular』の紹介!まず最初にご紹介するのは、掌握者にして救世主。二つの顔を持つ矛盾した英雄、Master Mind!」


「矛盾した英雄ねぇ………最高かよ」


「そんな掌握者であるMaster Mindに付き従い、彼と共に目的を果たす色気たっぷりの超綺麗お姉さん、Castor!」


「その色気も、彼にしか振りまかないんだけど…」


「Master Mindに心酔し、双子の姉のCastorと一緒にMaster Mindを支える、通称合法ロリことWitch!」


「誰が合法ロリよ、この変態!」


「続いて続いて……って、三人だけ?」


 エコーとノイズが掛かった声の主はそう、疑問気に呟いた。
 部屋に響くエコーとノイズが掛かった声に対して、部屋に三人しかいないMaster Mind達は周囲を見渡す。


「三人…だけね」


「説明だと、他の所は五人みたいだからね。まさか、ボク達だけ三人でやれって事?」


 Master Mindが他のチームとの人数差に対して、不満そうに呟くとMaster Mindの声に反応するかの様にして、謎の声も再び言葉をスピーカー越しで発した。


「おかしいなぁ、確かに後二人いたんだけど…」


「まぁ、いいんじゃない?正直、私達三人でも出来ない事はないし…」


「だって、こっちには天下無双のMaster Mindがおられるんですから!ね、Master Mind!」


 Witchは三人しかおらず、他の所よりも二人人数が少ない事について何も不満を漏らす様な事はしなかった。
 逆に、嬉しげな口調でMaster Mindの力を褒め讃え、彼を強く評価する様な事を言った。

 Master Mindも満更でもなかった様で、彼もWitchの言葉に軽く首を動かして、頷きを見せた。


「まぁ、それもそうだな…」


 Master Mindは自分自身の力を信じて疑いはしなかった。
 確かに、二人程人数が足りないのは他のチームと殺し合う時に不利になるかもしれない。

 しかし、自分の力があれば他のチームの奴を殺す事など児戯にも等しい行為だ。
 誰であっても敵わない、好敵手等、何処にも存在しない程にだ。

 今は三人で妥協しておく事としよう。あまり妥協して、己が望んだものと別の様な事になってしまう事は出来る限りは避けたいが、今は状況が状況だ。
 ここは、素直に飲み込んでおいた方が安全だろう。


 ◇◇


 その時『TEAM Irregular』の四人目と五人目の、本当のメンバーであるサイファーとシズルは、本来ならMaster Mind達と共にに転送されるはずなのだが、二人は何故かあの部屋には転送されなかったのだ。

 二人は、あの部屋とは別の場所。

 その場所ではサイバー風のネオンが時折生き返るかの様にして、バチバチと点滅している。
 人気を一切感じさせない林立したビル地帯、電子広告が画面にノイズを発生させながら流され、闇に包まれつつある街中には乗り捨てられた車や倒れた電柱が無造作に転がっている。

 そんな、人気を一切感じさせない様なゴーストタウン。
 その中のビルの一角に二人は身を潜めていた。


「あ、あのサイファーさん。ここは…?」


 全くもって、見慣れない場所。シズルの目から見たこの林立したビル地帯には好奇心と多少の恐怖が混ざっている。


「少なくとも、あの場所で見張られるよりはフィールド内で息を潜める方がマシだ…」


「あの場所……?」


 サイファーが突如として発した、言葉である
 シズルからすれば、何の事なのかさっぱり分からないが、取り敢えずシズルはサイファーの言う、あの場所について聞く事にした。


「奴らは、何も無い時は俺達を隔離して見張るつもりなんだ。だから、そうしない為に妨害電波で位置情報を乱しておいた。これで奴らから監視される事はない」


「……ん?」


 完全に何を言っているのか、シズルは理解出来ていなかった。
 見張る?妨害電波?位置情報を乱した?全てにおいて何を言っているのか全くもって分からない。

 あまり、そう言った方向の話には着いて行ける知識はシズルは持っていなかった為に、彼女は適当に話を合わせる事ぐらいしか出来なかった。


「ま、まぁ。ここにいれば敵からはバレないって……事ですよね?」


「…まぁそうだな。取り敢えず今は休め…ほら」

 そうやって、サイファーはぶっきらぼうに言う。
 そしてサイファーは、シズルに多少汚れていながらも体全身をくるむ事が出来る程の布団を彼女に手渡した。


「あ、ありがとうございます…」


「少し、汚れてるが…勘弁してくれ」


「いえ、構いません……所で、ベット一つしかありませんけど…?」


 サイファーの身が一瞬だけ震える。
 そうだった、この部屋……。

 ベット一つしか無いんだった…。
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