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プロローグ

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 戦争が終結して10年、王国に待望の王女が生まれた。

 王女の名前は、「セラ」と名付けられた。

 「未来を灯す光」という意味を込められて、与えられた名前だった。


 しかし、王女は生まれて間もなく、ある魔法使いに呪いをかけられてしまう。

 その魔法使いは、戦争で敗北した北の森に住む住人だった。

 戦争によって焼き払われた森の悲しみを背負い、王国に訪れたのだ。

 王女は、


 「18歳の誕生日の日没までに糸車で指を刺して死ぬ」


 という呪いをかけられてしまう。


 困り果てた王は、国中の魔法使いを集めて、呪いを解く方法はないかを探した。

 しかし呪いの力は強く、王女を救える術はないかに思われた。

 国一番の魔法使いでも、呪いを完全に消すことはできないと告げられたからだ。


 それでも諦めなかった王は、王女の命を救えるならどんなことでも構わない、と、打診する。

 そこで魔法使いたちは、ある提案を王に持ちかけた。


 「呪いは大変強い力を持っています。しかし、この呪いの根元にあるのは、戦争によって傷ついたものたちの、悲しみです。この悲しみが浄化されれば、自ずと呪いは弱まっていくはずです」


 王は尋ねる。


 「では、その悲しみを消すためには、どうすればいいのだ?」


 魔法使いたちは言った。

 長い歳月をかけ、少しずつ、少しずつ、傷ついたものたちの心が休まるのを待つしかないと。

 100年かかるか、1000年かかるかは分からない。

 しかし時間が全てを解決してくれると、話した。


 王は、そうこうしているうちに娘が死んでしまうと、嘆いた。

 魔法使いたちは、呪いが弱まるであろう遠い未来に王女を送れば、もしかしたら助かるかもしれない、と告げた。


 王は、助かるかもわからないその一か八かの方法に、反対する。

 助かったとしても、娘にはもう二度と会えない。

 呪いが消えず、側にもいてやれない状況で1人、苦しませてしまうかもしれない。


 王はそれから毎日、考えた。

 1年考え、

 2年考え、

 …それでも、娘を助ける方法がそれしかないと悟った時、魔法使いたちを集め、王女を未来に送ることを決意する。


 魔法使いたちの呪文によって、はるか先の未来に飛ばされた王女セラは、召使いのカエルと、使用人のサリエルと一緒に、新しい人生を始めることになった。
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