169 / 394
アナザーワールド
第167話
しおりを挟む「大体、私が海に溺れたってなんやねん」
「…せやから、小学生の時に…」
「この通りピンピンしとるわ」
「そう!せやからさっき嬉しかったんや」
「聞いてや!さっきハグしてきたんやでコイツ」
へぇ、と、さや姉は頬杖をつく。
面白がっているようにも見えた。
俺の話を、…というよりかは、俺と千冬とのやり取りを。
「嬉しかったんやからしょうがないやろ!?」
「なんやねん気持ち悪いなぁ…」
「まあまあ、なにがあったか知らんけど、あながち亮の話も嘘やないかもよ?」
「は!?何言うとんや姉ちゃん」
さや姉は、俺が話してるうちにだんだん真面目に聞くようになってくれた。
最初は千冬と同じく「何それ…」って感じだったが、途中からジュースまで注いでくれて。
千冬は逆に、どんどん当たりが強くなってきた。
言えば言うほど反論してきた。
「あり得るわけない」って、俺の目を見て。
気持ちはわかる。
逆の立場だったら、多分、俺も反論してただろう。
信じる方がおかしいわけで。
だから俺もそれを承知で、わかりやすいように説明したんだ。
説明できてるかどうかは置いといて、だな。
「千冬はずっとあの病院におった。ずっとや。顔は痩せこけてて、…どう表現していいかもわからん」
「それで、病院に?」
「うん。騒がしくしてもうたけど」
「病院におった…って、不吉なこと言うなや」
「…すまん。でも事実なんや!信じられんかもしれんが」
「海に溺れた…ねぇ」
「まさか、本気で信じとるわけやないよな?」
「でも、冗談言っとるようにも聞こえんし」
「それはそうやが、そんな次元の話やないやろ?」
「…うーん」
「7月11日。あの日、千冬は海に行かんかったんか??小6の時や」
「そんな昔のこと覚えとるわけない」
「でも、日記書いとったやん?」
「あれは夏休み用に書こうって思っただけで…」
「そっか…」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
真夏のサイレン
平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。
彼には「夢」があった。
真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。
飛行機雲の彼方に見た、青の群像。
空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。
彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。
水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。
未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?


切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い
御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる