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俗に言うアレ
第223話
しおりを挟む友達の姿は、そこにはなかった。
理科室だけじゃなくて、他の場所にも。
将棋部自体はいた。
いたっつーか、あれはいたうちに入るのか?
いつもは10人ほどいたのに、5人もいなかった。
美術室は相変わらずの大盛況だった。
美術室と言えば、『テディベア研究部』が占拠してる場所だ。
ざっと20人はいる。
テディベアの何を研究するんだ?っていっつも思うが、そもそもそんな部活があること自体が驚きだった。
入学当初は。
多分、県内で他にないんじゃないか?
一之瀬さんもびっくりしてた。
何ここ!と目を輝かせて。
…しっかし、困ったな。
なんでどこにもいないんだ?
こうなったら、職員室にでも行って直接聞く?
教室のベランダからグラウンドを見渡してみる。
風に運ばれてきた海の匂いと、須磨海岸の西日。
“アイツ”は、多分いない。
なんだかそんな気はした。
沈んでいく陽の光は、いつもと変わらないスピードで落ちている。
着てる制服は違っても、やっぱりここは、俺の通ってる高校だ。
匂いとか景色とか、全部“知ってる”。
ずっと隣にあった。
教室のドアの色も、廊下の窓から見える外の空気も。
でも、アイツの気配だけはどこにもなかった。
アイツの机はもちろん、下駄箱も、校舎のどこにも。
”追いつけそうで追いつけない“っていうのかな。
痒いところに手が届かない。
あの感じ?
わかんねーけど、そんな感触をそばに感じる。
きっと、近くにいない。
そんな気配を。
ここにいないとしたら、——どこに?
まさか、本当に大阪に帰ったとか?
だとしたら探しようがなくないか??
具体的な場所も聞いてないんだから。
「どうすんの?」
せめて野球部のみんなには会いたいが、そっちはそっちで、なんとなくいなさそうなんだよな…
もうひと回りしてみようとは思うけど、どうだろ
「見つからなかったら?」
「帰る」
「諦めんの?」
「うーん…」
他に見つかりそうな場所なんてない。
ここにいないんだったら、どこを探せば?
正直、あんまり期待してなかった。
だってアイツ、元々神戸にはいなかったんだ。
俺が須磨高に通ってないように、アイツだって…
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