The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る!

Bastion

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序章「運命の時」

4話「協定者」

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「うぅ~ん、ここ一体何処何だろうね?」


 明るい電球の様にして、周囲を照らす光源を発生させる事の出来る光魔法「ホーリーライト」を展開しながら、二人の剣士は暗い道を進んでいた。


「俺も分からないな、何処かのダンジョンか?」


 美しい女性の声に対して、少し低めの高校生ぐらいの声をした男は顎に手を当てながら疑問の表情を見せる。
 ここはどの様な場所なのか、と彼は必死になって考えていた。


「タクト、やっぱり変だよ…何かおかしい」


「そうだな、レクシア。慎重に進んでいこう」


 そう言いながら、明らかに見覚えと言うか定番と言った方が良いのか、黒髪ストレートヘアに黒色の丈の長い戦闘用コートに腰に携え、鞘の中に納められた一本の長剣。
 爽やかで惚れてしまいそうなイケメン顔に、落ち着いた風貌。

 彼の名は「タクト」所謂冒険者の類の者だ。

 そして、冒険者であり転移させられた者でもある。
 言ってしまえば、元は日本とか言う国に住んでいたが、トラックに跳ねられたか神様の手違いか何かで死んだか転移させられたと言うよくある流れだ。

 彼の場合は、神様の手違いで落雷が直撃したらしくそのまま死んでしまったらしい。
 だが、神様の手違いで死んでしまったお詫びに彼は新たな、別の世界で新しく生きる権利を与えられた。
 そして、辿り着いたのがあの異世界だった。


 一言で表すのなら、剣と魔法の世界!


 今までゲームや小説、アニメ等でしか再現出来なかった世界が自分の目の前にあった。
 正に自分にとって、強い歓喜に包まれた。憧れと興味の塊の様であったこの異世界に自分は招かれたのだ。

 そして、異世界へと招かれたすぐにお決まりなのか偶然なのかは分からないが、タクトは可愛い女の子とすぐに知り合う事が出来た。


 勿論、漫画やアニメで予習済みなのでこう言った可愛い女の子との接触イベントはしっかりと熟知している。
 タクトの場合は所謂騎士でありながら王女と言う結構強い系のヒロインと接触した。

 貴賓ながらも、美しく、そして剣の腕前は達人と評される自分と同等な程の実力。
 正に完璧であり、凛々しき麗人。

 名前は「レクシア・アンデルシア」

 名門貴族のお嬢様、強い系、茶髪にロングヘア等と言った個人的に嬉しい要素を詰め込みまくっている女の子だ。
 タクトが異世界へと招かれた後に、偶然なのか、それとも運命だったのか二人は出会った。


 初めての出会いは、とある貴族が納めている街にやって来た時だった。

 美しき街並み、レンガの建物、出店から漂う料理のいい匂い、闊歩する群衆の中で二人は偶然に出会った。
 所謂、接触イベントと言うものだ。

 異世界系において凡ゆる知識を保有しているタクトは、恒例的イベントが身に降り掛かった事に思わず嬉しくなってしまい、心の中でガッツポーズをしてしまった程だ。

 そして、無事に恒例イベントを終わらせたタクトは紆余曲折ありながらも、まさかの夜逃げスタイルと言う形でレクシアと共に冒険者として活動すると言う形になった。


 ――え、夜逃げってどう言う事だって?


 簡単な話だよ、所謂アレだ。

 折角ヒロインと仲良くなったと思ったら、婚約者的なウザイ奴がしゃしゃり出て来て一回無理矢理奪い取ろうとするアレだよ。

 よくある展開じゃん?アニメ最終回の数話前に急に出しゃばってきて、出来る限りヘイトを集めたら最終回の最後でコテンパンに主人公に吹っ飛ばされるか、もしくは全地位を失って追放喰らう的な。

 言ってしまえば、そんな奴がタクトとレクシアの間にも現れたと言う事だ。
 中々にキモかったけど…。前の話になるけど、少しだけ紹介しておこう。
 

 凶行その一:いきなり手を握ってきて手の甲にキスする。異世界では割と普通だが…。


 凶行その二:こっそり寝室に忍び込もうとする。


 凶行その三:何かと理由を付けて交際を迫ろうとしている。


 等々、例を挙げればキリがない話だ。
 一応結果的には逃げ切る事に成功はしたが、いつ向こうが刺客を差し向けて来るかは分かったものではない。


「でも、人一人いないなんて……」


「夜とは言っても、誰いても不思議じゃない…」


 それぞれ疑問を述べながらも、二人は周囲をホーリーライトで照らしながら進んでいく。

 そしてタクトは右手にオーダーメイドしてもらった自分専用の長剣をグッと強く握り締めている。
 タクトが握る長剣は、確かな腕前を持つ鍛冶屋に頼んで作ってもらった専用の剣であり、彼専用に作られた、言わばの剣なのだ。

 因みにだが、この剣の名前は「アディシェータ」だ。
 使用者の魔力を剣の刀身に上乗せさせ、切断力や攻撃力を大きく上昇させる事の出来る特殊な効果を秘めている。
 更にこの剣自体にも、高い魔力が込められており、通常の鉄の剣などは斬り合う前に剣ごとへし折ってしまう程の力を秘めている。

 正にタクトの様な主人公が使うのに相応しい剣であり、スタイリッシュながらも剣として素晴らしい完成度を誇っている。


「とにかく進もう、進めば街とか見つかるかもしれないし…」


「そうね、タクト…」


 彼女もまた、タクトと共に逃げた際に持ち出してきた家に伝わる彼女専用のレイピアを利き手の右手で強く握り締める。
 一切警戒心を解く事はなく、二人は周囲の警戒を止める事はない。

 彼女の握り締めるレイピアは、この闇の空の下でも鋭く光り輝いている。
 鈍い銀色の鋭いレイピアの刃先の輝きは、正に闇の中を照らしている光の様だった。


「んっ、タクト。気を付けて…」


「"気配察知"に反応があった。誰かいる」


 タクトとレクシアは、基本的に誰でも習得は容易に行える「無属性魔法」の中で、周囲の人間や魔物と言った生命体の気配を感じ取る事の出来る魔法である「気配察知」を使用し、周囲に感じた気配を感じ取った。


(気配察知に引っかかったのは二人…恐らく両方人間か…)


「何者ですか!?こそこそ隠れてないで出てきなさい!」


 まだ何も話さずに状況を見ていたタクトとは対処的に、レクシアが声を荒らげた。
 レイピアの剣先を気配を感じた先に一直線に向け、険しい表情のまま闇の奥を一点に睨む。

 彼女の言葉は闇に吹く冷たい風に乗る。

 しかし、彼女の言葉に返答はなく、その場には無音の沈黙が続くのみであった。


 ◇◇


 だが、体感で十程数えた後に…。


「ならばこちらも問おう。お前達こそ何者だ…」


 沈黙と闇の中から言葉が現れる。その声は多少低いながらもクールな声だった。
 声の低さ的に見て、女性ではなく男性の声で間違いはなさそうであった。

 そして一歩一歩、言葉の持ち主はタクトとレクシアの元に歩み寄る様にして近付いてきた。

 タクトとレクシアはまだ向こうが敵かもしれない、と言う考えに支配されていた。
 冷や汗を多少流しながらも、二人は臨戦態勢を取り、互いに延々と続く闇の方へと剣を向ける。


「……」


「……」


 タクトとレクシアは問いに答える事なく剣を声が聞こえる方向に向ける。
 警戒心を解いてはいけない、まずもって相手が分からない以上気を抜く事は冒険者として許される事ではないのだ。


「はぁ…質問投げといて答えないとか、ダルいんだけど…」


 今度は先程の低い声とは打って変わって、逆にそれなりに高く美しい女性の様な声が二人の耳を駆けた。

 思わぬ所属不明者の加勢にタクトは思わず体をビクッと震わせた。
 足が僅かに震え、剣を握る手が少々揺れた。


「Defender、どうする?」


「正体も明かさずに現れたオレ達にも非はある。水に流せ…」


「はいよ、アンタは本当に優しいんだから…」


 そう言って、タクトとレクシアの前に現れた長く、眩しい程の銀色の髪を持った中々に強面の若い女性は長いズボンのポケットから棒状の何かを取り出した。


「ふぅ…」


 そして口に咥えると、突如として彼女の手元が僅かに明るくなった。
 まるで蝋燭の小さな明かり、その程度の小さな光だ。


「お前も一本いる?」


「いや、ガムでいい」


 彼女は口に一本の煙草を咥えていた。一度強く吸うと一度口から煙草を離し、口から煙を吐いた。
 煙草を吸っている最中、そして煙を上に吐いた後も長く眩しい銀髪を持つ女性は絶えずタクト達の方を睨み付けていた。


「あ、貴方達は…?」


「名乗るならお前達から名乗れ…」


 そう無機質な声で言うと、今度は男性の方も闇から姿を現した。
 闇の中から現れた男性の姿に二人は思わず距離を置きそうになった。

 何処ぞの主人公が着てそうな、下の方がやや破れた黒色のロングコートに黒色の長ズボン。
 そして目元を覆い隠す近未来サイバー風のバイザー。口元には鈍い灰色で輝くサイバー風のマスクが取り付けられていた。

 バイザーとマスクのせいで、男性の方は素顔を拝む事は出来ない。
 だが、女性の方は素顔を晒しておりやけに対象的な印象を覚える。


「俺はタクト…えぇっと、冒険者をやっている者だ!」


「私はレクシア。タクトと同じ、冒険者をやっているわ!」


「タクト……レクシア……」


 二人が名を口にすると同時に、長い銀髪の女性は少々考え込んだ。
 顎に手を当て、再び煙草を口に咥えながら何かを考えている。


「おい、タクトって奴。お前日本人だろ?レクシア、お前はギリシャ系の国の出身か?」


「な!?な、何故それを!」


 タクトはまるで図星だった様にして、青ざめた表情を見せて、一瞬で後方にバックステップし、片手で握り締めていた剣を両手で強く握る。
 解いていなかった警戒心は更に強まりを見せ、タクトは歯噛みしながら謎の男性と女性を睨み付ける。


「おや、まさかここでドンパチ始める?」


 タクトの反応に強く答えるかの様にして、銀髪の女性はニヤリと悪い笑みを見せる。
 そう言いながら、彼女は背中に背負っていたスナイパーライフル、狙撃銃を取り出した。


「まて、Killer…向こうも驚いている」


「えぇ?」


「自分はDefender…お前は冒険者と言ったな、自分は傭兵……いや用心棒的な仕事をやっている者だ」


 タクトとレクシアが名乗りを上げたのか、向こうのサイバー風バイザーを顔に取り付けた男性は流暢で落ち着いた口調でそう呟いた。

 奇怪且つ第一印象で恐怖を覚えてしまいそうな見た目の割には、非常に落ち着きがあり話し方を見れば優しい人の様にも思えてくる。


「はぁ……Killerだ。一応、Defenderと同業者だよ…」


 流暢且つ落ち着いた口調のDefenderとは異なり、銀髪の女性であるKillerはぶっきらぼうでやや乱暴げな口調で話す。

 目付きも相変わらず、無愛想で他者を睨む様な感じで、態度も冷静且つ落ち着きのある男性のDefenderとは大違いだ。


 何と言うのだろうか、気の強い不良みたいだ。


 タクトはそう心の中で感じていた。
 多少疑問や不信を感じながらも、タクトは向こうから怪しく思われない為に苦笑を浮かべながらDefenderとKillerを見つめる。


「ディ、DefenderさんにKillerさんですか…。あの、お聞きしたい事があるんですが…」


 無論、聞く事は決まっている。
 ここが何処なのか、それだけだ。何も難しい事ではない。

 ただここが何処なのか、どの様な場所なのかを聞く為に。


「ん、何だ?」


「ここは何処なんですか?」


 何かしらのヒントでも良い、少しだけでも良いから役に立つ情報をタクト達は今欲していた。
 多少なりとも期待を胸に秘め、真剣な眼差しを見せながら、剣を強く握り締めたタクトは質問を投げる。


「悪いが自分も分からん。Killerと仕事していたら、この暗闇の中に放り出されていた」


「悪いけど、アンタらが欲しい情報は持ってないんだよ…」


 多少の期待を胸に秘めていたタクト達であった。
 何かしら情報が得られると期待していたが、その期待は今の言葉であっさりと掻き消される事となった。

 あまり気にはしていなかったが、まさか何も得る事が出来ないとは……。


「そ、そんな…」


 レクシアは何も情報が得られなかった事に思わず表情を顰め、狼狽する。
 タクトも同様に息を飲み、その多少なりとも余裕のあった表情から、その余裕が完全に消える。
 冷や汗を流し、表情には僅かながら焦りの線が見えていた。


「くっ、まさか…!」


 ◇◇


 タクトとレクシアが何も情報が得られなかった事で狼狽えている中、DefenderとKillerは小声で何か話していた。
 勿論、声の大きさはタクトやレクシアには聞こえない程度の声の大きさでだ。


「Defender、どうする?」


「利用価値は皆無に等しい。無知、未熟、油断、気を許し過ぎだ。24の自分でも分かる」


「同じく……保護って手は、くだらねぇな。さっさと帰りたい……早くお前に抱かれたいからな…」


 Killerは面白おかしげに軽く笑みをその目付きの悪い顔に浮かべる。


「そうだな、ゴムも持ってるし。さっさと済ますか…」


 そう言って、DefenderはKillerよりも前に出る。
 その足の行く先は、タクトとレクシアの方向へと向かっていた。


「一応教えられる事はある、聞いておくか?」


 Defenderは一歩一歩確実にタクトとレクシアの元へと迫る。
 向こうはもう完全にDefenderの事を警戒はしていなかった。そのせいか、タクトとレクシアは距離を詰めてくるDefenderに何も疑問を抱かなかった。

 名を明かし、一応こちらの質問にはきちんと応答してくれた。
 タクトとレクシアは二人の事を別に怪しい者だとは思ってはいなかった。

 気を許していた、きっと大丈夫だろうと。


 だが、それはただの間違いに過ぎなかった。


「え?」


「利用価値はない、悪いが不要だ」


 Defenderは光学迷彩によって隠していた武器を一瞬で取り出した。

 それはKillerと同じ様に背中に背負っていた棺桶型の武装コンテナだった。
 本来なら死した人間が最後に行き着き、最後に眠る場所であり箱であり、棺である棺桶。

 しかし、Defenderの使用する武器はその棺桶そのものだ。

 棺桶を武器にするなんて、不謹慎だしそもそもの話、棺桶は武器ではないかもしれない。
 言ってしまえば、棺桶とは亡くなった人を埋葬する厳粛な道具であり、死者の永遠の安らぎの場だ。

 正式に言ってしまえば、武器とは程遠い存在なのだ。


 だが、皮肉な事にも彼にとってこの棺桶と言う名の武器は生涯変える事のない武器となっているのだ。


「悪いが死んでくれ…」


 刹那、棺桶下部が突如として大きな音を立てながらスライドする。
 威圧するかの如くスライドした棺桶内部からは、スライドに連動して何かが現れる。

 タクトとレクシアはDefenderの言葉、目の前で起こっている現象に理解がまだ追い付いていなかった。


「機関砲解放…」


 そして棺桶下部から現れたのは、紛れもなく、タクト達を狙う機関砲。
 言わばガトリングガンだった。黒く重厚な六つの銃身が取り付けられたガトリングガンの銃口がタクト達に向けられ、今にも銃口から火を吹こうとしていた。

 そして、機関砲が現れると同時にDefenderは無機質な声でタクト達にこう告げた。


「恨むなよ?」


「ちょ、まっ!」


 他者の遺言など聞いていられる暇はない。早急に終わらせる事にしよう。

 次の瞬間、鳴り響くのは耳を余裕で引き裂く程の轟音。
 轟音が響くと共にDefenderの右手に握られたトリガーが引かれた。

 トリガーを、つまり銃の引き金を引いた。それが意味する事。
 最早、そこに抵抗と言う文字は存在しない。まるで豆腐を簡単に握り潰すが如く、無数の閃光を駆ける淡い色をした銃弾は空を切り裂いて、目では捉えられない程の速度で突き進んでいく。

 無論、その銃弾の先に立つ者。
 それはタクトとレクシアだ。

 正に蹂躙されるが如く蹴散らされていき、何も感じなかった。
 絶え間なく続く、銃声と言う名の轟音。着弾地点の周囲数メートルを余裕で歪ませ、その中心に広がるのは……。


 血肉を撒き散らし、最早誰だったのか判別出来ない程、つまり原型を留めていない程に破壊された人間の体があった。

 先程まで、タクト達の眼前にいたDefenderはその体を硬直させながら、その棺桶に取り付けられた引き金を引いたのだ。

 闇と影の静寂に、再び重なるかの様にして静寂が空間を支配する。


 訳が分からない。呆然と立っていた自分が馬鹿みたいに感じられる。

 周囲を睥睨しながら、原型が全くと言って良いぐらい残っていない死体の元に彼は、棺桶を携えた男であるDefenderとその横に控えていた長く眩しい程の銀髪の女性であるKillerは近寄ってくる。

「排除完了…」


「呆気ないねぇ……あ、Defender一緒に写真撮ろうぜ!」


 仮にも人を殺めたと言うにも関わらず、死体が傍にある事でどんよりとしており、あまり良い空気とは言えない中でKillerは徐に、陽気で楽しげな口調で話し出し、自分のスマホを取り出した。

 そしてそのまま、スマホのカメラ機能を起動させるとKillerはDefenderと体を寄せ合い、二人で自撮りを行おうとする。


「後でアップロードしとくか!」


「お前まだあのサイトやってるのか?」


「いいだろ別に?あれぐらいしか暇潰し出来ねぇし!」


「全く、殺した奴とのツーショなんて何がいいんだか…」


 しかしながら、一緒に撮ってあげないと言う選択も気が引ける。
 やれやれ、と少しばかり遠慮気味な表情を見せながらもDefenderはやけに興奮して嬉しそうな表情を見せるKillerと共に肉塊と化したタクトやレクシアと共に自撮り写真を撮ったのだった。


「さぁて、どれだけいいねが貰えるかな……って、ここインターネット圏外なんだけど?」


「は?………あ、本当だ」


 Killerの口から出てきた驚愕の言葉。
 Defenderは、すぐさま自分のスマホも取り出すと電波が届いているかどうかを確認する。

 しかし、彼女の言葉通り。電波は繋がっておらず、表示は圏外となっていた。


「おいおい、マジかよ…」


「Killer、急いで移動するぞ。この場所に長居するのは得策じゃない!」


 何か悪い予感、背筋に走った謎の悪寒。
 Defenderは珍しく、考えるよりも先に動く事を選択した。
 やや焦った口調で呟くと、Killerに着いてくる様にと促した。


「えぇDefender?どうした?外じゃセックスしたくないのか?ベットの上がいいのか?」


 そう言う問題じゃない、今の問題はこの場所の異常さだ。
 前にいた街では電波は通っていた。と言うか、あの街と言うか世界全体に電波が通っているのが普通だ。

 生活の上でかなり衰退したとは言っても、ネットワーク面においては非常に高い技術力を持っていたはずだ。
 あのネオン街と大量の電子広告の看板、絶え間なく夜を照らす街の明かりが消えなかった世界で電波が届かない等有り得ない話だ。


「取り敢えず移動だ、走るぞ!」


「お、おい待てよDefender!」


 絶対何かおかしい、何か見落としているはずだ。
 何か、何かバクの様な存在があるはずだ…。


 ◇◇


「また、未知が生まれる…」


「そして、不秩序も……だね!」


 これは所詮、選別。
 新たなる戦火の始まりに過ぎないのだ。そこにあるのは無慈悲な殺し合い、そして生き残りを賭けたデスゲーム。

 生と死の境目に立ち、どちらの側に立つのかは誰であろうと分からない。


 序章の時は過ぎた。運命の時はもう幕を下ろした。
 これからが本当の物語の開幕なのだ。

 まだだ、ほんの少し。この先の世界が、圧迫されていく。

 ありとあらゆる世界への道。その道はいずれ集結し、最終的には一つへと結合する。


 そしてその果てに彼らは、どの様な結末を辿るのか…。
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