17 / 42
バックストーリー集
バックストーリー No.10「シン・ティルモディア」
しおりを挟む
NO.10 並行世界線0042
僅か15歳にして双剣を巧みに操り、まるで自分の手足の様にして使いこなす。
名門貴族家のティモルディア家長男の「シン・ティルモディア」はその圧倒的な双剣の才能を惜しみなく発揮していた。
幾多の模擬戦、大会を巡って尚不敗。
滑るかの様に、そして嫋かに相手を赤子の如く簡単にいなす。
そんなシンの戦う姿に、多くの観衆は魅了され家族はそんなシンに強い期待を向けていた。
シンは高い社交性も持ち、誰とでも打ち解けられる性格。
勉学や他の事、凡ゆる面において非凡な才覚を持っていた。
そんなシンは、正に完璧超人。将来が約束されたも同然と言える程の、非の打ち所がない様な人物だった。
――下らない、全てにおいて…。
しかし、シンは何も満たされていなかった。何においても、生き方も自分の信念も何も。
全てにおいて満たされていなかった。
何もかも、何もかも嫌で仕方ない。
他者からの評価なんて全てゴミと同格だ。
持て囃す、世辞、将来的価値、自身の地位の為、他の人間はそんな事ぐらいしか考えていない。
周囲の評価、誰かからの信頼。貴族社会において高い位に昇る為にはそれぐらいの事は出来て当然だが、シンはそれが嫌いだった。
自分は何がしたい?
全てにおいてハイスペック、何をやらせても100点を取れる様な人物。
正に天才。しかし、シンは天才である自分は何なのか問い詰めている。
完璧に出来るのは何故か、日々両手で剣を振るう自分は一体何だと言うのか。
そして本当になりたい『自分』が何なのか、シンはその答えが分からずに日々苦悩に悩まされ続けていた。
他者を撃破する様にして、無慈悲に剣を振るう自分?
勉学において常にトップに立つ自分?
女を囲って呑気に暮らす自分?
―――全てにおいて間違っている!
彼の願いなんて、存在しない。
求めるのは、何でもない。クズ共め、奴らは何も理解していない。
目先の事しか分かっていない馬鹿の集団だ。
求婚してくる若い女共も、所詮は自分に対する将来的価値しか見ていない。
いくら容姿が整っていようが、そこに愛など存在していない。
所詮は金の問題だ。将来楽して生きていける為に、地位を欲するが為に自分に嫁ごうとする。
そんな未来は望まない。そんな未来が来るぐらいなら、自決してさっさと死んでしまう方がマシな話だ。
それに、好きになりたい人ぐらい自分で選びたいものだ。
出来るのなら、自分を引っ張ってくれる様な優しい年上の女性が良いものだ。
◇◇
だが、世界は何一つして自分の事など理解していない。
優れているからなんだ、他の人より上手く出来るから何だと言うのだ。
結局、状況が好転する事はなく時間は自分の事など気にする事なく過ぎていく。
必要ない、この世界に生きているのが辛い。
そう感じて、夜に家の外に出たシンは双剣を引き抜く。
月明かりの様な光が空から照らす中、シンは双剣を握り締める。
月光の様な光に反射して、ギラギラと光る銀色の刃が眩しい中で…。
その月明かりが消える。
あぁ、あれだ。あの霧だ…。
鉄の様な血の匂いが蔓延するあの霧の匂いだ。
逃げろ、逃げるんだ。本能と読んだ本にはそう書かれていたが……。
シンは逃げなかった。寧ろ、逃げる気にはなれなかった。
足が竦んだとか、腰を抜かしてしまったのではなく彼は単に逃げる気にならなかったのだ。
逆に、その本心に浮かび上がるのは喜びだ。
シンはニヤリと笑いを見せる。他の全てを捨てて、己が得物とする双剣だけを握ったシンはその霧と闇に呑まれていく。
シンが霧と闇に消えた時、それは彼の願いが叶った時とも言えるのかもしれない…。
僅か15歳にして双剣を巧みに操り、まるで自分の手足の様にして使いこなす。
名門貴族家のティモルディア家長男の「シン・ティルモディア」はその圧倒的な双剣の才能を惜しみなく発揮していた。
幾多の模擬戦、大会を巡って尚不敗。
滑るかの様に、そして嫋かに相手を赤子の如く簡単にいなす。
そんなシンの戦う姿に、多くの観衆は魅了され家族はそんなシンに強い期待を向けていた。
シンは高い社交性も持ち、誰とでも打ち解けられる性格。
勉学や他の事、凡ゆる面において非凡な才覚を持っていた。
そんなシンは、正に完璧超人。将来が約束されたも同然と言える程の、非の打ち所がない様な人物だった。
――下らない、全てにおいて…。
しかし、シンは何も満たされていなかった。何においても、生き方も自分の信念も何も。
全てにおいて満たされていなかった。
何もかも、何もかも嫌で仕方ない。
他者からの評価なんて全てゴミと同格だ。
持て囃す、世辞、将来的価値、自身の地位の為、他の人間はそんな事ぐらいしか考えていない。
周囲の評価、誰かからの信頼。貴族社会において高い位に昇る為にはそれぐらいの事は出来て当然だが、シンはそれが嫌いだった。
自分は何がしたい?
全てにおいてハイスペック、何をやらせても100点を取れる様な人物。
正に天才。しかし、シンは天才である自分は何なのか問い詰めている。
完璧に出来るのは何故か、日々両手で剣を振るう自分は一体何だと言うのか。
そして本当になりたい『自分』が何なのか、シンはその答えが分からずに日々苦悩に悩まされ続けていた。
他者を撃破する様にして、無慈悲に剣を振るう自分?
勉学において常にトップに立つ自分?
女を囲って呑気に暮らす自分?
―――全てにおいて間違っている!
彼の願いなんて、存在しない。
求めるのは、何でもない。クズ共め、奴らは何も理解していない。
目先の事しか分かっていない馬鹿の集団だ。
求婚してくる若い女共も、所詮は自分に対する将来的価値しか見ていない。
いくら容姿が整っていようが、そこに愛など存在していない。
所詮は金の問題だ。将来楽して生きていける為に、地位を欲するが為に自分に嫁ごうとする。
そんな未来は望まない。そんな未来が来るぐらいなら、自決してさっさと死んでしまう方がマシな話だ。
それに、好きになりたい人ぐらい自分で選びたいものだ。
出来るのなら、自分を引っ張ってくれる様な優しい年上の女性が良いものだ。
◇◇
だが、世界は何一つして自分の事など理解していない。
優れているからなんだ、他の人より上手く出来るから何だと言うのだ。
結局、状況が好転する事はなく時間は自分の事など気にする事なく過ぎていく。
必要ない、この世界に生きているのが辛い。
そう感じて、夜に家の外に出たシンは双剣を引き抜く。
月明かりの様な光が空から照らす中、シンは双剣を握り締める。
月光の様な光に反射して、ギラギラと光る銀色の刃が眩しい中で…。
その月明かりが消える。
あぁ、あれだ。あの霧だ…。
鉄の様な血の匂いが蔓延するあの霧の匂いだ。
逃げろ、逃げるんだ。本能と読んだ本にはそう書かれていたが……。
シンは逃げなかった。寧ろ、逃げる気にはなれなかった。
足が竦んだとか、腰を抜かしてしまったのではなく彼は単に逃げる気にならなかったのだ。
逆に、その本心に浮かび上がるのは喜びだ。
シンはニヤリと笑いを見せる。他の全てを捨てて、己が得物とする双剣だけを握ったシンはその霧と闇に呑まれていく。
シンが霧と闇に消えた時、それは彼の願いが叶った時とも言えるのかもしれない…。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる