雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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トンネルの向こう

第340話

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 夜の学校の理科室とか、あの不気味な感じ。

 あそこまでとは言わないが、ここもまあまあ不気味だ。

 背中がゾクゾクするんだよな。

 なんつーの?

 用途のわからない機械とか、散乱するコードとか。

 得体の知れない何かがそこらじゅうにあるせいで、めちゃくちゃ息苦しい。

 大体、そのどでかい機械は?

 お前が操作してるやつ。


 「これ?これはメインコンピューターと繋がっとる」

 「メインコンピューター?それってパソコンみたいな?」

 「んーまあ、そんな感じやな」

 「何に使うん?」

 「インターネットと接続するんや」

 「インターネット!?」

 「…脳の中にはチャンネルがあるって言うたやろ?」

 「…ああ」

 「この機械は、人間の脳の中に保存されてる記憶領域と、電気的に接続するために設計されとる」

 「脳と…接続…?」

 「コイツはその一部に過ぎん。この地下空間に設置されとる巨大なコンピュータは、未来から来た技術によって設計されとる。用途は色々ある。基本的には、量子的な情報とかエネルギーにまつわることやけど」



 …ふーん。

 まあ、なんでもいいけど、あそこに入るのだけは勘弁な?

 まだこんなところで死にたくないんだ。


 「死んでも、死体はちゃんと処理してあげるで?」

 「…冗談に聞こえんのんやけど?」

 「今のうちに遺書でも書いとくか?」


 後ずさる俺を横目に、女はトントンとタッチパネルを打つ。

 機械から音声ガイダンスが流れ始めた。

 俺の知らない単語が、スピーカー越しに聞こえてくる。



 「よし、準備できた」

 「…なあ、帰らん?」

 「ここまで来て何言うとんや」

 「…いや、その」


 ガチであそこに入るつもりなのか??

 …いや、ほんとに無理なんだって!!

 狭いところは苦手だし、薄気味悪いし…!


 「キーちゃんに会いに行くんやろ?」

 「行きたいけど…でも…」

 「シャンとせぇ」


 ポッドの前まで俺を引っ張り、中に入れと促してくる。

 ガラス製の蓋を開けた。

 中には、レザーシートのようなものが敷かれていて、血管のように流れる電線が、内側の壁に張り巡らされていた。

 マザーボードみたいな基盤が、いくつも見える。

 たくさん取り付けられていた。

 コイルのような部品も、プラグやソケットも。

 それと…


 「なんで椅子に、こんなものが…?」


 座席の上部には、頭を固定するためのベルトと、お椀型のシリコンネットが取り付けられていた。

 そのネットは頭の大きさくらいで、位置的に、どう考えても…


 「これ、まさか、頭につけるみたいな…?」

 「ご名答」


 …いやいや、ふざけんなよ


 電極のような金属製のチップと、それに連結するケーブルが、ネットの下部に垂れ下がっていた。
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