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学校帰りの買い出し②

第19話

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 カズはいつも弱虫だった。


 根っからの“いくじなし”とは、彼のことを指す。


 彼は学校で、「いじめられる側」のポジションに立っていた。


 誰かの前で自分の意見を言うこともできず、全般的に能力値が低かったために、いじめられる「対象」になるのも無理はなかった。


 それはさながら、「自然の摂理」に近いものだっただろう。


 「オレが最強」的なやつに目をつけられるのは当然で、いとも簡単に弱肉強食の図が完成する。


 『弱者』はもちろんカズだ。


 彼は、食物連鎖のいちばん底辺に該当していた。


 私ですら、カズよりは上の位に位置していると思ってしまうくらいだった。


 カズはケンスケたちの登場を快く思っていなかった。


 当然だ。


 この時の彼は、ケンスケたちから下僕のような扱いを受けていたのだから。


 「おいカズ。オレ様は喉が渇いたんだが」


 その言葉にはさすがに、私も驚いた。


 突然何を言い出すのかと思った。


 喉が渇いた…?


 そんな事情、いちいち外に発信する必要はないだろう。


 それにな、ケンスケ。


 今は私がコイツと話してるんだ。


 割り込まないでくれるか?


 …そう言おうとしたが、後ろからカズの声が聞こえたため、静止せざるを得なかった。

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