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バックストーリー集

バックストーリー No.16「MasterMind」

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 NO.16 並行世界線 0094

 地位、名誉、富、大義、名分、正義、慈愛、喜び、優しさ、神、勇者……。

 世の中において人を幸せにし、誰かから敬愛される事は山の様に存在する。
 しかし、他者から喜ばれ、尊敬される事に彼は必要性を感じてはいなかった。


 ◇◇


 彼が求める頂にある存在。

 それは最強で、全てを裏から手引きし操る力を持つ事だった。

 まるで、ダークヒーロー、ヴィランの様な影の様な力を持つ。
 さながら中二病の如く、傍から見れば色々な意味でイタい存在かもしれない。

 だが、いつの頃からは知らないが彼は……。

 僕はそんな存在、物心着いた時にはそう言ったダークな存在に憧れていた。
 憧れ、是が非でもその先に上り詰めようとした。


 勿論、自らが求める姿は魔王を討伐する為に正義の為に活躍する勇者ではなく、誰かの為に戦うと言った自己犠牲精神のヒーローでもなかった。


 ◇◇


 ほらあれだ、あれだよあれ。

 ―――影の騎士的な何か、物語が進む中で裏から暗躍するああ言う人、あんな感じなアレになりたんだよ僕は…。

 しかしながら、ここまでそれなりに長ったるしい話を語ったのは良い話だがこんなの所詮は小さな子供の夢の様な存在に過ぎないかもしれない。

 一時の、すぐに冷めてしまうかの様な小さな夢かもしれない。

 しかし、何れ黒幕すらも凌駕する彼の力は孤高を貫き通し、己の意思を曲げる事はなかった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 だが自分の意思を曲げず、孤高を貫き通したとしても『現実』と言う壁に打ち勝つ事は出来ない。
 だって考えてみろ、現実と言う壁は恐ろしいぐらいに高い。

 努力しても叶わないものは頑張っても叶わないし、出来ない事は出来ない。

 この百年ぽっちのチンケな人生の中で18と言う年になるまで、彼は数多の努力を積んできた。

 戦闘において必ず勝つ為の技術、作戦や戦術における知識、その他役に立ちそうな事は全て脳内に叩き込んだ。

 まるで血の滲む様な程の努力。誰からの理解もされず、される事もない。

 だが彼は別にそれで良かった。誰かからの理解なんて最初から欲しくなかった。

 しかし誰からの理解もなく、血が滲む様な努力を重ねても限界があった。


 確かに、今までの努力を発揮すれば数人の大人ぐらいなら、ぐらいなら上手くボコる事は出来るかもしれない。

 しかし、言ってしまえばそれだけの事でしかない。

 大人数人を相手にして、勝てる。

 しかしもっと何十人も、もしかしたら魔法だの銃だの使ってくるかもしれない。

 そうなればどうなる?結果、こっちがボコられるだけじゃないか…。
 何だよそれ、情けないしお笑いネタも良い所の話ではないか…。



 やはり、この世界での力では限界が存在する。
 ハッキリ言って下らない、こんな自分もこの世界も。

 全てを裏から操り、最強と名乗り、孤高の先に待つ様な者となるのなら、命すら顧みない。


 ◇◇


 ―――さらば日本、そしてよろしく異世界


 友情、独占、忠誠、誉れ、優しさ、欺き、偽善、孤高、自由、天賦の才、憎悪、無心、慈愛、軽蔑、敵対、保護欲、敬愛、全知…。

 そして、自分が何を成すかは知っているはずだ。

 異世界、天国、羽、水…。


 全てを掌握出来る程の実力者。


 さぁ、始めよう。


 ――【我々】の前には、全てが無力。抵抗は無意味だ…。


 黒幕と名乗る、その漆黒に満ちた謎の人物の名は『MasterMind』

 あの霧の中に、鐘が鳴り響く…。
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