上 下
28 / 34
バンパイヤたちの家

第28話

しおりを挟む


 「ふうん。本当に何もわかってないみたいね。キミ、名前は?」

 「…ふぇ??」


 名前…

 なぜかシャキッと背筋が正される。

 緊張が走った。

 明らかに威厳がある人の前に立つと、姿勢が正しくなる。

 その感覚に近かった。

 赤みがかったその瞳は、心の奥を見透かしたように鋭い切れ味を伴っていた。

 温かみのある表情を持ちながら、少しも、丸み帯びた輪郭を伴わない。

 相反する二つの印象が、少しも反発しあうことなく綺麗に組み合わさっていた。

 それが異様な「不気味さ」を運んでいた一つの要因だったのかもしれない。

 なんにせよ、今まで出会ってきた人の中で、こんなにも存在感のある人は初めてだった。

 艶のある唇が、穏やかな表情を“梳く”ように薄い鋒を伸ばした。


 「村雨サトシ君?」

 「は、はい…!」


 反射的に言った自分の名前を復唱しながら、彼女の細い指が頬の上に伸びてくる。

 俺の顔を撫でながら、まるで陶芸品でも鑑賞するようにゆっくり視線を傾けていた。

 俺は硬直していた。

 ぴくりとも動けなかった。


 「ユカ。この子はあなたのクラスメイトなんでしょう?」

 「…そうですけど」

 「あなたから聞いた話だと、“無断で”催眠を使ったと聞いたけれど」


 天ヶ瀬は視線を落としたままだった。

 さっきまでと、全然様子が違ってた。

 心なしか怯えてるようでもあった。

 彼女からの“問い”に対し、小さく頷きながら「はい」と言う。


 「…はぁ」


 深いため息が聞こえてきたのは、ソファの方からだった。

 金髪の女性は、吹かしていたタバコを灰皿に強く押しつけ、バッと立ち上がった。

 スタスタとこちらに近づき、止まることもなく腕を伸ばしてくる。


 ドンッ


 天ヶ瀬の首を掴み、そのまま壁に押さえつけた。

 苦悶の表情を浮かべる天ヶ瀬は、金髪の女性を睨み返すように眉を顰めていた。

 けれど、それに抵抗しようとする素振りはなくて…



 「天ヶ瀬ッ!」

 「静かに」


 スッと腕を上げ、天ヶ瀬の方に近づこうとする俺を止める。

 目の前にいる彼女は、終始穏やかだった。

 対して金髪の女性は、天ヶ瀬に向かって強い口調で口撃していた。

 壁に押さえつけながら、グッと指を食い込ませていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

処理中です...