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トンネルの向こう
第326話
しおりを挟む一階の奥に進んでいくと、関係者しか入れないような通路があった。
その通路を抜けて、機械室のような大型の機械が設置されている場所を通り過ぎると、貨物用のエレベーターがあった。
女は、受付でもらったカードキーを差し込み口に挿す。
扉が開き、電卓に似た数字のキーを押した。
ポートランドには巨大な地下施設があるという噂を聞いたことがある。
それは、噂じゃないと言った。
「地下に巨大な施設があるって、聞いたことは?」
「噂程度には」
「じつはこの大学の地下に、巨大な『地下シェルター』が存在する」
「地下…シェルター!?」
「その場所は通称クロノポリスと呼ばれる場所でな。世界各地に存在するんや」
しばらく降っていくと、薄暗い洞窟のような場所にたどり着いた。
暗すぎて奥が見えない。
照明をつけると、そこは立体駐車場のような場所だった。
何本もの太い柱が並び、コンクリートで覆われた地面や壁が、何百メートルも続いてる。
所々に白いボックスが置かれているのが見えた。
柱の横に設置され、天井まで細い配管が伸びていた。
「なんやここは??」
「ただの通路や」
「どこの?」
「シェルターに通じとる」
…ちょっと待て。
シェルターっていうのは、あのシェルターのことだよな?
…つまり、その、戦争が起きた時とかに使う…
「まあそんな感じやな」
「そんなもんが大学の地下に?」
「大学の地下というか、“ポートアイランドの地下”と言った方がいい。元々ポートアイランドは、地下施設を建設するために建てられた場所や。島の至るところに通路は存在する。ここはその一部に過ぎん」
「クロノ…なんとかって言ってなかったっけ?さっき」
「クロノポリス」
「そうそれ。それは?」
「クロノポリスは、未来で起きる災害から身を守るために作られた場所や。人が生き延びるための場所。そう言った方がええかも」
しばらく歩いてると、厳重な扉が目の前に現れた。
…扉?
それは扉と呼ぶには、あまりに大きかった。
自分の背よりもはるかに高い直径。
ぶ厚い壁の中に埋め込まれた、鼠色の金属。
それが「扉」だと認識するのに、数秒かかった。
最初、くり抜かれたような窪みが、真四角に切り取られた空間の中を覆っているように見えた。
天井がグッと高くなり、地面が深くなる。
扉に向かってなだらかな斜面が流れ、ドーム型の半円が、背の高い壁の中に埋め込まれていた。
それは、広い地下の空洞に蓋をしているようにも見えた。
どこまでも続いてる通路に、ポツンと現れた、立体的な窪み。
まるで巨大なマンホールが、壁の真ん中に取り付けられたみたいだった。
マンホールと呼ぶには、ずっと厳重な作りをしていたが。
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