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毒キノコでも食った?
第390話
しおりを挟む坂道を下っていくに連れて、街の輪郭が大きくなっていく。
さやさやと風に触れる道路脇のイチョウが、電線のそばで首を傾げてた。
密集した住宅地の入り組んだ道と、ジグザグに通り過ぎて行く街角のガードレール。
そういえば、鷹子からラインが来てたな。
交差点の信号機で自転車を停めた。
歩道上沿いの焼き鳥屋さんが、ちょうちんの明かりをつけてた。
『本日のおすすめ』の看板を出し、のれんを入り口の屋根下に掛けて。
『明日の着物はどうすんの?』
着物ぉ?
着物なんて着て行かないよ。
明日の花火に鷹子も行くんだが、本人は着物が着たくてうずうずしてるらしい。
大体私は着物なんて持ってない。
わざわざお店で借りるほどのことでもないし、スポーツウェアでいいだろ、別に。
動きやすい格好の方が、色々見て回れるでしょ?
会場の中はすごく広いんだから。
『着物なんて持ってねー』
すぐに返信が返ってきた。
今ヒマ?
って。
ヒマじゃないよ。
これから買い物に行かなきゃなんないの。
さや姉が帰ってくる前にお風呂溜めとかないと。
干しっぱなしの洗濯物は、雨でも降らない限り大丈夫だが。
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