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学校帰りの買い出し②

第16話

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 「…くだらない」


 それは至極当然な解答だった。


 第一印象、隠キャ。


 まるで絵に描いたようなガキで、色白のゲーム好きオタク。


 今風に言えば、そういう言い方になるのだろうか。


 少なくとも私は、「カズ」に対してろくな第一印象を持てなかった。


 最初に出会った瞬間に、直感で思ったのだ。


 コイツは「やばい」と。



 そんな私の感情とは裏腹に、カズは私以上に驚いた表情のまま、奇妙な視線を向けてきた。


 なんでカエルと一緒にいるの?と、彼は聞いてきたのだ。


 すごく、神妙な面持ちで。


 「……えっと……」


 私はそれに答えなかった。


 答えなかったというよりも、答えを濁したと言った方が正しい。


 話すまでもないことだったし、話したところで、所詮は意味のない会話になってしまうと思ったからだ。


 小学生になる頃には、世間で言う「常識」を、私はある程度弁えていた。


 普通の子供は、カエルと会話はしない。


 カエルを連れて歩くなんてこともしない。


 年相応の可愛い服を着て、学校に行き、宿題をしたり運動をしたり。


 学校では友達を作って、女の子らしい遊びをする。


 ランドセルを背負い、登下校の道をみんなと歩いて、日が沈むまでにちゃんと家に帰ること。


 カエルとサリエルに教えられたこの「ルール」は、私がこの世界で生きていけるように植え付けられた「知識」だった。


 だから下手なことは話せないと思ったのだ。


 『私は普通の女の子だ』


 と、胸を張って言えるように。

 
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