雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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夢が覚めないうちに

第261話

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 肥大化する振動。

 刹那を泳いでいくうねり。


 …同時に、何億分もの1秒の中に留まろうとする“一瞬”が、そこにあった。


 視界の中、——そのずっと、奥に。



 時間?

 空間?


 ——いいや、そんな単純なものじゃなくて、もっと、“手前“にあるもの。

 遠ざかろうとする時間が加速しながら、「今」に追いつこうとしている。

 そのスピードの中に、指先に触れる何かがあった。

 柔らかくも、硬くもない。

 実体のような「線」を持っているものじゃない。

 少なくとも、——それは。


 巨大な揺れの「幅」は大きくても、それがたとえ全てを動かすだけの力があったとしても、それは表面的なものに過ぎなかった。

 「時間」に追いつこうとする時計の針は、絶えず滑らかな曲線に沿って動く。

 雲の流れも、人や車の流れも。

 

 視界の中心に横切っていくのは、そうした絶え間ない時間の変動に泳がされる、連続的な景色の一端じゃなかった。

 

 「世界」はまだ、“追いついていなかった”。

 巨大な揺れに。

 目の前に訪れた、濁流のような“変化”に。



 ドドドドドドドッ

 

 …なんでだ?

 こんなに揺れてるのに、「青」が止まっている。

 “止まっている”という表現だけでは足りない、何か。

 信号機の後ろに広がる街の骨格が、1ミリの変化も持っていないようにさえ見えた。

 街と街を繋ぐ、——あらゆる物質が。



 足元が揺らぐ。

 視界がブレる。

 それでも世界は、“点”の中に留まっている。

 果てしない距離の放物線が見えて、ビルの一団が傾き始める。

 回転する空。

 浮き上がる土。

 

 ゴオオオオオオ



 …なんだ?

 …この、圧迫感は…?


 突然強くなる圧力。

 空気が重くなったような、重苦しさ。

 街の向こうまで続いている地面のなだらかさは、視界の中に留まり続けていた。

 揺れの中に飛び出そうとする波と波の切れ間は、街の形を変えてしまうほどに迫り上がっていた。



 アスファルトに浮かぶ影。
 

 ——その彼方で、近づいてくる巨大な物体。
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