雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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毒キノコでも食った?

第383話

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 ノッチ先輩はサウスポーで、コントロールを重視するタイプだ。

 体はそこまで大きくない。

 どっちかっていうと細身かな?

 ストレート自体はそこまで速くないけど、スライダーとカーブがキレッキレで、中でも縦スラと呼ばれる縦の変化球は、バッターからしたら鋭く曲がったように落ちてくる。

 カーブは緩い系というよりもパワー系だ。

 変化量が大きくて、おまけに速い。

 縦スラとの使い分けで高低差をうまく使ってる。

 縦スラはバッターの手前で変化が始まるけど、カーブはキュッと抉ってくる感じ。

 シニアの時から投げ始めてたみたいで、ボールの印象がだいぶこなれた感がある。

 落差もあって打ちづらいんだよ。

 すごく。


 「先輩はなんでピッチャーになろうと思ったんですか?」

 「俺?なんでやろ」

 「確かリトルリーグの時からですよね?」

 「そうそう。元々キャッチャーやったんやけどね」

 「キャッチャー!?」

 「リトルっつっても人がおらんくてさ?(笑)仕方なくキャッチャーやってた。珍しいやろ?左利きのキャッチャーなんて」

 「見たことないですね」

 「桐崎は?」

 「私…ですか?」

 「なんでピッチャーやろうと思ったん?」


 なんで…?

 なんでピッチャーやろうと思ったんだろ

 えーーっと


 別に、なんでも良かったんだ。

 最初は。

 たまたまつけたテレビ番組で、大きく振りかぶってる人がいた。

 ブルーウェーブスのロゴ。

 カメラ越しに映る、背番号『11』の文字。

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