雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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丘の坂道

第291話

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 「どうやった?新しい高校生活は」

 「…どうもこうも、大変やったわ」

 「ええ経験になったやろ」

 「なんでそんな他人事なんや?お前のせいやろ!」

 「そんな怒らんでもええやん」

 「怒っとらんけど、せめて事前に説明せえよ」


 なんの説明もなしに放り出されても、困るだけだっつーの。

 まじでどうしようかと思った。

 学校に行った時なんかとくに。


 「適当にごまかせばええやん」

 「そんな簡単なわけないやろ」

 「難しく考えるからあかんのや」

 「難しいもクソもなくね?!千冬以外、全員知らんやつやったんやぞ??」

 「やから?」


 やからってお前…

 逆に尊敬するわ

 その楽観主義。

 俺と同じ状況になってみ?

 絶対お前も苦労するから。


 「私ならもっとうまくやるけどな」

 「どうやって?」

 「キーちゃんがそばにおったやん」

 「いましたけど?」

 「色々教えてもらえばよかったのに」


 教えてもらおうとしたさ。

 けどダメだった。

 イマイチ信用してもらえてなかったんだよな

 学校では、ほとんど話さなかったし


 「下手くそ」

 「いや、無理があるやろ。突然記憶喪失になったって誰が信じるねん」

 「ストレートに言い過ぎ」

 「そう言うしかなくない?」

 「私なら一旦体調不良で家に引きこもるわ。そのあと亮ママに色々聞く」

 「俺もそうしようとしました」

 「…で?」

 「そうしようとしたけど、家に来たんや。…千冬が」

 「断ればええやん」

 「なんて言って?風邪引いたって?」

 「そう」


 …うん

 まあ確かに、今思い返せばそうすれば良かったなとは思う。

 思うけど、断れないって。

 アイツから、一緒に行こうなんて言われたら


 「結局どうしたん?」

 「どうもこうも、困ったって言うとるやん」

 「放課後まで過ごしたんやろ?」

 「そうやで?」

 「問題とか起きた?」

 「別に…」

 「せやったら結果オーライやん。そんな悩まんでも」

 「それは、助けてくれた人がいたからで…」

 「誰??」

 「お前に言うてもわからんやろ」


 女は、“ある程度ならわかる”と言ってきた。

 神戸高の生徒のこと。

 あの世界で、俺が接した人たちのこと。


 「クラスの隣の子…」

 「名前は?」

 「一ノ瀬さん」


 彼女のことを知ってるみたいだった。

 彼女とは別に友達でも何でもない。

 そう前置きした上で。


 「一ノ瀬さんのこと、どう思った?」

 「どう…って、いい人やなぁって」

 「ふーん」


 何その反応。

 すげー気になるんだけど。

 神戸高の生徒じゃないのになんで知ってんだよ。

 昔の友達とかか?


 「違うって言うたやろ」

 「じゃあなんで知っとんねん」

 「物知りやから」

 「物知りぃ!?」


 そのテキトーな感じやめてくれん??

 お前の言ってることが事実なら、それは物知りじゃなくてただの変態だ。

 それか変質者。

 友達でもなんでもないのに知ってるって、見方によっちゃかなり怖いぞ。

 お前が男だったら、とくに。

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