雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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100億光年の時の彼方で

第350話

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 「なあ、ちょっと用事があるんやけど」


 おかんの店に取りに行くものがある。

 カバンの中に無いんだ。

 財布が。


 「部屋には?」

 「無い。昨日帰りに寄ったんや。自販機でジュース買ったのは覚えとるから、多分あそこやろ」


 おかんにはラインを送ってるが、既読がつかないから行ったほうが早い。

 通り道だし、寄るだけ寄らせて?

 
 「ちゃんと探したん?」

 「探した」

 「あ、そうや。寄るんならおばさんに用がある」

 「おかんに?」

 「うん」


 用って?

 千冬とおかんは仲が良い。

 友達かよっていうくらい。

 仲が良いのは昔からだったが、こっちにきてからはちょっと印象が違う。

 昔はまだ、「親子」みたいな関係だった。

 千冬には母親がいないし、おかんが母親代わりって感じで、よく晩メシとか買い物とかに連れて行ったりしてた。

 野球の試合じゃ、実の息子より声援を送ってて。


 なんでかは聞いてなかった。

 想像はしてなかったけど、普通にあり得るのかなって思って。

 この前なんか部活終わりに家に来て、2人でどっかに行ってたんだ。

 買いたい服があるとかって言って。


 おかんを誘っても今時のファッションなんかわかんねーぞ?

 大体あの人はラフな格好しかしねーし、基本仕事着しか着てない。

 アドバイスなんてくれないと思う。

 逆に、教えてあげて欲しいくらいなのに。



 「あそこのローソンってあったっけ?自転車の空気入れ」

 「あそこって?」

 「交差点のとこ。商店街の」


 いや、あそこはなくね?

 エアーステーションのことだろ?

 あんなもん一部の店舗にしか無いぞ。


 「チェッ」

 「空気ないんか?」

 「そうなんよ。そろそろ入れとかんといけんのやが」


 中学の時はいつも学校で入れてたみたいなんだが、神戸高校にはそんな便利なものがなかった。

 他にある場所っつったら駅かホームセンター?


 おかんのとこで入れたら?



 「お店にあるん?」

 「エアーステーションは無いけど、手動タイプならあるで」

 「ほんま!?助かった!」


 多分あった気がするけど。

 俺のも入れとこうかな。

 どうせすぐ抜けるし。
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