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俗に言うアレ
第229話
しおりを挟む隣にあったはずのものがない。
祐輔の下手くそな壁の落書きも、岡っちの穴の開いたスパイクも。
部室のすぐ目の前に鉄棒があって、ツバサはよくそこにもたれかかってた。
隣に大きい樫の木があって、涼むのにはちょうどいいんだ。
俺もよく涼みにいってた。
夏休みの日中は、やばいくらい暑かったから…
日陰で涼まないとやってられなかった。
スポドリをがぶ飲みして、汗で濡れたシャツを棒にかけて。
俺たちはよく駄弁ってた。
日によっちゃ、キャッチボールもせずに夜まで過ごしたり。
早めに切り上げて、よく健太ん家に遊びにいってたりもした。
アイツん家は山の方にあるんだけど、敷地は広いし、テレビゲームは充実してるし、見晴らしもよくて最高なんだ。
見晴らしの良さだけで言やぁ、俺ん家も負けてない。
だけどウチは、ちょっと歩かないと海が見えなかったりするから、若干惜しいんだよな。
その点健太の家は部屋から街を一望できる。
明石海峡大橋だって見える。
坂道を少し登ったところにあるおかげで、ロケーションがまじでいい。
健太のかーちゃんもすげぇ気前がいいってことで、いつの間にか皆で遊びに行くようになったんだ。
コンビニも近いしな。
野球部を立ち上げた時、部室はどうするかって話し合ってた。
校長先生に直談判するためのスピーチの練習をしたり、片っ端から部員を募集しようぜって話し合ったり。
入学した頃の景色が、部室の前にはあった。
あの頃はとくになにも考えてなかった。
…まあ、言っても今もだけど、当時は後先のことなんて考えずに、皆で無駄に盛り上がってた。
野球やろうぜ!って、ルールもわからんやつが4人もいるのに。
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