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100億光年の時の彼方で
第361話
しおりを挟む神戸高の野球部は、強豪ってわけじゃないが、ちゃんとした野球部でもある。
メンバーだってちゃんといる。
3年生が引退して人数が減ったけど、2年の先輩と俺たちだけで、ざっと20人くらい。
春には新入生が入ってくるし、それなりに戦える環境が整ってるとは思う。
甲子園を目指せって言われたらちょっときつい気もするが、公式戦にすらまともに出れない須磨高と比べたら、だいぶマシだ。
部室にエアコンが完備されてんだぞ?
ついでに洗濯機も。
倉庫にはバットもボールもたくさんあるし、練習で困るようなことはない。
何より、野球部専用のグラウンドがあるのが一番びっくりした。
いや、当たり前なんだけどさ?
ずっとそんな環境にいなかったから、なんか新鮮で。
拓海と一緒に職員室に行った。
お互い、プリントを取りに。
置きっぱなしの傘のある傘入れと、扉付きの下駄箱。
学級新聞が貼られた階段の踊り場と、放送室の横にある職員室。
廊下でばったり担任の先生と会った。
相変わらずガタイがいいな。
180センチはあるんじゃないか?
イッシーは柔道の顧問でもある。
時々イカついグラサンをかけてる。
外で見かけたら絶対に学校の先生だとは思わない。
ジャージにグラサンだぞ?
見た目と職業に差がありすぎる。
そのくせ、担当科目は家庭科だし。
「リョウスケ。ちゃんとプリント持っていけよ」
「わかってますって」
しゃがれた声で睨みを利かすイッシー。
初対面だとビビり散らかすところだが、実は、気さくな先生でもある。
それがわかってからは接しやすくなった。
というか、俺はプリントを忘れたことはない。
忘れたのは「こっちの世界の俺」で、俺じゃない。
聞く話によると、『俺』はかなりだらしない側面があるみたいで、野球以外に興味がないやつだった。
勉強なんて俺よりできてない。
なんで神戸高に入学できたのか疑問だが、想像以上に野球に熱中しててビビった。
まあいいけど。
どんな高校生活を送ってようが、自分のことだし。
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