雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

文字の大きさ
上 下
221 / 394
俗に言うアレ

第219話

しおりを挟む


 窓の開いた、教室の窓辺。

 リコーダーの音色が聞こえてくる、3階の音楽室。

 廊下では、生徒の声が反響していた。

 スリッパで登り降りしている階段の音も、机や椅子をひこずっているホームルーム後の騒がしさも。


 体育館から聞こえるホイッスルが、日差しの陰る午後の静寂をつつきながら、花の咲いた百日紅の葉を揺らしていた。

 いつもと変わらない光景だ。

 教室の窓の向こうに見えるカーテンの色も、明かりのついた職員室の忙しない様子も。

 担任の佐藤先生が職員室の中にいる。

 窓際の席だから外からよく見える。

 特徴的なパーマと、肩パッドの入ったスーツの後ろ姿が、“いつもの先生”って感じだ。

 早速サーブの練習をしてるテニスコートには、見覚えのある先輩たちが。

 あれは早川先輩かな?

 超モテモテの王子様ルックス。

 確か、全国区なんだよ。

 黄色い声援を送ってる謎の女子グループたちが、フェンスの向こうではしゃいでた。

 今日もいるなぁ…

 キャーとかワーとか、先輩は嫌じゃないんだろうか…?

 人生でモテたことないからイマイチわからんが、気が散ってしょうがないと思う。

 俺なら「散れ!」って言うだろうな。

 っていうか俺の場合、「お前が散れ」って言われる可能性がある。

 女って意外と怖いんだよ。

 か弱いフリして、普通に肩パンとかしてくるし。


 グラウンドの隅にある部室棟の一角には、出入りしているジャージ姿の女子がいた。

 多分サッカー部?

 わかんねー。

 時々ソフト部のマネージャーが、ジャージでうろちょろしてる時があるから、ワンチャンソフト部?

 でも動き的にサッカー部っぽいな。

 ソフト部だったら、この時間はランニングの手伝いとかしてるはず。

 陸上部と同じで校内を何周かしてるんだけど、わざわざストップウォッチで時間を測ってるんだ。

 ソフト部はわりと厳しいらしい。

 サッカー部なんかよりはずっと。

 まあ、俺たちほどじゃないが、サッカー部はサッカー部で去年立ち上がったばっかだからしょうがない。

 共学になって、いくつか設立された運動部の1つって事で、まだまだこれからって感じの部だ。

 サッカーゴールだって、使わなくなった小学校から中古で仕入れたらしい。

 人数もけっこう少ない。

 流石に、11人以上はいるけど。


 「野球部」の姿は、そこにはなかった。

 正確には「部」じゃないけどな?

 人数も揃ってないし、顧問は兼任だし。

 部室には明かりがついてなかった。

 グラウンドに出てる様子もない。

 この時間なら、健太やツバサがとっくにストレッチでも始めてるはずなのに。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真夏のサイレン

平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。 彼には「夢」があった。 真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。 飛行機雲の彼方に見た、青の群像。 空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。 彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。 水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。 未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い

御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...