The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る！

バックストーリー集

バックストーリー No.8「エルヴァ・グレイザー」

　並行世界線0037

　放浪者であり、可愛くて可憐な物を愛して、世界各地を奔走する美しくて勇猛な女性だ。
　誰にも縛られず、誰からの干渉も受けない。

　自由に生きて、自由に世界各地を巡るのが彼女の生き方であった。

　くすんだ黒色の髪に、赤色のインナーカラー、そして少々短めのウルフカット。
　ライダースーツを身に付けながらバイクに跨って、道無き道を進む彼女の後ろ姿は正に美しさと気高さを体現するかの様であった。


　◇◇


　エルヴァは過去を語る様な事はしない。語るのは今の事だけだ。
　少しでも、聞き方を間違えれば背中に背負った二丁のセミオートライフルの銃口を向けられる事となるだろう。

　他にも、両腰に装備したサブマシンガンやコンバットナイフ、手榴弾、リボルバー式マグナム等と充実した火器を備えている。

　攻守共に隙がなく、狙った相手を必ず仕留めるエルヴァはこの日もまた一人新たなターゲットを始末していた。


　――アタシの邪魔をする奴は、全員捻り潰す！


　生粋のバウンティハンター、賞金稼ぎでもある彼女は来る日も来る日も賞金首を追っていた。

　そして、日々のゆったりとした生活を手に入れる為にエルヴァは今日もまた銃を手に取る。

　そう、アレに巻き込まれるまでは……。

　その日の夜、エルヴァは賞金首を追っていた。

　数分間に及ぶ追跡の後、エルヴァは遂に追っていた賞金首を追い詰める。
　賞金首は、全身をローブの様な服装で覆っており、素顔を捉える事は出来ない。

　しかし、顔が見えないぐらいで怯むエルヴァではない。
　顔が見えないからなんだ、そんな事は何も関係ない。

　ボーナスが目の前に転がっているのと、何ら変わりない出来事だ。

　エルヴァは背中に背負うセミオートライフルの一丁を取り出し、引き金に指をかける。


　指をかけ、追い詰めたと確信した時だった。

　血の匂いがする。鉄臭いあの匂いとそっくりな匂いだ。

　気分が悪くなりそう、頭がボォーっとする。

　意識が遠目いていく、何も考えられなくなる。

　曖昧になっていく意識、セミオートライフルは地面へと零れる様にして落ちて、エルヴァは謎の痙攣に思わず片膝立ちとなる。


　―――な、何だ…?


　血の匂いが漂う霧が辺りを覆い尽くした時。エルヴァはその霧に巻き込まれた。


　そして、霧が完全に晴れた時……エルヴァはもう、そこにはいなかった。