雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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俗に言うアレ

第226話

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 給食室の後ろを歩き、弓道場の中が見える裏庭の木陰から、様子を見てた。

 裏庭からは海がよく見える。

 風も心地いい。

 ここでよく、健太とかツバサと昼飯を食ったりしてる。

 日によってバラバラだが、弓道場に隣接した、蓮池のある小さい広間のこの場所は、お気に入りの1つだ。

 すぐ横の南館には自販機があったり、レンジも湯沸かし機も完備されてる食堂が近かったり。

 なんつっても風通しがいい。

 フェンス越しに運ばれてくる海風はもちろん、ベンチのそばのハナミズキが、さやさやと葉を揺らしているのを聞くと。

 JR神戸線の上り降りが、昼メシ時の午後の横でいつも線路を揺らしてた。

 庭の芝生の上に寝転ぶ健太が、食いさしのサンドイッチを手に持ちながら、時々居眠りをこいたりも。

 5限目に遅刻した時があったっけ?

 あの時はわざと起こさなかったんだが、まあ面白かった。

 いつまで寝てるだろうなって、ツバサと賭けたんだ。

 6限目まで行くかと思ったが、実際は5限目の途中で帰ってきた。

 かなり申し訳なさそうな顔つきで。

 逆に、よく帰ってこれたなと思う(笑)

 俺だったら授業が終わるまで待つ。

 めちゃくちゃ入りにくいんもん。

 健太の席は真ん中ぐらいだから、どうやったって目立つし。



 遠目からだとよくわからないが、袴姿の部員が、的に向かって矢を撃ってるのが見えた。

 鋭い音が道場内に響いてる。

 的に矢が当たるたび、空気を刺すような音が響く。

 弓の弦をギリギリまで引きつけ、目いっぱいまで力を込めた矢は、とんでもないスピードで飛んでいく。

 松原さんが実際に撃つのも、何度か見たことがある。

 その時はなんというか、圧倒されてしまった。

 弓道をする人の所作もそうだし、雰囲気がマジでやばくて。

 あの神妙な感じっていうか、絶対に話しかけられない雰囲気は、他の運動部には中々ない。

 弓道を「運動部」って言っていいのかわかんないが、まあスポーツの一種だろ?

 剣道はスポーツじゃないってじいちゃんが前に言ってた。

 あくまで武道だからって。

 その理屈だと、弓道も武道の一種なんかな?

 「スポーツ」っていうのはちょっと違和感がある…かも?

 ——とにかく、それぐらい“緊張感がある”ってことだ。

 あ、別にスポーツに緊張感が無いって話じゃなくて。
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