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100億光年の時の彼方で
第356話
しおりを挟む道の真ん中を走る軽トラックの排気音が、背の高い空の下に響いている。
長閑な畦道と、橋と。
牛舎のような古びた横長木小屋のそばに、広い駐車場がある。
その駐車場をまっすぐ抜けると堤防があって、海浜公園が、なだらかな斜面の向こうに広がる。
まっさらな、砂浜の向こうに。
人気のないこの場所に、おかんの店はある。
2階建ての白い鉄骨と、錆びたトタン板の壁。
事務所がある建物の横には開放式の車庫があって、シャッターは基本開けっぱなしだ。
オイルのシミついたタオルが、三脚物干しにかけられてる。
倉庫に積まれたバイク用品と、床に転がったオイルタンク。
鉄骨の梁が剥き出しの天井屋根に、屋外用のスポットライトが設置してある。
最近蛍光灯が壊れたみたいで、とりあえず取り付けてるらしい。
おかんは車庫の中でチェーンの掃除をしてた。
ホンダのシルクロードだ。
白色のボディに、レトロ感のあるレザーシート。
俺たちが来たことに驚いてた。
「学校は?」って、グリスまみれの手袋を外し。
「おばさんトースター借りるね」
「何焼くん?」
「あんたは財布探しぃや」
「財布?」
「昨日忘れたんや。多分ここに。見とらん?」
「見とらん」
「探してくる」
事務所の中に入って、ソファの周りを探した。
大きいパキラの木が置いてある玄関の横に、自動販売機が置いてある。
その奥にお客さん用のテーブルとソファがあって、俺はいつもそこで寛いでる。
テレビはあるし、漫画とかも置いてあるから。
「あったあった」
千冬は何を焼きに行ったんだろうか?
トースターは事務所の奥にあるが、しばらくすると出てきた。
さっき買った、チョココロネを手に持ち。
「あつつつつッ!」
チョコが溶けてこぼれそうになっている。
何やってんだ??
ってか俺のパン何円だった?
今返しとくわ。
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