The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る！

バックストーリー集

バックストーリー No.17「Castor」

　NO.17 並行世界線0094

　追放されし者、世界は違うとは言ってもこの世界線でも彼女は、再び誰かと敵対していた。

　残念な事に、やはり何処の世界であっても偏見及び差別は存在しているのが事実だ。
　魔術師としての力を持ちながら…。

　そして人間の男と魔族の女の間に生まれた禁断の種族。
　それが彼女、ハーフデーモンとも言うべき存在である者その名は「ヴェイザー」と言う名前の存在であった。

　◇◇

　不幸にも、彼女の生い立ちは不幸そのモノだった。
　別に何か悪い事をした訳でもない、別に業を背負う様な大きな罪を犯した訳でもない。

　しかし、呪われた様な血筋。魔族と人間両方の血を…。
　混血の彼女は、人間からも魔族からも差別される事となった。

　魔族に助けを求めれば、人間の片割れだと蔑まれ、逆に人間に助けを求めれば魔族の手先だと蔑まれる。

　両親は、物心着いた時にはもう人間と魔族の両者の手によって葬られていた。
　魔族であった母は裁きと称して人間に、人間であった父は軽蔑と称して魔族によって命を奪われる事となったのだ。

　唯一、その手元に残されたのは双子の妹だけ。

　幼い時から、彼女は片時も離れる事なく、ずっと自分に似て美しい妹と一緒であった。

 
　◇◇


　しかし、世界と言うのはどの世界線であっても残酷な事この上ない。
　魔族特有の二本の角は、彼女達の最大の障害となっていた。

　これをもし人間に見られてしまえば、即刻捕らえられて首を刎ねられてしまう。
　死への恐怖から、二人は常に黒い布を被り、周囲に人間に怯えながら生きていた。


　だが、ある時を境にしてその生活はまるで嘘の様にして変わってしまった。

　彼だ、二人は彼と出会った。

　全てを掌握するべき。最強で、誰にも劣らない全てにおいて優位に立つ事が出来る力を持つ者と二人は出会った。


　彼は、飄々とした雰囲気を崩さなかったが、ヴェイザーはすぐさま彼の黒い所に気が付けた。

　優しげな笑顔で語り掛けるその言葉の裏には、どんな悪意すら跪いてしまうかの様な程の恐ろしい悪意が…。

　全てを率いる事の出来る様な悪魔の様な何かが彼の中には潜んでいた。
　最初こそ、糧にされるのではないかと二人揃って恐れたが、彼はそんな事をしなかった。


　逆に、彼は自分達に手を差し伸べた。


　力あるべき者が、その力を振るわずに隠し通して何になる…と彼は言った。

　その時、ヴェイザー達の心の中に秘められていた力の様な何かが覚醒?目覚めた様な気がした。

　ヴェイザーはニヤリと笑う。彼の配下となり、共に彼の計画を進めれば、奴らに自分達を貶め、迫害した奴らを人間を魔族を全て破壊出来ると…。

　そして何より、相手は年下の可愛い男の子だ。尚更やる気が出てくる。


　彼女は、躊躇わなかった。彼の話に嘘は無いと信じて、彼女らは彼の手を握った。


　無論、彼女らの忠誠心は決して揺らぐ事はない。
　ヴェイザーに至っては、可愛い年下の彼氏が出来たかの様にして妖艶さを漂わせながら振舞っている。

　彼女らの忠誠は地獄に落ちようと切れる事はない、勿論この霧の中であってもだ…。


―――我が至高の目的の為、全身全霊でご協力する…。