雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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丘の坂道

第285話

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 …ゲート?

 なんじゃそりゃ…

 そんなこと言われても意味わからんぞ

 連れて行ったって、…なんで?

 なんのために?

 それに今難しいこと言わなかったか…?

 …ベッケン…シュタイン?

 …なんて?



 「『ベッケンシュタイン境界』。時間とその距離のエネルギー量の上界値を、言い換えた言葉や」

 「…は?」

 「まあ、難しいことはええねん。ようするに、確率が変化しとる領域に、その“境界”は存在する。こことは違う世界が、存在しとるようにな」


 …えーっと


 簡単に説明したつもりなんだろうが、全然伝わってないからな?

 確率が変化するってなんだよ…

 そもそも、「境界」って?


 「元々その境界は、世界には存在せんかった。…いや、“事象化しなかった“と言った方がいいかもしれん。…とにかく、全てが変わった。隕石が落ちた日から」

 「…隕石が、…落ちてから…?」

 「時間に“歪み”が生まれたのはあの日からや。…いや、まあ、それよりももっと以前に、世界は変わったが…」

 「…何が変わったんや?」

 「時間に「穴」が開いた。過去と、未来を結ぶたった一本の線が、失われた。一本しかなかったはずの、時計の”針”が」

 「よぉわからんけど」

 「雨が降り続けとるって言うたやろ?未来でそんなふうになったんは、世界の「形」が変わったせいや。“空が落ちてきた”って言うんは、つまり…」





 ザァァァァァ…



 病室の窓の外では雨が降っている。

 さっきまで、そんな気配はなかったのに。


 未来で、雨が止んでない。


 それがどういうことかを、うまく理解することができない。

 “隕石が落ちてきた”

 そんな出来事を、一体どうやって受け止めろって言うんだ?

 わかんねーよ…

 話がデカすぎて


 正直な話、未来がどうなってるかなんてどうでもいいんだ。

 誰だってそうだろ?

 目の前のことで精一杯で、何十年も先のことを考えてる暇なんてない。

 せいぜい、今日の晩飯について考えるくらいだ。

 友達との約束とか、塾とか。
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