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好きっていうかなんていうか
第183話
しおりを挟む「素朴な質問なんやけど…」
「何?」
聞きたいことがあった。
丘を下る坂道の上で、自転車に乗りながら。
「俺たち、一緒に通ってるん?」
小学生の頃、徒歩で一緒にバス停まで行ってた。
バスに乗って学校に行き、帰りは、近くの公園でキャッチボールをして。
あの頃の時間が、俺の中で止まっている。
夢の中で時々見るんだ。
大きく振りかぶる彼女のシルエットや、俺の前を歩いていく姿。
“いつか”
その言葉の向こう側にある夏の景色を、俺はまだ知らない。
だから自然と出た。
純粋に聞きたかった。
俺たちは俺たちのままなのか、って。
「昨日から怖いで?あんた」
「…すまん」
「一緒に通ってるかって?」
「お、おう」
「見ての通りや」
う、うん…?
見ての通り?
つまり、…そういうこと?
わからないからもう一回聞いた。
そしたら、やっぱり一緒に通ってるみたいだった。
「いつから…?」
「はあ?そんなん覚えとらん」
俺は覚えてる。
忘れるわけない。
小学3年の時だ。
いじめが原因で学校を休んでた俺に、声をかけてきた日のことを。
「俺は覚えとるで」
「はいはいそうですか」
「ほんま、懐かしいわ」
「何浸っとんねん…。怖」
そりゃ浸るだろ。
もう5年以上経つんだ。
ずいぶん昔のことに感じる。
あの頃、俺はまだ外の世界を知らなかった。
「外」っていうか、“背伸びできる瞬間”っていうか。
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