バンパイア・ガールズ 〜コンビニ強盗から救った店員は、絶賛片思い中のアイドルだった〜

平木明日香

文字の大きさ
上 下
4 / 34
命日

第4話

しおりを挟む


 …け、警察


 こういう時は、すぐに警察を呼んだほうがいい。

 咄嗟に思ったが、体は固まったままだった。


 …なんで?


 身を乗り出すように男は叫んでいる。

 店員は困ってた。

 そりゃそうだ。

 見る感じ華奢な女の子が、自分よりも二回り以上大きい男に脅されてるんだ。

 困るとかっていうレベルじゃない。

 俺が店員だったら、多分卒倒する。


 どうすればいい…?


 このまま見過ごすわけにもいかなかった。

 かと言って、体は震えたままだった。

 我ながら情けなかった。

 こういう時、アイツだったら止めに入る。

 絶対、逃げ出したりなんかはしない。

 でも俺は、そんなに強い人間じゃない。

 喧嘩だってしないし、人を殴ったこともない。



 …見ろよ?

 震えてんだぞ?

 何かができる気はしなかった。

 一瞬でも、“向かっていこう“って気持ちは芽生えなかった。

 訳もわからないまま時間は過ぎた。

 そんな中だ。

 男が、ナイフを手に持ったのは。

 
 「さっさと出せ!」


 そっからの記憶は、いまいち残ってない。

 女の子の顔ほどもある大きな刃物が目に映った時、最悪の未来が、頭によぎった。

 怖いとか震えてるとか、そんなの言ってる場合じゃない。

 無我夢中だった。

 考えてる余裕はなかった。

 女の子を助けようと思った訳じゃなかった。

 正直、後先のことは考えてなかった。


 ガッ


 男の肩を掴んで、意識をこっちに向けようとした。

 注意をそらせれば、きっと…

 女の子の顔を見た。

 彼女に向かって、俺は何かを叫んだ。

 なんて言ったのかまでは覚えてなかった。

 やばい。

 きっと、そんな感覚だった。

 無意識のうちに手を伸ばした時の、——感情は。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...