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バンパイヤたちの家
第26話
しおりを挟む「…ここが、協会…?」
「ここは“拠点”の一つ。「事務所」みたいなものだよ」
…事務所?
聞き慣れない単語が、彼女の声を伝って飛んでくる。
事務所っていうと、会社とかにあるやつだよな?
どうやら、「協会」っていうのは、“ある特定の場所”を指す用語ではないらしい。
このビルにある「事務所」とやらは、協会にある拠点の一つだそうだった。
「拠点」っていうのがどういう意味なのかよくわからなかったが、彼女曰く、「他のバンパイヤたち」が、それぞれの地域で活動するための“根城”なんだとか。
「…東京に!?」
俺が驚いたのは、東京都市部にバンパイヤたちがたくさん存在してるっていうことだった。
『バンパイヤ』っていう存在自体現実離れしてるってのに、他にも!?
東京都市部だけじゃなく、23区外の多摩市や東久留米市にもいるらしい。
とにかく、東京内の「各地域」に。
渋谷の中に総本部があり、23区だけに限れば、各区に於いて取り締まる「区役所」というものが存在してるっぽい。
この区役所は文字通り人間社会の中にある区役所の場所と一致するそうだが、にわかには信じがたかった。
もしそれが本当なら、東京中にバンパイヤがいるってことじゃないか?
さっきからそう言ってると嗜められたが、“各区役所”って…
回り階段を上った先には、一階と変わらない無機質な廊下が広がっていた。
ただ、さっきよりも少しだけ明るかった。
多分照明の関係だろう。
天井は相変わらず低く、壁と壁の間は狭い。
所々に広いスペースがあって、埃まみれの段ボールが置いてあったり、タバコの吸い殻が捨てられてあったり…
「汚…」
…誰も管理してないんじゃないか?
空気は湿っぽくて、蒸し暑い。
蛍光灯の一部はチカチカしてて、誰かがいるにしてはあまりにもずさんだった。
ひび割れたドアのガラスと、タバコのヤニがついた白い壁。
「ここだよ」
廊下を歩いていくと、左右にいくつかの部屋があった。
そのうちの1つの部屋の前に立ち、彼女はドアノブに手をかける。
ガチャ
部屋には電気がついてた。
それは外からでも確認できた。
ドアはガラリ付きで、縦スリッドの小さな曇りガラスから、中が光っているのが見えた。
ドアを開けた先には、10畳ほどの広い空間があった。
そして、中には——
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