雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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トンネルの向こう

第327話

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 「なんやこれ…」

 「トンネルへと通じる扉や。この先に、クロノポリスがある」


 言われてみると、確かにトンネルの入口のようにも見える。

 女は扉の横にあるモニターを操作し、ロックを解除した。

 ゴゴゴゴ…

 という音と、少しずつ動いていく壁。

 扉は左右両開きとなっており、スライド式に開いていった。

 開いた扉の断面はやはり分厚かった。

 どんな衝撃にも耐えられそうな厚さで、人の力じゃびくともしそうにない。

 扉の向こうには、出口の見えない通路が続いていた。

 扉を開くと同時に明かりがつき、様々な大きさの配管が、壁や天井沿いに続いている。

 虫食い穴のように、空間がくり抜かれていた。

 “トンネル”だ。

 人が通るにしては、大きな。


 どこまで続くんだ…?


 そう思いながら、歩き続けた。

 十数分くらい歩いていると、同じように扉が見えたんだ。

 そして、その先には——


 「ようこそ、クロノポリスへ」


 自分が「地下」にいるということを、思わず忘れてしまいそうになる。

 それほどまでに広い空間と、地面の“深さ”。

 トンネルを渡った先にある場所は、地下と呼ぶにはあまりにも巨大だった。

 まるで、スタジアムを地面の中に埋め込んだみたいな奥行きが、何百メートルも続いていた。

 横にも、縦にも。


 「広ッ…」

 「あそこに通路が見えるやろ?ついてきて」


 通路?

 通路って言っても、色んなところにある気が…

 天井はさっきよりもずっと高かった。

 高いというよりも、ビルを見上げた時のような高さだった。

 構造が丸み帯びてて、ドームを丸ごと収めた時のような作りになってた。

 地上20階くらいまでの高さが、奥まで広がっている。

 各階層があるみたいで、中央エレベーター室や竪穴区画に設置された階段から、各フロアに行けるみたいだった。

 窓のように壁には穴が開けられ、その向こうには明かりがついている。

 聞くと、この空間自体が「中」ではなく、アリの巣のようにそれぞれの部屋やフロアが、通路を通して繋がっているとのことだった。

 ここはいわばエントランスのような場所だが、かといって地下施設の“中心”ではない。

 女はそう言いながら、何百個もある窓を指差し、たくさんの部屋と場所があることを教えてくれた。

 人が住める居住区や商業区、エネルギーや資材を生産する工業区が、今もなお建設中であることを。

 
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