雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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100億光年の時の彼方で

第362話

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 教室に入ると、クラスの友達が声をかけてきた。

 前回来た時は、よその学校の教室に入ったみたいに右も左もわからなかったが、少しずつ慣れてきた。


 健太によく似た角刈りデブの沖田に、エビ天のキーホルダーをカバンにつけているオタク気質の岸本。

 よくしゃべる前田に、放課後よく図書室に出没している“あかりん“こと東堂あかり。

 タマネギ頭の峯岸。

 オートミールが大好きな、甘党の吉本。


 剣道部でいつも竹刀を持ち歩いてる強面の門脇は、よく行くラーメン屋の息子でもある。

 俺も昔剣道をやってた時期があったから、わりと仲が良いんだ。

 やってたつっても、たかだか1年とかだけど。

 じいちゃんの影響でさ?

 剣道の道場を開いてたんだ。

 大阪の岬町っていう田舎で。


 「ねえねえ聞いた?あの人結婚したんやって。月9の」

 「知ってるー。一般の人とやろ?」

 「どんな人なんやろね?一般って」

 「さあ?キャビンアテンダントとかなんやない?バリバリキャリアウーマンの」


 教室はワイワイ賑わいでる。

 クラスに馴染めてないやつが何人かいるが、俺もその1人だ。

 慣れてきたとは言え、まだ1週間しか経ってない。

 入学したての4月みたいに、周りの景色が眩しい。

 渡り廊下に響く誰かの話し声も、さやさやと揺れる体育館裏の木陰も。

 
 教室の前の長い廊下。

 チョークの跡の残る黒板と、南館のそばに立つ楠。


 教室の中の景色は、須磨高とあんまり変わらない。

 壁の色も天井の高さも違うが、なんとなく。

 神戸高の椅子や机は、中学の時とよく似てる。

 引き出しの中には教科書が何冊か入ってた。

 くしゃくしゃのプリントも。

 よく落書きしてたんだよなぁ。

 机に。

 ホームルーム前の掃除の時によく怒られてた。

 「リョウ!何回言えば気が済むの?!」って、学級委員のトミー(大城朋子)に。


 掃除の時黒板消しで遊んでたっけ。

 追いかけられるトミーの裏をかき、ベランダの扉に細工してたりしてた。

 掃除用具のロッカーの中にドッキリで典雄(クラスメイト)を忍ばせてた時は、死ぬほど笑った。

 だって、めっちゃ叫んでたから(笑)

 イタズラでよく友達のイスを引いたりしてた。

 体育の授業の後に制服を隠された時は、マジでどうしようかと思った。

 あのあと英語の北川先生に怒られたんだ。

 ふざけてないで着替えなさいって。

 隠れようにも隠れられなかった。

 一番前の席だったから。
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