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俗に言うアレ
第225話
しおりを挟む後ろで大声を出している岩崎を尻目に、音楽室のドアを開けて階段を降りた。
途中何度かつまづきそうになった。
中年オヤジのくせに足が速い。
岩崎に捕まえると色々めんどくさいんだよ。
体育の教師のくせに、変に理屈っぽいところがあるから。
ゼーハーゼーハー…
なんとか撒けたみたいだが、これじゃもう中には入れないな…
別に逃げる必要もなかったのか…?
いやいや、捕まったら最後、追い出されるに決まってる。
どっからどう見ても俺たちは部外者だし、ここに来た目的だって、ちゃんと説明できない。
目的というか、”理由“というか。
正直に伝える必要はない。
そんなことをした暁には、漏れなく変質者に昇格だ。
この歳でキチガイだと思われたくはない。
だって、いるかもわからないヤツを探してるって言ったところで、は?って感じだろ?
深掘りされたらややこしいことになりそうだし、極力、下手を打ちたくはない。
それに岩崎は、ゼッッタイに俺の話を聞かないだろう。
授業の時もそうだが、仮病なんてしようもんなら、”証拠を提出しろ“とか言ってくるタイプだ。
他の先生はそんなことないのに、岩崎だけはホントにめんどくさいんだ。
せめて話さえ聞いてくれれば、ワンチャン許してもらえるかもしれないけど…
友達に会いに来たとか、適当に言えばいいわけだし。
俺たちはしばらく物陰に隠れてた。
追っ手が来てないか隈なくチェックしたあと、できるだけ目立たないように、学校の周りを散策してみることにした。
知っている人たちはほとんど見つからなかった。
ゼロじゃない。
何人かは知ってる人がいた。
先輩とか、同級生も。
「…ゲッ、岩崎のやつ、まだ俺らのこと探しとるで」
「見つからんようにせんとね…」
「あっちから回ってみるか?体育館横にセミナーハウスがあんねん。給食室とか弓道場があるし、見つかりにくいやろ」
「ほんならはよ行こ!」
弓道場っつったら、松原さんがいるかな。
仮にいたとしても、練習の邪魔はしたくない。
なんつったってキャプテンだもん。
1年でだぞ?
すごくないか?
まあ、色々事情があったから、本人はあんまり嬉しく思ってないみたいだけどさ。
でもすごい。
どんな事情があるにせよ、キャプテンを任される器ってことだ。
そこらへんのやつじゃ務まらないポジションだ。
少なくとも、俺とかは無理。
ある程度才能があるやつじゃないと。
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