雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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夏の花火

第298話

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 まじで言ってんのか…?

 でも仮にそれが事実なら、あの日のことも…


 「すでに起こったことは変えられんって言うたやろ?」
 
 「…なんやねんややこしいなぁ。変えられるんやろ?」

 「あくまでイメージな?」

 「イメージぃ!?」


 まじでよくわからん。

 コイツと話してるといっつもこうだ。

 いつも、頭がパンクしそうになる。

 変えられるとか変えられないとか、ハッキリしろよ。

 結局どっちなんだよ。

 何が正解で、何が間違いなんだ??


 「どっちも間違いで、どっちも正解や」

 「おいおいおいおい」

 「何?」

 「「何?」やないわ。おちょくっとんのか」

 「聞く能力なさすぎな」

 「聞いとるよ?俺はちゃんと」

 「聞いとるのにその顔ですか」


 今どんな顔してる?

 って、そんなことはどうでもいいんだ。

 俺が言いたいのはだな…


 「話が二転三転しすぎや言うとるんや」

 「しとらんがな」

 「主にどこら辺が??」

 「全部」

 「ハァ!?お前の頭バグってんのか!」


 ハリセンが飛ぶ。

 頭を引っ叩かれる。


 …なんでお前が殴るんだよ

 言っとくけど、おかしいのはお前の方だからな??

 マトモなのは俺で、マトモじゃないのはお前。

 おわかり?


 「例えば過去が“1つ”しかないとしたら、未来は?」

 「そんなもん1つしかないに決まっとるやろ」

 「ほんなら、他の世界のことは?」


 他の世界のこと…?

 さっきまでいた世界は、こことは違う世界だった。

 それはわかる。

 千冬は事故に遭ってなくて、俺は違う高校に通ってて…


 「ということはつまり、過去も未来も、複数存在するっていうことやろ?」

 「そうやけど…」

 「せやったら問題は簡単や。未来は1つだけやない」

 「でもお前今“過去が1つしかないとしたら?“って言うたよな?」

 「そうやで?」

 「ほんなら実質未来は1つになるやろ」

 「なんでそう思ったん?」

 「なんで…って、今話しとることも、これから食う晩飯も、ようするに「未来」ってことやろ?ってことは、その未来は1つしかない。晩飯が2回訪れるわけもないし…」

 「あんたにしてはいい考察やな」


 コイツ…

 だってそういうことだろ?

 別の世界の未来は未来で、こっちの世界の未来とは違う。

 だけどこの世界の未来は、この世界ではたった1つだけだ。

 昨日何食ったか、何時に起きたか、その「過去」は、たった1つしかない。

 それに「過去」は、このタイミングでも生まれてる。

 今話してること、言った言葉、そんなものが全部漏れなく、「過去」になっていく。

 1秒先のことだってそうだ。

 時計の針が進んで、通り過ぎていった場所は全部「過去」だ。

 それが1分だろうが、1時間だろうが変わらない。

 つーことはだ。


 「過去も未来も、この世界では1つしかない。どや?そういうことやろ」


 女はニヤッとした表情で、「なかなかいい線やな」と言ってくる。

 いい線もクソもあるか。

 単純な話だろ。

 それをお前が、変えられるとか変えられないとか言うから…
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