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俗に言うアレ
第224話
しおりを挟む「こら!キミら何入ってきとんや!」
やべ。
体育の岩崎だ。
ベランダにいる俺たちを教室の外から見つけ、近づこうとしてきた。
俺らが不法侵入者であることは一目瞭然だ。
だから、先生に見つかったら怒られるだろうなぁとは思ってた。
無口なハラセンとかは除いて。
けど、よりにもよって岩崎とは…
逃げなきゃ
咄嗟に足は動いてた。
一之瀬さんの手を引っ張り、左右を見渡す。
3階のベランダから飛び降りるわけにはいかない。
でも、それ以外に道はない。
うまく躱して廊下に出る?
…だめだ。
俺1人だったらまだしも、一之瀬さんと一緒にってなるとたぶん無理だ。
どうしよ。
ここ、3階だよな?
だったら、あそこに行けば——
ベランダに沿って、俺たちは走った。
目指す場所はあそこだ。
いちばん端の音楽室。
この時間なら今、吹奏楽部が使ってるはず。
いっつも窓開いてるし、ドアだって
「走るで!」
「う、うん!」
「キミたち!止まりなさい!」
音楽室を出た先の廊下には、非常階段に通じる扉がある。
普段は誰も使ってないが、あそこを通れば外に出れる。
降りた先は駐車場だ。
そこまで行ければ、あとはどうにでもなるだろ
ハアッ、ハアッ、ハアッ
できる限り足を動かして、ベランダを駆け抜けた。
ドアが開いててよかった。
閉まってたら、完全に詰んでた。
岩崎がすぐそこまで来てる。
だからまじで助かった。
そのかわり、吹奏楽部の人たちはびっくりしてた。
「キャア!」とか「何何!?」とか叫んでて。
すいませんすいません…
それまで綺麗に奏でられてたトランペットの演奏が、勢いよくドアを開けたせいで途切れてしまった。
驚いた拍子に、息が詰まったような高い音符がプァッ!という音域の中に響いてた。
部屋の中央を突っ切っていく俺たちを目で追いながら、部員全員が呆然としてる。
男子も、女子も、漏れなく。
俺たちに続いて岩崎もご入場。
騒がしくしてほんとに申し訳ない。
でも、今は一大事だから勘弁してくれ。
すぐに出ていきますんで。
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