雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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夏の花火

第312話

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 「どういうことや、それ!?」

 「あんたはずっと、この世界で起きたことを考え続けてきたと思う。あの日の出来事が無くなれば、どんなに良かったかって」

 「そうやけど…!」

 「でも、もしあの日の出来事が、“元々この世界に存在していなかった”としたら?」


 …そんなこと言われても、わかんねー…


 元々存在してなかった…?


 事故に遭ってなかった…ってこと?


 どういうことなんだ…?


 「キーちゃんはあんたに会いに行こうとしとる。2人が結婚してた「未来」に、たどり着こうとして——」

 「待て待て!」

 「ん?」

 「一旦話を戻してくれん?事故が無かったってどういうことや!?」

 「そのままの意味やが」

 「“そのまま”って意味わからんやろ…。もっとわかりやすく言え!」


 全然追いつけない。

 さも当たり前のように言うが、言ってることが全然わからない。


 タイムマシン。

 未来。

 結婚。


 一つ一つのワードが、頭の中で弾ける。

 フライパンの上で出来上がるポップコーンみたいに、縦横無尽に飛び跳ねてやがる…


 ずっと感じてきてたことだ。

 昔から。

 あの事故が無かったらって、いつも思ってた。

 海を見ながら。

 学校に行く、——道すがら。
 

 なのに、「事故が無かった」って…


 「説明せぇ」

 「今説明しとるやんけ」

 「…わかりにくいんや!色々と」

 「それはあんたが馬鹿だからやろ?」

 「お前の説明が下手くそやからや!」

 「…はぁ。苦労するわほんと」


 ため息つかれても困るんだけど?

 俺からしたら、杖で空が飛べますって言われてるようなもんだ。

 ドラゴンがこの世界に存在してるって言われて、お前は納得できるか?

 サンタクロースが実在するって、トナカイが空を飛べるって、——言われたら?


 「うーんってなる」

 「やろ?今の俺の状況。それ」

 「そんな難しく考えんでも…」

 「考えるやろ!?言ってること相当ぶっ飛んでるって理解してる!?」


 …どうやら、理解してないっぽい。

 俺の方に原因があるみたいに、ため息をつきながら腕を組む。

 将来、お前は絶対に指導者にはならない方がいいと思う。

 授業中に呪文のような言葉を言い始めて、生徒を置き去りにする数Aの吉田。

 あのタイプだなって思う。

 聞く側に寄り添えっていっつも思うんだよね。

 健太はそのせいで頭のネジが飛んで、ねりけし用の消しゴムで遊び始めるんだ。

 ノートを取ってる俺の邪魔をしてきて、授業に集中できないこともしばしば…

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