雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

文字の大きさ
上 下
327 / 394
トンネルの向こう

第325話

しおりを挟む

 「誰かの「体」と「魂」が切り離されたら、あんたはそれを「人間」やと思うか?」

 「体と、魂…?よくわからんが、多分…」

 「なんでそう思う?」

 「なんで…って、別に深い意味はないけど」

 「ほんならどっちが人間?体と魂と」

 「は?…別々になったってこと?」

 「そういうこと」

 「…しいて言うなら、魂?」

 「なんで?」

 「体にはなんも入ってないってことやろ?せやったら、魂の方が近いんちゃうん?」


 ごめん。

 自分で言っててよくわからん。

 別々ってなんだよ…

 でも、そういうことだろ?

 体と魂が違うところにあるなら、魂の方が重要なんじゃね?

 体はだってほら、ただの入れ物なわけだし。


 「本来人間には、体と魂なんてものは無いんや」

 「へ?」

 「心と体ってよく聞かん?でも、そんなものはどこにもない。心と体は1つで、それを区分する境界はない。意味わかる?」

 「…全然」

 「キャンバスに描いた「絵」は、絵の具が「絵」か?それともキャンバスか?」

 「どっちかってことはないやろ」

 「やろ?その発想や。「人間」っていう事象を決定付けとるのは、たった一つの要素やない。私たちは常に不完全や。数式上も、物理法則上も」

 「やろ?って言われても…」

 「未来では、人造人間が生み出せるんやないか?って言われとった」

 「人造人間!?」

 「“サイボーグ”とはちょっとちゃうで?人工知能って聞いたことないか?」

 「ある…けど」

 「肉体は人間のままで、それを制御しとるのが機械やとしたら?」

 「つまり…?」

 「それは人間か?」

 「…いや」

 「ほんなら人間は?どっからどこまでがそうなんや?」


 どっからどこまでが…?

 そんなの考えたこともない。

 少なくとも、その人工なんちゃらっていうのは人間じゃない。

 肉体は人間だって言うけど、頭の中を乗っ取られてるってことだろ?

 だとしたらそれは人間じゃない別の何かで、“作り物”っていうか…


 「さっきのお姉さんは人間に見えた?」

 「当たり前や」

 「あの人が人造人間やとしたら?」


 ………は?

 何言ってんだお前。

 もしそうだとしたらやばすぎんだろ。



 「冗談も大概にせぇ」

 「冗談とちゃう」

 「ハハッ。人造人間って、お前さぁ…」

 「あとで証拠見せたるわ。直接見んとわからんやろうし」

 「何を見せてくれるん?」

 「お姉さんの「中」に入っとるもの」


 ……いやいやいや

 見せるって言ったってだな。

 「人造人間」だぞ!?

 …え、まじで言ってる??

 いや、そんなわけが…


 「まあ、人造人間って言うても、あんたが想像しとるもんとはちょっと違うかもしれんけど」

 「あり得んやろ…」

 「なにが?」

 「そんなアホなことがあるわけない。だって、さっきの人は…」


 お姉さんはどっからどう見ても人間だった。

 「人間」って改めて言ってる自分がおかしくなりそうなくらい。

 「中」に入ってるもの…?

 中は機械だっていうのか?

 それとも、チップが頭に?



 いやいやいやいや
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真夏のサイレン

平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。 彼には「夢」があった。 真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。 飛行機雲の彼方に見た、青の群像。 空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。 彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。 水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。 未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い

御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...